RGB+Yのサブピクセルを採用
4Kパネルで8K相当の高精細表示を実現したシャープ
ここからは、テレビメーカー各社の独自の最新技術を解説していく。まずはシャープから。ハイエンドモデルの「AQUOS 4K NEXT」が注目だ。
これは、独自の4原色液晶技術と4K解像度の高精細化を組み合わせ、8K相当の高精細表示を実現した。この原理は、すでに発売されている「AQUOS クアトロンプロ」とほぼ同じで、XL20ラインなどはフルHD解像度で4K相当の高精細表示を実現している。
。ちょっと残念な点は、XU30ラインのモデルはフルHDや4K解像度の映像を8K相当の解像度で表示できるが、8K解像度の映像の入力には対応していない。これはシャープのせいではなく、8K放送や8Kコンテンツを受信するチューナーの仕様や、薄型テレビに伝送するためのHDMI規格がまだ8Kに対応していないためだ。
では、アップコンバート表示しかできない8K相当の表示にメリットがあるのかと思う人は少なくないだろう。ところが、XU30ラインの映像は驚くほどの高画質だった。それは超解像技術などの4K映像の情報から本来あるべき8K映像を復元する技術などの成果と言えるだろう。
XU30ラインの場合、超解像などの高画質処理は、「X8-Master Engine PRO」を採用。アップコンバートは最大3段階で、DVDなどのハイビジョン未満のソースをフルHD解像度にする2Kアップコンバート、そして4Kアップコンバートを行ない、さらに8Kアップコンバートを行なうというわけだ。
肉眼で見る映像に近いなめらかさに感動!
筆者が試作機で見た映像は、地デジ放送、BDソフト、4K映像だったがその印象を軽く紹介しよう。地デジ放送ではもともとの圧縮ノイズのチラツキが散見されるような面もあったが、4Kテレビで感じることの多い、ノイズが増大したような見づらさがなく、きわめて滑らかな映像になっていた。映像処理でノイズを抑えつつもディテールを復元する技術も貢献しているが、画素が識別できないほどに細かいため、ノイズも小さくなって目立ちにくいと感じた。
BDソフト、4K映像と元の映像の解像度が高くなるほど、その効果は高まっていく。一般的な4Kテレビは、はっきりと高精細であると感じる、ある意味わかりやすい映像であることが多いが、それが8K相当の表示となるとテレビ映像的な強調感や不自然さが消え、肉眼で見る映像に近いなめらかな感触になる。これは正直驚いた。
個人的には家庭用のテレビで8K解像度は不要とさえ思っていたのだが、8Kクラスの解像度がないと見たままの映像にはならないのかと考えを改めたほど。
もちろん、ただ高精細化しただけでここまでの映像を実現できたわけではなく、明暗のダイナミックレンジを拡大する「UV2A技術×メガコントラスト」も一役買っている。直下型LEDバックライトのエリア駆動と、VA方式をベースに光配向技術を採用したUV2A技術の組み合わせで、高輝度表示を実現するもの。「HDR」に相当する技術と考えていい。
テレビ放送やBDソフトなどの従来の映像も、映像を解析して本来の輝き感を復元する技術なども盛り込まれている。まぶしい光だけでなく、明るさ方向のディテール再現が大幅に増えることで映像のリアリティがかなり向上する。
年末登場予定の「ULTRA HD Blu-Ray」の登場を待たなくてもHDR的な映像を楽しめる。ただし、XU30ラインは今のところ、ULTRA HD Blu-RayなどでのHDR技術に対応するかどうかはアナウンスされていない。
そして、高輝度表示に加えて、広色域表示も万全。もともと4原色液晶技術は、RGBに黄色のサブピクセルを追加することで、中間色である黄色の色域が有利だ。それに合わせてRGBのバランスも最適化することで、赤や緑、シアンの色域の拡大を実現している。
これが「高演色リッチカラーテクノロジー」だ。その色域の広さは、ハイビジョンの色域規格(ITU-R BT.709)を大きく超え、8K/4K放送向けの色域規格であるITU-R BT.2020に迫るものとなっている。8K相当の高精細化と高輝度、広色域の三位一体が、XU30ラインの高画質の秘密というわけだ。
(次ページに続く、「データベース型超解像技術が自慢のソニー」
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