10月20日、日本科学未来館の敷地内で「空中3Dディスプレイプロジェクト」が開発した、空中描画装置の実験が一般公開された。これはスクリーンのない空間に3Dの絵や文字を描画させるもの。普通自動車に搭載し、自動車の天窓を開けて空中に投影した。
スクリーンレスで任意のドット絵を、空中に描く
お台場の日本科学未来館には研究棟が併設していて、11のプロジェクトが所属している。ロボットOSプロジェクト、さわれる情報環境プロジェクト、ヒューマノイドプロジェクトなど、興味深い研究が行なわれてるが、先日、そのなかから、「空中3Dディスプレイプロジェクト」の実験が公開された。
稲妻のような音とともに、りんごのドット絵を描いている様子(筆者撮影)
未来館に併設する「空中3Dディスプレイプロジェクト」研究員の浅野明氏がスクリーンレス3D映像の原理を簡単に説明した。「小学校のとき、太陽光を虫眼鏡で集光して紙を焦がしたり焼いたりする実験をしたのですが、それと同じ原理です。レーザー光源を虫眼鏡のようにレンズで集光し、焦点付近をプラズマ状態にして、そのときに起こる発光を利用して描画しています。ミラーなどを用いて、3次元のXYZ軸で任意のポイントを狙って発光しています」。
さらに浅野氏は、光る仕組みについて「プラズマ状態を利用して発光させている例としてはひとつに蛍光灯があります。通常は原子核の周りを電子がきれいな軌道で回っていますが、集光してエネルギーを費やすと、電子の軌道がずれ自由に動き回る(プラズマ)ようになる。その時、電子が元に戻ろうとするときに発光する。その仕組みを利用した」と話した。
この研究は、もともと、阪神・淡路大震災の直後に災害情報をどう伝えるかという二次災害を防ぐ災害対策から発足した。車に装置を積むのはそのイメージからだ。スクリーンレスで任意のドット絵を、空中に描く構想が生まれたという。
文字やマークを描けるようになったので、次はデジタルサイネージや防災に応用したい考え。また、光の色は変えられないが、実験で発生した大きな稲妻のような音については小さくしたり、音階をつけたりできると話した。天候も大雪以外は問題なく描画できるそうだ。
筆者紹介:河内典子(こうちのりこ)
サラリーマンとして編集ライターを20年弱していたが、この秋からフリーランスに。アプリ制作者を応援するような記事が得意。子育てや子ども向けプログラミング教育にも興味がある。前職では「おばかアプリ選手権」の発起人として並々ならぬ情熱を注いできた。フリーランスでもできる面白いアプリ選手権イベントの運営をしたがっているので、コラボしてくださる企業さま、お気軽にご連絡ください。