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ハードウェアエンジニアの今村博宣氏にお話をうかがった

ドローンをオープンソース化する「Dronecode」の今と未来

2015年06月04日 09時00分更新

文● 松野/ASCII.jp

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注目ポイントは「産業用への応用」

――最近はドローンに参入する企業も増えていますが、玉石混淆というか、製品のクオリティーにはかなりの差がある印象です。

今村 メーカー製品に関しては、実はもう「勝負あったな」という感じがしています。先行しているDJIは社員が1000人オーバーだったり、規模が全然違うんですよ。日本の企業が今から何かしても、正直太刀打ちできないだろうなと。

 以前、各社のドローンを分解したんですが(笑)、やっぱりDJIは頭一つ抜けています。筐体が徹底的にちゃんとしていて、上位クラスの機体は金属筐体で、ノイズを受けない、出さないつくりになっているんです。ホビー向け製品にしても、コネクターやケーブルは全部ボンド止めされていたり、信頼性が他社さんとは全然違う。時間をかけただけ、色々なことができているんでしょうね。シェア7割は伊達ではないですよ。

――DronecodeのハードウェアであるPixhawk 2の製品価格はおよそ10万円台になると言われています。同じ価格帯のメーカー製ドローンも多いですが、オープンソースのメリットはどういう点にあるのでしょうか。

今村 デュアルCPUを積んでおきながら、意外に安いですよね(笑)。基本的にはコンシューマー向けで、DJIのPhantomと競合するクラスのものになるということです。

 ただ、僕らもそうなんですが、やはりDronecodeの産業用ドローンへの応用を考えている人は多いと思います。産業用ということを意識すると、オープンソースであることは非常にメリットが大きいんですよ。

 先ほど言った通り、DJIのドローンは確かに良いつくりなんですが、ブラックボックスなわけです。本当の中身が一体どうなっているかは分からないから、業務に使うときも完全な信頼は置けないし、バグが起きたとしても追っかけができない。そういう意味で、オープンソースのものを改造して使っていく、あるいはベースにして必要なものを追加していくという形は当然ありますよね。

 Dronecodeというのは、ある意味Linuxのディストリビューションのコアになる部分であって、そこから様々な派生が出来ていくんじゃないかな、というイメージを持っています。例えば今、僕らは農業用のフライトコントローラーを作りたいと思っているんです。そういう場合に、DJIのような製品だと、機能やら何やらを追加するのはすごく難しい。「農業用ドローンはかくあるべき」というアイデアがあっても、Dronecodeのようなものをちゃんと使いこなしていかないと、作りきれないと思っています。

 たとえば農業用の難しいところって、農薬のタンクを積んでるので、自動航行中に加速度や重心値がタンク容量によって変わっちゃうんですよ。制御のパラメーターをいじっていくのが大変なんですが、軍用でもない限り、現状それほどいいコントローラーがないので、オープンソースで改造して、いい具合のものを作っていきたいんです。今コンシューマーで販売されている製品とはそもそも発想がぜんぜん違うし、速度や高度などの情報もブラックボックスの内部からはもらえないので、既製品を改造して……というのは正直難しいですよね。

――なるほど。そういう意味では、DJIのドローンとDronecodeは両極端ですね。

今村 DJIはApple、3D RoboticsはGoogle、という表現をしている人もいますよ。3D Roboticsはソースもハードウェアも全てオープンソースのものを集めて使っている。DJIはとにかく構造をブラックボックス化して、生産も販売もすべて自社で実施しています。さあ、どちらが勝つのか、という(笑)。

(次ページ、「プロジェクトの今後と、ドローンの規制問題」に続く)

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