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Interop Tokyo 2014レポート 第13回

Interop Tokyoの基調講演で語った、現実化するSDNへの備え

「ネットワーク技術者も自動化スキル習得を」ジュニパー幹部

2014年06月25日 14時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 Interop Tokyo 2014の基調講演で、米ジュニパーネットワークスのジョナサン・デイビットソン(Jonathan Davidson)氏は、企業がこれからSDN導入に取り組むうえで重要となる幾つかの指針を示した。公演後、同氏に単独インタビューの機会を得たので、講演の中で興味を引かれた幾つかのポイントについて詳しく聞いた。

ジュニパーネットワークス キャンパス&データセンター・ビジネスユニット シニア・バイス・プレジデントのジョナサン・デイビットソン氏

デイビットソン氏は、SDNを取り巻く現状について「1年前の混沌とした状況から『現実』へと突入しつつある」と語った。「SDNはネットワーク最大の課題、『アジリティ(俊敏性)』を実現する」(同氏)

これからのネットワークエンジニアは「自動化スキル」を手にする

(基調講演より要旨)

 ネットワーク構築/運用の「自動化」は、SDNが実現する最も重要な機能の1つだ。

 たとえば当社のある顧客は、商用Webサイトを運用しており、3~4日ごとに3000~4000もの新しい製品をオンラインに掲載している。しかし、ネットワーク担当部門の規模を聞くと「当社にはネットワークエンジニアは1人もいません」と言う。自動化の仕組みを備えており、ネットワークの問題はシステムが認識して自動的に修正してくれるので、ネットワークのことはソフトウェア開発者が少し理解しているだけでいい。逆に言えば、自動化しなければこうしたスケールとスピードでサービスを運用するのは無理だろう。

 (聴衆であるネットワークエンジニアの)皆さんの仕事は、今後2~5年のうちに抜本的に変わる。毎日同じコマンドを叩き、その結果を確認するだけというような仕事の時代ではなくなった。個人的には、5年後にはネットワークエンジニアの数が半分になっているかもしれないとすら思っている。

 (ネットワークの自動化という)変化を受け入れなければ、皆さんの仕事の将来は怪しくなる。逆に、「Python」や「Puppet」「Chef」といった自動化ツールのスキルを身につければ、将来的な成功が担保されるだろう。ジュニパーではそうしたスキル習得もサポートしていきたいと考えている。

デイビットソン氏は、SDNによる自動化により「電話交換手が自動交換機に取って代わられたような、常識を覆すような大きな変化」が業界に起きると語った

――講演では、ネットワークエンジニアの仕事が今後数年で根本的に変わり、これまでのような仕事はなくなっていくだろう、という厳しい言葉が出ました。

 ソフトウェアによる自動化の重要性については、世界的な大手企業幹部たちとも意見が一致している。すでに彼らは複数年計画の中で、ネットワークエンジニアリングの“進化”を想定している。

 ITインフラのソフトウェア化(Softwafe-Defined化)や集約化に伴って、ネットワーク/サーバー/ストレージのスペシャリストという区分も徐々に薄れていくだろう。たとえば、かつては「音声(電話)」と「データ」で別々のスペシャリストがいたが、今では相互に専門領域の知識を学び、2つの区分は薄らいでいる。

――ネットワークエンジニアは「それでは今、何をすればいいのか?」と考えるでしょう。ジュニパーもスキル習得を支援すると発言されましたが、具体的には。

 実際のところ、多くの(Juniper製品を利用する)Junosエンジニアはこの10年間、自動化やスクリプティング、プログラマビリティなどの課題に取り組んできた。標準的なJunos認定エンジニアであれば、すでにJuniper製品のさまざまなツールやAPIを通じて運用を自動化できる状況にある。

 Junosのエンジニア認定プログラムにおいても、自動化ツールの取り扱いについても対象範囲とすることを検討し、追加に着手している。現在だけでなく、将来的な自動化の動きにも対応できるようなスキル習得を目指す。

 さらにジュニパーがこれから取り組もうとしているのは、新しい(自動化の)テクノロジーをまだよく理解していないエンジニアであっても、ごく簡単に理解できるようにすることだ。さまざまなツールをオープンソースソフトウェア(OSS)として公開し、ソースコードを読んだり実際に使ってみたりすることで、自らも開発できるスキルを身につけられるように支援していく。

 ジュニパーは1.7億ドルをかけてContrailを買収したが、ソフトウェアはOSSの「OpenContrail」として公開している(関連記事)。これも、ソフトウェア開発の仕方を広くネットワークエンジニアやアプリケーション開発者に公開していく取り組みの1つだ。

――ところで「変化を受け入れなければ仕事がなくなる」という言葉は、ネットワークベンダー自身にもあてはまりますよね。

 そのとおりだ。ベンダーとしても、劇的な変化が起きているこの現状を受け入れ、オープンなフレームワークを受け入れていかなければ取り残されてしまうだろう。

 ちょうど先日、電気自動車(EV)メーカーのTesla Motersが、保有する特許技術をオープンにすると発表した(※注:EV業界発展のため、他社がTeslaの特許技術を使用しても訴訟を起こさないと発表)。ネットワークにかかわる企業でも、技術や情報をオープンにするという革新的な動きが増えてくるかもしれない。Contrailはそのいい例だろう。

(→次ページ、率直に言って、シスコの「ACI」ビジョンをどう見ていますか?)

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