このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

NTT Comが描くクラウドとグローバルITの現実解 第3回

クラウドはグローバルITの課題解決の鍵となる

グローバルITはなぜ失敗するのか?IDC Japanの識者が語る

2013年10月30日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

先週行なわれた「NTT Communications Forum 2013」の2日目、IDC Japanの寄藤幸治氏がITのグローバル化についての講演を行なった。寄藤氏は、同社のさまざまな調査結果を引き合いにしながら、ITのグローバル化について課題を抽出し、解決までの道のりを提言した。

ITのマルチナショナル化はほぼ必然的に起こる

 「企業のグローバル化を支えるITのあり方~クラウドが実現するグローバルITガバナンス」と題した寄藤氏の特別講演は、日本企業のグローバル化/海外進出に関する解説からスタートした。同氏は経済産業省やJETROの調査を引き合いに、海外現地法人の企業数が着実に伸びていること、事業規模の拡大を図る意向を持つ企業が増えていると現状を説明。進出先としては、欧米からアジアへのシフトが顕著になっており、市場としても、生産拠点としても中国やASEAN諸国が、今後注力するエリアになっているという。

IDC Japan ITサービス/コミュニケーションズ/ユーザーサーベイ グループディレクター 寄藤幸治氏

 こうした企業の海外進出の本格化にともない、ITの課題も多様化している。IDC Japanの調査では、さまざまな課題が噴出している現状が明らかになっているが、特定の傾向が見られるという。「標準化や集約、ガバナンスという課題になっている傾向が強い」(寄藤氏)。つまり、各国や地域でバラバラのITを使っており、中央からのガバナンスも効いていない。これは中小企業だけではなく、大手企業でも同じ傾向にある。「これではグローバルITではなく、マルチナショナルITだ」と、寄藤氏は指摘する。

なぜ標準化と集約が問題となるのか?

 では、なぜバラバラなITになってしまうのか? IDC Japanの調査では、実はここに明確なロジックがあるという。現在、多くの企業は生産拠点のみではなく、販売拠点としてグローバルに進出するため、まずは利益の極大化より、売上高の増大を求める傾向にある。しかし、進出する国や地域が増えると、異なる文化や商習慣にそれぞれ対応しなければならない。「インドネシアやマレーシアはイスラム教系、タイは仏教系、フィリピンはキリスト教系。同じASEAN4カ国の宗教だけみても、これだけ違う」(寄藤氏)。

 こうした多様化の中では、本社のやり方を押しつけても売り上げは伸びず、おのずと現地の業務プロセスに合わせた方が売り上げの拡大が容易になる。当然、部分的に最適化された現地の業務プロセスにあわせてシステムが構築されるため、前述した標準化や集約、ガバナンスという問題が起こり、ITもマルチナショナル化する。「誤解を恐れずに言えば、このITマルチナショナル化はすべての会社でほぼ必然的に起こる」と寄藤氏は指摘する。

ITのマルチナショナル化はほぼ必然的に起こる

 システムが分散すると当然予算も分散化する。2013年6月に行なったIDC Japanの調査によると、3社に約1社は本社が知らないIT予算が海外拠点で執行されており、わからないまで含めるとほとんど半分は予算の執行について把握してないと捉えられる。さらに面白いのは、海外の売り上げ高比率が高くなってくれば来るほど、一時的に本社が把握できない予算が増加するという傾向だ。

グローバルな業務の標準化は非IT部門も期待している

 ITの標準化・集約を進めれば、業務やITコストは最適化され、情報を迅速に把握できるようになる。意思決定もスピードアップし、機会損失も最小化。コンプライアンスの観点でも、現地法人に対してガバナンスを効かせることが可能になる。

 寄藤氏は、こうした標準化・集約を積極的に進めている企業に行なったヒアリングの内容を紹介する。「その会社も昔は拠点ごとにサーバーが立っていた。これではまずいということで、まずはサプライチェーンなど連携するアプリケーションの統合を始めた。インフラについてもまずはいったん4拠点に集約し、最終的には1拠点にする予定」という。ヒアリングした会社において共通しているのは、ITが経営に組み込まれており、ITに関する意思決定を自分自身で行なっているという点だという。また、ITの構築や運用をベンダー任せにせず、本社と海外拠点の人材交流も盛んというのも特徴。「ITに関する意思決定を他人任せにしない。強い意志を持って、グローバルITをどうするか決めている」(寄藤氏)とのことだ。

グローバルITを成功させるには強いリーターシップと経営とITとの統合が重要

 寄藤氏は、「そんなかっこいい話をしても……という感想もあるでしょう。確かに海外売上高の何%という目標のため、ITは現地に任せろという経営者もいるし、海外拠点の抵抗もある。やれない理由も数多く存在する」と語り、「やりたくてもやれない」情報システム部の立場も斟酌する。とはいえ、実は非IT部門からの期待も大きい。JEITAの調査では企画部門や事業部門、営業部門などがグローバルな業務標準化を期待しており、情報システム部でグローバルITの標準化・集約などをやり遂げる価値があると指摘した。

ITを使えば、グロバールな業務の標準化は可能なのではという期待が大きい

(次ページ、グローバルITの課題を解決するクラウド)


 

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    TECH

    訓練だとわかっていても「緊張で脇汗をかいた」 LINEヤフー、初のランサムウェア訓練からの学び

  2. 2位

    ビジネス・開発

    最悪のシナリオは「フィジカルAI」による基幹産業の衰退 日本の勝ち筋は、“同期技術”と“ドメイン知識”

  3. 3位

    ITトピック

    若手が言わない“本音の退職理由”上位は/「データ停止は景気後退よりも企業の脅威」6割/クライアントに告げずAI活用するフリーランス、ほか

  4. 4位

    Team Leaders

    ファイル名が命名規則に合っているかの自動チェック、Power Automateのフローで実現しよう

  5. 5位

    データセンター

    液冷技術の最先端が集うイノベーションラボ「DRIL」、印西のデータセンターに現わる

  6. 6位

    TECH

    糖尿病超早期を採血なしで検出、予防へ! 代謝や臓器のつながりに着目した予防法開発

  7. 7位

    ビジネス

    廃校がAIの心臓部に!? 地方の遊休施設を「AIデータセンター」に生まれ変わらせるハイレゾの挑戦がアツいぞ

  8. 8位

    Team Leaders

    バックオフィス業務もAIに“丸投げ” マネーフォワードが「Cowork」機能を2026年7月に投入へ

  9. 9位

    TECH

    合成ゴムが及ばない天然ゴムの高性能のメカニズムを、現象発見から100年後に解明

  10. 10位

    TECH

    “GPUなし”ノートPCで動くLLMで、ローカルAIエージェントを自作する

集計期間:
2026年04月10日~2026年04月16日
  • 角川アスキー総合研究所