新たな技術が世の中に浸透していくなかでリーダー的な存在でありたい
今回の講演のなかで、デルCEOは、なんどとなく「長期的戦略」という言葉を使った。非上場化のメリットをその言葉に集約してみせたともいえよう。「デルは、全世界のすばらしい企業の成長をお手伝いさせていただいている。しかし、世の中は根本的に変わってきている。また多くの課題を解決する必要もある。それらの変化に対応し、数々の課題を解決するのが、テクノロジーである。こうした変化に適用し、デルがブレイクスルーしていくには、非上場化が不可欠だった」とデルCEOは強調した。
業界内では、「クラウド」、「ソーシャル」、「モバイル」、「ビッグデータ」、「セキュリティー」が注目を集める技術となっている。「新たな技術の登場という点では、25年前にPCサーバーが登場してきたときと同じ。しかし、大きな違いは、これまでにはないスピードで、新たな技術が世の中に浸透していくという点だ。デルは、そのなかでリーダー的な存在であり続けたい」
ここ数年、デルの変革に遅れが見られていた点は否めないだろう。そうした立場からの脱却が、いまのデルの最優先課題だ。デルは、ここにきて事業を集中させる姿勢を強めている。
集中させているのはエンタープライズソリューション。ハードウェアの観点からみても、それにつながるサーバー事業や法人向けPC事業は強化するが、コンシューマ向けPCは最優先での強化事業ではない。そして、スマートフォン市場に対しては、デバイスではなく、モバイルデバイス管理ソリューションの観点からアプローチする。これまでのデルの方針が大きく転換していることを示す象徴的なものだといえるだろう。
デルCEOは、「デルは、企業の脱メインフレームを支援し、俊敏であり、低コストなITシステムを提供したい。また、業界標準技術への移行を支援し、レガシー環境からの束縛を放たなくてはならない」とする一方、「ソリューションを提供するためには、経済性の高い新たなデータセンターを構築し、クラウドアーキテクチャーを活用し、利用環境を近代化する必要がある。一方で、デル自身が、様々な業種に対する知識を持ち、顧客のニーズを知らなくてはならない。それに相応しいハード、ソフト、サービスを提供する必要していくことになる」とする。
これが、エンタープライズソリューションにおいて、デルの目指す姿である。
講演では、「これからは、データセンターが世界の中心となる」と、デルCEOは宣言した。それは、世界の変化と、テクノロジーの変化が密接に連携していることに起因すると指摘する。「データセンターは、単に記録を残すためのものではない。また、トランザクションのためのものでもない。リレーションを実現する場所である。結果として、データセンターそのものが、多くの人が貧困から脱出することを支援するものになる」とする。
これまでもITが、世界の課題を解決し、貧困から多くの人を脱却させてきたとデルCEOは自信をみせる。それをさらに加速させるのがIT業界の役割であり、デルの役割だというわけだ。世界の課題解決を打ち出すデルにとって、四半期ごとの業績にこだわる上場という体制は、似つかわしくないのかもしれない。

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