四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第143回
エイプリルフールに本気を出した2つの会社
ダジャレの裏で日本にしかない技術あり、コルグ「チュナ缶」のこだわりとは
2015年06月06日 12時00分更新
ダジャレは今回が初めてじゃなかった
東京都大田区は約4000もの金属加工工場が集まっていると言われ、ほとんどが家族経営の小さな工場にも関わらず、世界的に見てもここにしかないという技術を持つ工場がいくつもある。おそらく谷啓製作所は、そんな工場の代表だろう。
その谷啓製作所の社長、谷内 啓二さんは、御年83歳。16歳で富山から上京し、金属加工職人として働き、自社を立ち上げ、ダブルセーフティープルトップを発明した。いかにも矍鑠(かくしゃく)としておられ、ポジティブなお人柄がうかがえる。この方になら何を聞いても笑って答えてもらえそうだ。
―― あの、「がちょーん※1」ってよく言われませんか?
谷内 わははは!
渡辺 あちらの谷啓さんがご存命中には、うちにテレビ局から問い合わせが来たりしていましたよ。「次のスケジュールはこれでお願いできますか」とか、間違えて。
谷内 どっちが先輩かって争ってたね。私のほうが先輩※2。私は生まれながらの谷啓だから。
―― で、今回の缶の中身がコレなんですが。
谷内 初めて見ましたね。
渡辺 これがチューニングするものですか。
―― なんと驚いたことにちゃんと使えるんですよ。
杉原 当たり前じゃないですか!
―― コルグのチューナーはご存知でしたか?
渡辺 ええ、うちの子供がギターをやるもので。
―― それはよかった。まずコルグが本当はダジャレの会社ではないという説明から始めなければならないと思っていました。
谷内 わはは。でもね、電子部品は、以前、缶詰に入れたことがあったよ。あったけどねえ、ダジャレなんだよねえ、これ。ツナ缶にチューナー? 合うのかね、これ。
渡辺 いや、ダジャレなら前もありましたよ。やっぱりバンド関係の方で。
―― 差し支えなければ、それは?
渡辺 アジアン・カンフー・ジェネレーション、ご存じですか?
―― はい、もちろん。
渡辺 これなんですけど。アジ缶。
―― なるほど! ライブの物販にこんなのがあったら笑いながら買っちゃいますよね。
谷内 なんか行列作ってたらしいよ。
―― いろんな案件をやられているんですね。じゃあ、コルグさんを門前払いするようなことはなかったと。
渡辺 ええ、そういうことはありませんでした。ああ、またですか、と。
※1 「がちょーん」はクレイジーキャッツの故・谷 啓(たに けい)さんのギャグ。1932年生まれで、本名は渡部泰雄。芸名の谷 啓はアメリカのコメディアン、ダニー・ケイをもじったもの。
※2 谷啓製作所の谷内社長は1931年生まれ。
(次ページでは、「コルグが缶にこだわる理由」)
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