愛媛県では、今後もICTの活用を積極化していく姿勢を示す。それは、県庁の効率や情報発信だけでなく、就労支援や障碍者支援、そして、産業振興にも活用していきたいという。
デジタルの要素を加え、従来の延長線上とは違うことをやる
中村 日本のモノづくりは世界トップクラスにあります。なかでも、中小企業の技術力はとても高い。
しかし、その中小企業が転機にさしかかっています。これまでは系列という中で仕事をしていましたが、経済成長の変化やグローバル化の中で、系列という枠組みが取り払われ、中小企業にも営業力が求められるようになってきています。
問題は、それら系列の中にいた中小企業が営業力を持っていない点です。このままでは中小企業が持っている世界最高の技術が宝の持ち腐れになってしまう。 ここで、行政の出番があるわけです。私は「チーム愛媛」と呼んでいますが、経済界と金融機関、そして自治体の三者がタッグを組み、一緒になって外に打って出て、官民協力型の営業フォロー体制を実行に移しているところです。
地元の企業が実需を作り出せなかったら経済は成り立ちません。金融緩和は、為替相場を変えたり、空気を換えるカンフル剤としての効果はありますが、実際の経済成長は、実需を創出できるかどうかにかかっています。地元の企業から実需が作られ、増収増益が見込まれるようになって、初めて設備投資が行われる。
そこに到達しないと、カンフル剤の効果はなく、むしろ副作用が始まる。
愛媛県では、3年前から実需創出をキーワードにしてきました。それをやるために県庁は何ができるか。貢献できるのは、引き合いのところ。つまり、営業です。そこで、まずは、企業や県内の特産品などをデータベース化しました。
続いて、営業の現場を見せるために、職員を連れて、三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠、丸紅、双日の6大商社を回った。民間とビジネスをやるにはこうすべきだということを学んでもらったのです。その後、県庁に「愛のくにえひめ営業本部」を作って、数字を追いかけるシステムを作った。
まずは、100億円を目指していますが、現時点で50億円のところまで来ています。しかし、これを倍にするには、このままの延長線上では無理です。新たな知恵が必要です。そこに、ICTの活用は不可欠です。これまではアナログで知恵を絞ってきたわけですが、ここにデジタルの要素を加えることで、従来の延長線上とは違うことをやっていきたいと思っています。
樋口 中村知事のこのリーダーシップには驚きます。営業のやり方、マーケティングのやり方を、社内にいかに伝授していくかという点は、民間企業においても重要な課題です。
一方で、ICTはずっと進化をし続けていますし、貢献の方法も変化してきています。新たな技術を紹介したり、それを効果的に使うにはどうしたらいいかを提案していく必要がありますね。
例えば、日本マイクロソフトでは、テレワークにも積極的に取り組んでいます。Face to Faceが最もインパクトはありますが、情報技術の進展、ネットワーク帯域の拡大により、限りなくFace to Faceの環境に近づいています。サイバー空間を利用した働き方、コラボレーション方法とはどういうものかを提案していきたい。
テレワークは、災害時の対策として、あるいは、会社に来なくても、女性が仕事に参加できるといったようにダイバーシティの実現でも効果があります。先進的な考え方を持った知事がいる自治体は、こうした技術には敏感ですね。
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