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世界最大のベンチャーが目指すソリューションベンダーへの道

デル郡社長が語る「顧客が求める自動化やオープン化に強み」

2013年12月18日 09時00分更新

文● 末岡洋子

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PC直販からソリューションへの拡大をどのように進めるのか。デルの本拠地があるテキサス州オースティンで、同社のソリューションイベント「Dell World 2013」の前日となる12月11日、日本法人を率いる郡信一郎社長に日本での戦略や取り組み、これまでの成果などについて話を聞いた。

ソリューションベンダーとしての3つの訴求点

 創業29年を迎えた米デルにとって、今年最大のニュースは非公開企業となったことだろう。2月に創業者らの買収による株式非公開化計画を発表。10月末にデルはマイケル・デル氏、それに米Silver Lake Partnersが所有する非公開企業として再出発を切った。目指すはソリューションベンダーへの転身だ。

 「世界最大のベンチャー企業」-Dell World 2013で、マイケル・デル氏は集まった6200人の顧客やパートナー企業を前に、非公開企業となったことを報告しながら、このように自社を表現した。デル氏はテキサス大学在学時にデルを立ち上げ、ヒューレット・パッカード(HP)らにならぶ大手PCメーカーに育て上げた起業家だ。現在デル氏とデルが目指すのはソリューションベンダーだ。5~6年前に打ち出した方針だが、非公開化により動きをさらに加速していく。ここでデルはHP、IBMら古参のITベンダーの敷地に乗り込むことになる。

 日本法人のデルは、今年好調な一年だった。「第3四半期、PCのシェアは前年同期比2.5~3.5ポイント増やした。サーバーも1.5ポイントほど増えている」と郡氏は微笑む。約2年半前に社長に就任、それ以来一環して取り組んできたことは米国本社の敷くグローバル戦略と同じくソリューションベンダーとしてのデルだ。「日本のデルを日本のITソリューションプロバイダーの地図に載せること。日本の情報システムに携わる人にとって、ITソリューションプロバイダーの1つの選択肢になること」という就任時の目標に対し、「まだ道半ばだ」と現状を評価する。

デルの郡信一郎氏。営業統括本部長から2011年7月に代表取締役社長に就任。これまでの業績を「妥協点」と評価する。「勢いのある会社と思ってもらいたい」と語る

 「PC」「直販」のイメージが強いデルだが、どうやって「エンタープライズシステム」「ソリューション」のデルと思ってもらうのか? 郡社長はデルが訴求できる点として、以下の3つを挙げる。

 「1つ目はグローバルプレイヤー。デルのようなグローバルプレイヤーは少ない。われわれは180カ国で展開しており、たとえば法人向けPCでは海外どの国にいても同じサポートを受けられる。2つ目はオープン。デルは創業当初からずっと、オープンなITソリューションを提供してきた。デルのサーバーはつねに他社製ストレージ、他社製ネットワークとつながる。オープンはわれわれのDNAだ。ソリューション分野での重要な戦略の1つが、お客様をオープン環境に移行させるのをお手伝いできるという点。ベンダーの中には、オープンと囲い込み型の両方のインフラを提供しているが、この場合後者の方が利益率が高いため後者を優先するのではないか。デルはオープン「も」ある、ではなくオープン「しか」ないので、お客様がオープン環境に移行して頂くにあたって何もしがらみや阻止するものがない。3つ目はソフトウェアの統合。オープン技術提供にあたっての差別化として、機能の多いソフトウェアが入っている点。これまでもソフトウェアの統合を行ってきたが、今後も強化する」。

 2点目のオープン技術について郡氏は、デルが手がけたシンガポール証券取引所の例を紹介する。メインフレームベースだった同証券取引所はデルのソリューションを導入。コストはもちろん、性能も倍になったという。「20年前なら性能、安定性、検証不足などの技術的障害があったかもしれないが、オープンソリューションに対する技術的懸念はなくなってきた。レガシーはさまざまな面で負担が大きい。今後シンガポール証券取引所のような移行事例が増えるだろう」と郡氏は述べる。

 3点目のソフトウェア統合については、郡氏はデルのキーワードを「自動化」と表現する。「管理は従来からある課題だが、この負担を軽減していく」と郡氏。さらに、「情報システムへの期待が変わってきている。これまでの期待はシステムの運用だったが、先進的な企業は事業戦略を執行する上でITをどう役立てるのかを一緒に考えるパートナーを探している」という。このような変化を受け、IT部門が戦略に時間を多く割くことができるようにデルは運用を自動化していくという。これは、人為ミス、時間、経費とさまざまな面でもメリットをもたらす。「ハードウェア、ソリューション、ソフトウェア、サービスを含めて実現していく自動化は、デルがもっとも得意とするところだ。また、これは顧客が求めているものと合致すると強く信じている」と断言する。

コンバージドシステムとクラウド戦略

 エンタープライズのトレンドの1つが「コンバージドシステム」だ。デルの場合は「PowerEdge VRTX」がこの分野の製品となるが、オープン性を強調するデルにとってコンバージドシステムはどのような位置づけとなるのだろう? 郡氏に聞いてみた。

コンバージドシステムとクラウド戦略について語る群氏

 「コンバージドシステムは「垂直統合」「統合」の2つの日本語があるようだが、デルの場合は後者の統合型となり、囲い込みのレガシーとは異なる。VRTXはサーバー、ストレージ、ネットワークを収めた製品で、運用導入の負担を減らすことに主眼を置いている。比較的規模の小さい組織にとって、VRTXは静音の特徴もあってコンピュータルームのいらない小さなデータセンターといえる」と郡氏。各コンポーネントのオープン性に変わりはないため、他社製ネットワークスイッチやサーバーとの接続も可能という。

 もう1つのトレンドであり、重要性が高まっているクラウドについてはどうか。デルはこの1年で戦略が一転している。パブリッククラウドの提供計画を中止し、プライベートクラウドに集中するというのが新しい戦略だ。パブリッククラウドでは提携戦略をとり、5月にJoyentなど3社の名前が発表された。そして今回のDell Worldでは、Microsoft(Windows Azure)、Googleなどを加えた。プライベートクラウドでは、「OpenStack」ベースのシステム構築でRed Hatと手を組んだことを発表。Red Hatの「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform」とデルのハードウェアやサービスを組み合わせるというものだ。

 郡氏はまず、パブリッククラウドについて「日本にはたくさんのパブリッククラウドサービスプロバイダーがあり、いまあえてデルがやるべきかというとそうではないと判断した」と経緯を説明する。またデルが顧客専用クラウドを立ち上げるプライベートクラウドについても、同様の理由でやめることにしたという。郡氏が代わりに強調したのが、「powered by Dell」だ。「これらクラウドサービスプロバイダに対し、デルはハードウェアを提供する立場にある。powered by Dellで(顧客である)サービスプロバイダーが提供するのが最善と考えている」という。

 クラウドでデルがフォーカスするのが「管理」だ。ここでは買収したBoomi、Enstratiusの技術を土台に、マルチクラウド環境の管理を可能にしていく。顧客が所有するプライベートクラウド、統合データセンター、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドなどのマルチクラウド環境になることは必至、「どのクラウドにどのデータが入っているのか、どのクラウドと契約していて使用率はどれぐらいか、支障時に別のクラウドにデータを移行できるのかーー情報システム部門によるクラウド管理作業のニーズが高まるだろう。デルはここをお手伝いしたい」と郡氏は述べる。

(次ページ、“PCのデル”もちろん健在!)


 

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