スーパーコンピューターの系譜は、今回もNVIDIAのGPUである。GF100ベースのTeslaでHPC市場への足がかりをがっちり掴んだNVIDIAは、後追いでGF110ベースのTesla C2075をリリースする。
Tesla C2075
GF110は連載87回でも書いたが、40nmの再設計バージョンである。幸か不幸か、主要なファウンダリーがすべて32nmプロセスをスキップした。
インテルのほかは、GlobalFoundriesのPD-SOIのみが32nm世代として提供されており、その他のファウンダリーはすべて28nmに移行したため、この時期主要なファブレス半導体メーカーは、プロセス微細化による新製品を出せずにいた。
結果、GF100を再設計することで、若干消費電力が下がるとともに動作周波数を引き上げ、さらに歩留まりを改善できた。Tesla C2075の場合、こうしたGF110の特徴をもっぱら安定性の方向に振った。
中国のスパコン天河一号が
GPUをTesla M2050に交換
前回の最後で、中国の星雲システムに触れたが、中国で最初にGPGPUを利用したシステムは国防科学技術大学(NUDT)に設置されたTianhe-1(天河一号)である。
初代のTianhe-1はQuad Core Xeon※をDual構成で搭載したマザーボードにRadeon HD 4870 X2が載ったノードが2560個、Infinibandで接続されるという構成で、2009年11月のTOP500で5位となる実効563.1TFLOPS(理論性能は1206.2TFLOPSで効率は46.7%)を達成している。
※:2.53GHz駆動のXeon E5540と3GHz駆動のXeon E5450が混在していた模様。E5540が4096個、E5450が1024個とされる。
このTianhe-1をベースに下記の改良を施したのがTianhe-1Aだ。
- CPUを6コア/2.93GHz駆動のXeon X5670に換装
- GPUをTesla M2050に交換
- ノード数を7168に増強
こちらは2010年11月のTOP500で実効性能2556.0TFLOPS(理論性能4701.0TFLOPS、効率54.3%)をたたき出して見事1位に輝いている。
それはいいのだが、問題はこのTianhe-1A、MTBF(平均故障間隔)が数時間と言われていたことだ。要するに数時間連続稼動するとなにかが壊れるので、システムを止めて修理したり交換しないといけないことだ。
この故障の詳細は当然ながら明らかにされていない。MTBFの数字そのものが公式なものではないのだが、故障要因の少なからぬ割合はGPU側だったらしい。
元々GF100そのものの製造がギリギリであり、連続運用すると機能不全に陥りやすいという話は連載87回でも触れたが、GPGPUはさらに連続運転を行なうわけで、壊れやすかったということだ。
このあたりがGF110では大幅に改善され、また若干とはいえ消費電力が下がって発熱も少なくなったことも効果的だったのだろう。当初はGF100ベースのTeslaを導入したところでも、後追いで交換するものをGF110ベースのC2075に切り替えたという話が聞こえてくるのは、このあたりの対策と思われる。
C2075はC2050/2070と同一スペックに抑えられていたため、交換してもアプリケーションなどの変更は必要とされなかったことが大きい。またGF110が安定したことで、GF110のフルスペック構成となるTesla M2090(512SPで1.3GHz駆動)も出荷されるようになった。
→次のページヘ続く (FermiからKeplerへ)

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