7月29日、ついに「Windows 10」がリリースされる。IntelアーキテクチャのCPUを搭載するPC、いわゆる“Windowsマシン”のオーナーにとって待望のOSだが、今度のWindowsはそれだけではない。いわゆる「ワンボードコンピュータ」のオーナーにとっても、Windows 10は期待の存在なのだ。本稿では、「Raspberry Pi」を例に、Windows 10プレビュー版の導入事例を紹介する(全3回)。
「IoT」に範囲を広げるWindows、その課題とは
今年4月に開催された開発者会議「Build 2015」で、少し意外な発表があった。Windowsの次期バージョン「Windows 10」をワンボードコンピュータ向けに、「Windows 10 IoT Core」としてリリースするというのだ。こちらのURLへアクセスし、第2世代の「Raspberry Pi 2」(ラズパイ)など対応ハードの記載があることを確認してほしい。
かつてMicrosoftは、Windows NTをIntelアーキテクチャのほか、AlphaとPowerPC、MIPS向けにも展開していたが、Windows 2000リリース前のベータ版の段階でIntelアーキテクチャに絞った。以後のx86_64対応もIntelアーキテクチャの括りと解釈すれば、Windows 10におけるワンボードコンピュータのサポートは往年の拡大路線への回帰のようにも映る。
しかし、Windows 10におけるワンボードコンピュータのサポートは、Windows NTのときとは着想と方向性がまるで違う。AlphaやMIPS、PowerPCのサポートは、UNIXサーバ/ワークステーションという「職場」の市場に食い入るための方策だったが、ラズパイやMinnowBoard MAXのサポートは「現場」の市場を狙うもの。どこでもネットワーク端末として活用できるのがIoT(Internet of things)だとすれば、どこへでも入り込めるWindows端末を目指すもの、と理解してよさそうだ。オープンソース化された「.NET Core 5」など.NET Foundation関連の動きも合わせて注視しておきたい。
この「Windows IoT」というコンセプトは、急速に普及しつつあるラズパイやArduino(アルドゥイーノ) ― こちらはスペックの都合上Windows IoTではサポートされなかったが ― を対象としたUNIX系OS、特にLinuxと競合する。Linuxの場合、各種処理はPCやスマートフォンからSSHでリモートログインして実行すればよく、システム負荷が増す主因となるGUI(X Window System)は必須ではない。計測器の制御など目的達成に必要な最低限のプロセスを稼働しておけば足りるため、電力を含むリソース面においてGUI前提のOSより有利なのだ。
一方のWindows 10はといえば、「Universal Windows Platform」(UWP)アプリ、「PowerShell」を使うというアプローチだ。UNIX/Linuxの豊富なワンボードコンピュータ向けリソースは生かせないものの、他のデスクトップWindowsとの親和性の高さには期待できる。システム負荷や電力消費量は気になるところだが、こればかりは実際に検証してみるしかないだろう。