本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
2つの省電力機能
24回目を数えるAppleの開発者カンファレンス「WWDC」が、例年どおり基調講演をもって幕を開けた。「iOS 7」に「OS X Mavericks」(マーベリックス)、新しい「Mac Pro」と「MacBook Air」……製品の概要は弊誌関連記事を参照いただくとして、本稿ではそれら新製品(ソフトウェア/ハードウェア/サービス)の見るべきものを考えてみたい。
まずはOS X Mavericks。また猫科の動物だろうとタカをくくっていたところ、聴き慣れない名詞が登場した。次の10年を考えカリフォルニアをテーマにしたそうで、命名は「Mavericks」という北部カリフォルニアの海岸に由来している。「Maverick」(最後の“s”がない)という言葉には、生まれてまもない仔牛や一匹狼の意味もあるため、これから始まる10年の最初の一歩、という思いも込められているのかもしれない。
Craig Federighi(クレイグ・フェデリギ)氏のプレゼンは、Finderのタブ機能とタグ付け機能、マルチディスプレー対応の順で進められたが、アーキテクチャとして注目すべきは「CPU使用の効率化」だろう。電力消費量におけるCPUの割合は高く、効率化がバッテリーのもちに直接作用するからだ。
その効率化は、「Timer Coalescing」と「App Nap」というふたつの新技術によって実現される。それぞれ異なる実装であり、機構としてもまるで異質なものだ。
Timer Coalescingは、CPUの効率を最大72%改善する。一般的なOSでは、アイドル時のCPUリソースはポーリング(この場合、競合回避や処理の同期を目的に行なわれるアプリケーションへの問い合わせ)によって消費されるが、そのタイミングを可能なかぎり揃えて処理すればCPUの使用効率が改善され、ひいては省電力につながるというわけだ。なお、WindowsにもWindows 7のとき実装された同名のAPIがあり、やはり省電力機能として活用されている。
App Napは、非アクティブなアプリケーションの電力消費を抑える機構だ。あるアプリケーションのウインドウが完全に他のウインドウに隠れたとき、そしてそれが音楽再生やファイルのダウンロードなどバックグラウンドでの動作を必要としない場合、そのアプリケーションのタイマー頻度とI/O頻度を下げるというnice値(UNIX系OSにおけるプロセスの優先順位)を下げるような処理が行われる。次回ウインドウがアクティブになったときには、再び通常のパフォーマンスで動作するというしくみだ。この機構により、CPUの消費電を最大23%低減できるという。
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