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土砂災害や水需要予測など5つのIoTソリューションを新たに投入

IoTの産業変革に向けテクノロジーを惜しげなくつぎ込むNEC

2015年07月23日 15時30分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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7月23日、NECはIoT(Internet of Things)事業の強化を発表。土砂災害検知や水需要予測、電力需要予測、画像・重量検品、VIP検知など新たに5つのソリューションを開発し、2016年までに順次発売を開始する。発表会ではIoT時代の社会価値の創造や、NECが目指すIoTシステムの要件や世界観が説明された。

社会ソリューションに根ざした5つのソリューション

 社会ソリューション事業に注力するNECは製造業、流通・物流など企業での利用に加え、水の需要予測や交通監視など社会インフラ、街や重要施設などの安全管理、エネルギーマネジメントなど幅広い領域でのIoT活用を推進している。テクノロジー面では、画像処理やセンシング、ビッグデータ処理などに強みを持っており、自社ソリューションのみならず、パートナー連携も積極的に行なっている。今回、発表された5つのIoTソリューションの概要は以下のとおりで、2016年度までに順次発売する。

土砂災害検知・予測ソリューション

土中水分量だけで、土砂斜面の崩壊の危険性をリアルタイム・高精度に算出する官公庁・自治体向けソリューション。水分量センサーのみで危険度を算出できるため、センサー数を従来比約1/3に低減する。従来と同コストにより、広範囲な斜面に設置が可能。土木研、防災科研での実証実験では、危険ありと判定した10~40分後に斜面崩壊が発生したという。2015年度の下期に発売予定。

土砂災害検知・予測ソリューション

水需要予測ソリューション

NEC独自の「異種混合学習技術」を用いて、水を作る量とタイミングを予測する自治体・水道事業者向けソリューション。浄水場や送水場、排水池、テレメーターなどに配置されたセンサー情報や転機、カレンダー情報など異なる種類のデータのビッグデータ分析で、水需要を高精度に予測する。国内およびイギリスの水道事業者と共同で実証実験中。2016年度中に発売予定。

電力需要予測ソリューション

異種混合学習技術を用いて、電力の需要量を予測する新電力向けソリューション。異なる種類のデータから過去の電力需要量の傾向を学習し、30分単位で高精度に予測する。事業者の発電計画や電力調整計画の立案など効率的な運営を支援するという。2015年7月末発売予定。

電力需要予測ソリューション

画像・重量検品ソリューション

NEC独自の画像認識技術と重量計を用い、複数商品の品目・数量を瞬時に特定できる物流業界向けソリューション。画像の一部隠れやはみ出し、反射、傾斜などを許容し、バーコードや目視確認なくとも、自動的に正誤を確認。画像を保存することで、出荷活動の確証にも利用できるという。本日から発売を開始する。

画像・重量検品ソリューション

VIP検知接客支援ソリューション

店舗/施設内に設置されたカメラでゲストを顔を認知する小売・サービス業向けソリューション。登録された顧客データベースと照らし合わせることで、VIPや望まれざる客を検出し、先回りした対応を可能にする。2015年度の下期に発売予定となっている。

IoT時代は価値創造のプロセスが大きく変化する

 発表会においてIoT時代の社会価値創造について説明したNEC 取締役 執行役員常務 兼CMO(Chief Marketing Officer)の清水隆明氏は、IoTの登場によって価値創造プロセスが大きく変化すると指摘した。

NEC 取締役 執行役員常務 兼CMO(Chief Marketing Officer) 清水隆明氏

 IoTによる価値創造プロセスでは、世の中にあふれる情報のデータがリアルタイムに収集され、それらを分析することによって知識・情報への変換が起こる。そしてヒト・モノ・コトへのフィードバックが行なわれる。これにより、知識創造やプロセスの変化、新しい社会価値の創造、ひいては産業構造の変革が起こるというIoTの世界観を清水氏は披露した。

IoTによる価値創造プロセス

 こうしたIoT時代において、NECはビジネスの知恵を生み出す「IoTソリューションプロバイダー」、IoTシステムを実現する「IoTイネーブラー」、顧客やパートナーとともに社会価値を創造する「IoTオーケストレーター」という3つの立ち位置を目指すという。これまで同社は、IoTソリューションプロバイダーとしてグローバルで多くの実績を持っており、シンガポールでの安心・安全な街作りの実証実験への参加、日本海溝海底での地震・津波の観測網の構築、中国電力における数千の発電機のセンサー分析、アルゼンチン・ティグレ市での街中監視システムなどを手がけてきた。そして、これらは「1社のイノベーターですべて変わるという世界は終わった」(清水氏)とのことで、顧客との共創によって構築されたという。

IoT時代にNECが目指す姿

今までのITシステムとは異なるIoTシステム

 こうしたIoTのシステムにおいては、膨大なデータをリアルタイムに分析し、新しい価値を継続的に創出し続ける必要がある。なによりデータや価値が変化し続ける中、システム自体も変わり続けなければならない。「今までのITシステムと同じ作り方では信頼性を担保できない。新しいアーキテクチャが必要になる」(清水氏)とのことで、NECではIoTに特化した新しい5層モデルを用意しているという。

NECが考えるIoTの5層モデル

 5層モデルはクラウドコンピューティングのみに依存する集中型システムではなく、IoTの連携制御を司るエッジ側、実世界の接点となるデバイス側にそれぞれコンピューティングを行なわせる分散型システムになる。これらを広域ネットワーク、デバイス間の近距離ネットワークで相互接続。変化し続けるシステムをSI力で最適化に導くというアーキテクチャになっている。こうした5層モデルの構築・運営において、NECはSDN、クラウド、ビッグデータ、セキュリティ、そしてSI力などの強みを発揮し、柔軟なシステムの構築、高い信頼性と可用性、高度なセキュリティを確保したIoTシステムを提供するという。

 清水氏は、NECがソフトウェア、コンピューティング、ネットワーク、セキュリティなど保有する技術を惜しげなくつぎ込み、今後も積極的なR&Dを展開すると説明。また、標準化や業界連携などの積極的な関与や2020年度約500名を謳う体制強化などもあわせて行ない、産業構造の変革をもたらすIoTの本格的発展段階に向け、安心・安全なIoTシステムの提供を推進していくとした。

IoT領域においては今後も積極的なR&Dを展開

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