このページの本文へ

HTML5に最適なのはグーグルではなく、アップルだ

2014年10月10日 07時00分更新

文● Matt Asay via ReadWrite

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

オープンスタンダードのHTML5がモバイルアプリへ挑む。

MTE4MDAzNDE2OTI3MDEyMzY2

本来ならグーグルがHTML5の開発を先導しているはずだが、現実はそうではない。実際は、その名誉はネイティブアプリの素晴らしさを主張し続けてきたアップルのものだ。

関連記事:グーグルは一刻も早く、HTML5にもっと力を入れるべきだ

アップルはオープンソースやオープンスタンダードのリーダーとして知られて来た訳では無い。しかしiOS 8によって両分野でリーダーとなったのだ。多くの性能とユーザー体験を改善するなかで、アップルはアプリケーション開発者にも大幅な機能改善を提供した。それにはiOS 8でハイブリッドアプリが動く新たなブラウザエンジン、WKWebViewも含まれている。

皮肉にも、アップルのかつて敵、Flashを保有するアドビが最も利益を得るかもしれない。

現在のアプリ開発手法

これまでiOSかAndroidのどちらをとっても、性能要件によって、モバイル開発者はネイティブアプリを選択せざるを得なかった。VisionMobile がそのDeveloper Economics 四半期報告で示すように、HTML5はバックアップ・プランという扱いだった。

pic001

「モバイル開発者のマインドシェア(2014 Q1)」

だが何かがモバイル開発に起きているのだ。ネイティブの重要性は変わりないが、HTML5は開発ツールとして重要な位置を占めるようになってきた。プログラマーがプラットフォームに関係なくコードを再利用したり、アプリの中にウェブ・コードを埋め込むのに使用しているのだ。後者は、「アプリの基幹機能」であると、東京のPhoneGap開発プラットフォーム・プロバイダMonacaを運営するアシアル社のCEO兼創設者、田中正裕は語っている。

別のVisionMobileの調査が示すように、かなりの割合のアプリがネイティブコードとHTML5のハイブリッド仕様となっている。

pic002

「ネイティブ神話:47%のiOSアプリと42%のAndroidアプリが完全なネイティブではない」

ネイティブコードを補完して何とか共生してきたHTML5にとってiOS 8の登場は、まるでファーストクラスのチケットでも受け取ったかのように見える。

アップルがHTML5を繁栄させる

多くの人がiOS 8による新たなHTML5のサポートを分析したが、機能と性能に関してSenchaのロス・ジェルバシほど詳細に行ったものはいないだろう。多くの改善点の中で、ジェルバシはいくつかの最重要点を示している。

pic003

「iOS 8による新たなHTML5のサポート」(Source: caniuse.com via Sencha)

UIWebViewの後継であるWKWebViewには、ジェルバシが「テストの結果、少なくともUIWebViewの4倍の性能を記録した」とするNitro JS engineが含まれる。「これはハイブリッドアプリにとって絶好の支援となり得えます」とも彼は語っている。

そうなると、「ネイティブ第一」のアップルがHTML5体験の改善に力を入れている事は驚きには値しない。上に記したように、開発者はウェブをアプリに埋め込みたいし、アップルは開発者に素晴らしいiOS体験をしてもらいたいのだ。それゆえ、デバイスを改善してくれるものなら何でも、アップルはサポートするだろう。

アドビがジョブズのビジョンを受け入れる

Flashにとって悪く働くならば特に力を入れるはずだ。HTML5をサポートする事によって、アップルはFlashを葬りHTML5に置き換えるという故スティーブ・ジョブズの野望を叶えることができるのだ。「Flashに対する考え方」の中で、ジョブズはHTML5を熱心に売り込みながら、Flashを笑いものにした。曰く、

モバイル時代に創造される、HTML5のような新しいオープンスタンダードが、モバイルデバイス(PCでも同じでしょうが)で勝利を収めるでしょう。恐らくアドビは将来、アップルが過去にFlashと決別した事を批判するのを止めて、優れたHTML5ツールを作る事にもっと専念しなければならなくなるでしょう。

無論、アドビは実際にHTML5を取り入れた。それも大規模に。2011年後半、アドビはNitobiを買収した。HTML5とJavaScriptのアプリ開発用として人気の高いプラットフォームであるPhoneGapの開発元だ。それ以降、アドビはPhoneGapに投資し続けている。

議論の余地はあるが、アップルはアドビよりも遥かに大きくPhoneGapの進化に寄与した。一般的に見て、iOS 8がHTML5にとって優れていれば、それはPhoneGapにとっても優れていることを意味するのだ。下図はそう解説するソフトウェア開発会社のScirraによるものだ。

MTI0OTU2NDQxOTY5NzM5Nzg2

このチャートはiOS 8上でのPhoneGapの性能向上を明示するが、WKWebViewの次のリリースにPhoneGapがどれほど上手く順応できるかは示されていない(アドビはテストしていると言うが、現状ではバグによってWKWebViewの使用は不可能だ)。Scirraによると、WKWebViewが組み入れられれば、PhoneGapは「この(性能)差を埋めて、Safariの性能に対抗できる」だろう、ということだ。

これら全てがアップルにとって素晴らしいと言える。なぜならそれは開発者がiOS 8用の素晴らしいアプリを作成する手段が増える事に他ならないからだ。そして同時に、アップルのかつての因縁の相手であるアドビは皮肉にも、PhoneGapプラットフォームから恩恵を受けることになるのだ。

トップ画像提供:Shutterstock

Matt Asay
[原文]


※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら


週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中