ジュニパーネットワークスは5月13日、同社が提供するオープンソースソフトウェア(OSS)のSDNソリューションをテーマとした、第1回の技術コミュニティカンファレンス「OpenContrail Day 2014 Spring」を開催した。ミクシィによる事例講演、ジュニパーによる技術解説講演などが行われ、コミュニティへの積極的な参加と情報交換を呼びかけた。
OpenContrailは、ジュニパーがエッジオーバーレイ型の商用SDNソリューションとして2013年10月に発表した「Juniper Networks Contrail」を、オープンソースライセンス(Apache 2.0)のもとで公開しているものだ(関連記事)。両者の違いはジュニパーによる商用サポートの有無で、コードベースは同一である。
サービス拡大のスピードを妨げないよう、NWにできること
事例講演を行ったミクシィ システム統括室たんぽぽグループの吉野順平氏は、現在のWebサービス開発/運用が外部クラウドサービスとオンプレミスシステムを横断的に利用して進められている背景を説明し、SDNがそこで果たす役割と、OpenContrailへの期待を語った。
現在の同社のWeb開発では、少人数の開発チームが外部クラウドサービスを利用して開発とトライアルを進め、サービスがヒットした暁にはオンプレミスのリソースも一気に投入して大量のユーザーをさばく手順になっている。吉野氏らシステム基盤チームは、サービス開発/運用のスピードの“足かせ”にならないように配慮したシステム基盤を提供するのが役目だ。
セルフサービス化の促進などさまざまな取り組みを進める吉野氏だが、ネットワークをどうするのかは「悩み」だ。外部クラウドとオンプレミスのリソースをネットワーク接続して活用したいが、「オンプレミスとクラウドを接続する場合の“恐怖”が色々とある」(吉野氏)。たとえば、別々のクラウド環境で開発されたアプリケーションのアドレス空間重複、アクセス制御リスト(ACL)による複雑な管理、オペレーションミスによる事故といった大きな問題が生じやすいという。
こうしたネットワークの課題を、サービスごとにレイヤー3のVPN(L3 VPN)を張ることで迅速に解決したいと、吉野氏は考えている。
そこで現在、エッジオーバーレイSDNであるContrailの導入に取り組んでいるところだという。吉野氏は「まだイケてないところはある」としつつも、エッジオーバーレイSDNとしてContrailの技術的な優位点について「ほかの(オンプレミスの既存)ネットワークとの接続がすぐれている」と評した。Contrailは、コントロールプレーン、データプレーンとも既存のルーターでも扱える標準プロトコルで構成されており、現状の資産(機器)を生かせる点が大きいことを説明した。
日本語でのコミュニティ活動を活性化
OpenContrail Dayの冒頭で、ジュニパー 技術統括本部 統括本部長の加藤浩明氏は、「OpenContrailコミュニティの“サポーター”の一員として貢献を続けていきたい」とジュニパーとしての抱負を語った。加藤氏によると、Contrail/OpenContrailの発表後、セットアップの容易さ、スケーラビリティ、ソフトウェアやアーキテクチャのオープン性による「安心感」などの点が顧客から評価されているという。
また、OpenContrailの日本語公式サイトやGoogleグループ、Wikiなど、日本語による情報交換や要望の場も開設されたことも紹介された。同イベントで行われたジュニパーのシステムズエンジニア、中嶋大輔氏のContrailの技術解説資料もすでに公開されている。
「今回は、第1回目の『きっかけづくり』としてジュニパーが主催したが、ゆくゆくはぜひユーザー主体で計画して、議論の場を作っていただければ。そのためのサポートはいくらでもしたい」(加藤氏)
ジュニパーがOSSを公開するのは、このOpenContrailが初めてとなる。イベントにもまだ、同社のコミュニティ活動に対する“堅さ”のようなものが感じられたが、キャリアからWebサービスプロバイダーまで多彩な参加者が来場し、注目度の高さを表していた。
次回の同イベントは秋頃に開催される見込みだ。