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屋内位置情報サービス企業「WifiSLAM」とは?

アップルがWifiSLAM買収で挑む、次世代“屋内”位置情報技術

2013年03月28日 10時00分更新

文● 鈴木淳也(Junya Suzuki)

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 アップルが屋内位置情報システムを開発するWifiSLAMを約2000万ドル(約18億8000万円)で買収したことが、3月23日(現地時間)のWall Street Journalの報道で分かった。

 現在、iPhoneを含むスマートフォンの位置情報取得には静止衛星のGPSのほか、より高速化と精密さのために3GアンテナとWi-Fiアクセスポイントの情報を組み合わせた仕組み(通称「A-GPS」)が用いられている。だがGPSの特性上、屋内での正確な位置測定は難しく、おおまかな情報しか取得できない。

 そこで登場するのがWi-Fiアクセスポイントを用いた屋内位置情報システムだ。前述WSJでは「Indoor-GPS」などと呼称しているが、屋内位置情報測定では、建物内に複数配置されたWi-Fiアクセスポイントの通信電波のみを用いて対象の位置を数m範囲内の誤差で検出する。WifiSLAMは同技術を開発するシリコンバレーベンチャーの1社であり、創業2年という非常に若い会社だ。

なぜ情報が少ないのか?

 この買収が発表された直後、多くのメディアはWSJの記事を基に追加報道を行なっているが、冒頭で紹介した以上の情報はほとんど出ておらず、WifiSLAMの具体的な業容についても詳しく報じられることはなかった。

 理由のひとつは、WSJの買収報道が出た時点ですでにWifiSLAMウェブサイトが閉鎖されており、大量のビデオが公開されていた同社YouTubeアカウントも消されてしまった。現在存在が確認できるのはTwitterアカウントなど、ごくわずかしかない。ゆえに以前から情報を収集していない限り、その足跡をたどるのが難しい。

 ここでは、そのわずかに残った足跡をたどり、WifiSLAMが提供する技術ならびに、今後アップルがWifiSLAM買収で何を目指すのかを検証してみる。

WifiSLAMとはどんな企業なのか

 現存している比較的詳しい情報はVenture Beatによるものだ。昨年2012年8月30日に公開された記事によれば、WifiSLAMは米スタンフォード大学生向けに提供される技術スタートアップ支援プログラム「StartX」の出身であり、すでに複数の投資家やベンチャーキャピタルらから数百万ドル単位の資金調達を達成していたという。WifiSLAMでは位置情報検索にWi-FiとBluetoothを利用し、同社が「Signal Signature」と呼ぶアクセスポイントの電波強度を用いて位置を決定する。

 またWifiSLAMは、ビジネスモデルとして、こうした情報を直接活用したい小売店や商業施設の関係者よりも、ソフトウェア開発者向けのツール提供に主眼を置いていた。こうした点が、Googleの開発者でもあり、エンジェルとして同社に投資を行なっているDon Dodge氏へのアピールポイントだったようだ。

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