市場に割って入る「Line 6 HELIX」現る
近年、楽器界で熱を帯びているのは、ギター周辺の製品開発でしょう。その中心が「ギタープロセッサー」と呼ばれる製品で、キャビネットの特性をインパルス応答で測定し、収録に使うマイクも含め、その音を丸ごとキャプチャーして再現するというものです。
これには昨今のレコーディング事情も絡んでいます。毎回スタジオにアンプを運んでマイクを立てるのは時間もお金もかかる。でもギタープロセッサーならラインでつなぐだけ。手間を掛けずに狙った音が確実に出せる便利なツールとして人気なわけです。もちろんライブを回るミュージシャンも、機材をコンパクトにまとめられるのが大メリット。
えっ、でも、それって今までのアンプシミュレーターとかマルチエフェクターと何が違うの?
そう思われた方はさすがです。はっきり言って大差ありません。が、つまるところプロ用機材なので、音と入出力関係の機能が違います。現場で使いやすいように作られているので、アマチュアが使っても、もちろん便利。ですが……。
値段が高いっ!!!!! プロなら元が取れるだろうけど、アマチュアには高すぎるんだっ!!!!!!!
その点、ついリキんでしまう、そんな製品です。このジャンルでは、Fractal Audio「Axe-Fx II」(38万8800円)と、Kemper「Kemper Profiling Amplifier」(24万9000円)が人気で、これらのヒットによりギタープロセッサー市場が見えてきたとも言えます。
そこに割って入ろうというのが、Line 6なわけで「よし、俺たちも最高のものを作ってガッポリ稼いでいこうぜ!」という掛け声の下(かどうかは知りませんが)、6年の歳月をかけて完成させたのがこの製品。なにしろアンプシミュレーターのパイオニア的なメーカーですから、我々も期待せざるを得ません。
しかしながら価格もバッチリ上昇。ミュージックパークの開催のタイミングで予約を取り始めた各楽器店が示した販売価格は、23万5440円で横並び。んー。はっきり言って、ちょっと高いんじゃないかなこれ。
ちなみにUSでの価格は$1499。外タレの来日公演がキャンセルされる程度に円安が進んだとはいえ、んー。輸入代理店がマージンをふっかているならまだしも、Line 6はヤマハの子会社なわけで、この内外価格差は、んー。このように買う気満々の人間にはさまざまな思いが去来する価格設定ですが、これでも安いと言える状況を考えてみましょう。
まず、コンペチターのFractal AudioやKemperよりは安い。これはもう、はっきりと安い。加えて、どちらもフロア型ではないので、ライブで使おうと思ったら別売りのフットコントローラーがいる。Axe-Fx II用の「MFC-101 MARK III」が14万0400円、Kemperの「KEMPER PROFILER REMOTE」は8万6400円。合計すると50万円台、30万円台になってしまうわけです。
そこへいくとHELIXは、最初からフットコントローラーにエクスプレッションペダルも付いてくるわけで、もう全然安いように思えてくるから不思議です。というよりも、私はぜひそのように思いたい。
価格はさておき、ものは楽器ですから、最も気になるのはその音です。会場で試奏できたとはいえ周囲がやかましく、かつ用意されていたギターがLine 6のVariaxというモデリングギターで、出音がどうのと判断できる状況ではありませんでした。が、弾き応えとしては、アンプシミュレーターにありがちな薄っぺらさはなく、ピッキングに対する応答も懐の深い感じで、まったく悪い印象はありません。
気になっていたことは、フロア型はエディットの度に屈まないといけない点です。特に高機能なギタープロセッサーならその頻度も高くなるはずなので、ちょっとカッコ悪いんじゃないか。そんな懸念を持っていたのですが、HELIXにはフットスイッチでパラメーターを選び、エクスプレッションペダルで値を操作する「ペダルエディットモード」というものがあり、これがなかなかよろしい。
ただ、LCDのパネルがいまいち小さく、老齢者には辛いのではないかという気もしました。照明の加減で反射して画面は全然見えないこともあるし。
もうひとつ気になっていたのは重量です。まだ日本の公式ウェブサイトにはディメンションも含めて記載はありませんが、本家Line 6のFAQには14.6 lbs.(約6.62kg)とありました。私が以前使っていたPOD xt Liveは4.92kgでしたが、それより重いとなると、んー。さまざまな思いが去来しつつも、発売されたら、じっくり試してみたいところです。
(次ページでは、「マニア受けするアンプも登場」)