日本でのFacebookユーザー数は約2000万人、6〜7人に1人が利用している計算だ。しかし最近は「SNS疲れ」という言葉もあるように、アカウントに実名を使い、投稿した内容が「いいね!」という評価にさらされることに嫌気をさした人々も多い。
そんなSNS疲れを見越したかのような新しいサービスが生まれている。カップル限定のSNS「Pairy」だ。カップルが個別にアカウント登録してからペアリングをすれば、2人だけのSNSとして利用できる。写真やチャットメールはもちろん、2人の共通カレンダーやプロフィールを作成可能。デート欄ではお薦めのデートスポットを紹介しており、情報ツールの用途も兼ねている。
2012年6月からサービスを開始。Pairy を開発したTIMERSの高橋才将CEOは「これまでのSNSは人間関係を豊かにする目的だが、恋人同士の関係を深める役割は果たせていない。Pairyは情報をいち早くキャッチするSNSではなく、恋人同士の思い出を振り返って関係を深めるSNSです」と従来のSNSとの違いを語る。
サービス開始直後は業界関係者から、ソーシャルで会員数を増やせないSNSに対して疑問を抱かれたという。しかし、Pairyへの関心は日に日に高まり、口コミを中心に会員数を増やしてきた。
同社の調査によると、女子会での話題の大半が彼氏の話。メールを見せながら話をする女性は25%で、写真を見せながら話をする女性は38%だという。Pairyを使っている女性はPairyを見せながら話をするだろうと考え、見せられた時に自分も使いたいと思えるようなインターフェースやデザイン設計を施した。
その結果、アプリの継続率とアクティブ率が非常に高く、それに比例して会員数を伸ばしている。
「アクティブ率が高い理由は、サービスの価値を明確に絞ったからです。Pairyでは思い出を作り、その思い出を振り返るという繰り返しが大事です。
例えば、ホーム画面の左上にある時計のアイコンをタップすると、お互いの誕生日や付き合った日数を確認できますが、このアイコンはひと月に50万回以上タップされています。登録しているカップル数から考えると異常な回数です」(田和氏)
「また、われわれのアンケート調査で、彼氏とのチャットを1カ月前まで振り返る女性が40%いました。振り返る行為が価値のある行動だと分かってもらえるのではないでしょうか」(田和氏)
2013年版の厚生労働白書案によると、18〜39歳の未婚者の9割弱が結婚願望を抱いているが、交際相手のいない割合が男性で約6割、女性で約5割に上っている。若者の多くは「カップル」ではない現状を示すデータだ。
「昔と違って結婚が当たり前ではなく、憧れになってしまった。付き合い始める方法が分からなければ、付き合ってからどうしていいかも分からない男女が多いんです。
僕らはそこをチャンスだと思っていて、Pairyの情報を使ってデートをして、思い出を作って欲しいと思っています。今後はPairyのデート機能を強化し、他のカップルがどういうデートをしているなど、検索キーワードから有益な情報を伝えたいです」(高橋氏)
現在のPairyはマネタイズに至っていないが、今後は広告やプレミアム会員、フォトブックといったサービスで売り上げを立てたいという。恋人関係は一過性や流行りといった市場ではない。大人数で利用するのが前提だったSNSに2人きりで使うPairyは新たなビジネスの可能性を示すはずだ。