ジュニパーネットワークスは3月20日、サービスプロバイダー/通信事業者向けの新しいSDNソリューション群に関する説明会を開催した。こうしたSDNソリューションの提供を通じて、通信事業者のビジネス変革を支援していく狙いがある。
カスタマイズ、パーソナライズできる通信サービスの実現に向けて
このSDNソリューション群は2月にスペインで開催された「Mobile World Congress(MWC)2014」で発表された。説明会ではまず、これからの通信事業者に高度なSDNソリューションが必要となる背景が語られた。
ジュニパーの長滝信彦氏は、ビジネスだけでなく社会生活全般がネットワークサービスへの依存を強める中で、通信事業者にはカスタマイズできる、あるいはパーソナライズできる(個人に合わせて自動カスタマイズされる)サービスへの期待がより強まっていると語る。
ビジネスの概況を見ても、通信事業者の付加価値サービス強化は必然と言える。「たとえばクラウドサービス事業者の利益率が50%を超える一方で、通信事業者の利益は10%以下」(長滝氏)。またジュニパーの発表では、「消費者がカスタマイズされた製品に支払う額は、既製品に支払う額よりも平均28%も高い」という最近の調査も引用されている。単純な価格競争に流れがちな、いわゆる“土管ビジネス化”した通信サービスから変わっていくことで競争優位性が確保できる。
ただし、そうした柔軟な通信サービスは、現状の非効率的なインフラや、複雑で手作業ベースの運用手法のままでは実現が困難である。そこで、SDNを取り込んだネットワークアーキテクチャの変革が必要になるというわけだ。
ジュニパーでは、昨年10月にクラウド/データセンター向けSDNソリューション「Juniper Networks Contrail」を発売している(関連記事)。長滝氏は、Contrailのような「サービスレイヤー」でのSDN採用/活用はすでに進行しつつあるが、一方でそのインフラとなる「ネットワークレイヤー」の最適化にはほとんど手が付けられていないことを指摘した。
3つのSDNソリューション群を発表
今回、ジュニパーでは大きく3つのSDNソリューション群を発表している。ネットワークレイヤーの運用管理の効率化、ネットワークインフラの拡張、そして柔軟な顧客向けサービスの創造が鍵となっている。
ネットワーク運用の自動化/簡素化を目指す「Junos Fusion」テクノロジーは、単一の管理プレーンから、ジュニパーやサードパーティによる数千のネットワーク要素を管理可能にする。具体的にはジュニパーの「MXシリーズ」「PTXシリーズ」ルーターを単一の管理ポイントとし、標準プロトコルのNETCONFやYANGを通じて他のルーターや光回線、マイクロ波回線、モバイル回線などの機器を管理、設定可能にする。
長滝氏は、将来的にはContrailや「Junos Space」といった他レイヤーの管理製品との連携も計画されており、マルチベンダー対応の俊敏なネットワーク管理が実現すると紹介した。Junos Fusionは今年第2四半期から提供される予定。
次は、トラフィックエンジニアリングコントローラの「NorthStar Conrtoller」、および独自シリコンによる「PTX 1Tbラインカード」だ。ジュニパーが買収したワンデルの技術を統合したNorthStar Controllerは、リアルタイムなトラフィック分析とオペレーターが定義したパフォーマンス/コスト要件に基づいて、自動的にマルチベンダーネットワーク内の最適経路の特定とプログラミングを行う。動的なトラフィックのサポートや回線利用率の改善を通じて、パフォーマンスとコスト効率の向上が図られる。NorthStar Controllerは今年後半、1Tbラインカードは第2四半期から提供予定。
そして、MXルーターのサービスコントロールゲートウェイ(SCG)機能「Junos Subscriber Aware」「Junos Application Aware」が紹介された。この機能により、加入者やアプリケーションに連動して、そのトラフィックを特定のサービスチェーンに振り分けることができる。NFV(Network Function Virtualization)をコントロールするContrailとの組み合わせで、「たとえばWebトラフィックならば自動的にセキュリティサービスに、ビデオトラフィックならば高速化サービスに、といった振り分けができる」(長滝氏)。MXルーターのSCG機能は今年中盤から提供予定。
最後に長滝氏は、こうした相互連携可能なSDNソリューション群を採用することによって「IPとITの融合」が図られることを示した。たとえば、通信事業者のポータル画面から加入者が利用したいサービス(SaaSアプリ、セキュリティなど)を選択すると、そのサービスへの利用登録と同時に、それに最適化されたネットワーク環境も提供されるというビジョンだ。
「クラウドサービス事業者がサービスレベル契約を行い、通信事業者/サービスプロバイダーがSDNを通じてそれを担保するというビジネスモデルもありうるのではないか」(長滝氏)