アップルは、指紋認証ソリューションメーカーAuthenTecの買収で合意した。同日付けの米証券取引委員会(SEC)への登録文書から判明した。AuthenTecはNASDAQ上場企業で、日本では富士通のスマートフォンやソニーのVAIO、パナソニックのTOUGHBOOK、レノボのThinkPad Edgeなどに指紋認証機能を提供していることでも知られている。今回、アップルが同社買収でどういった製品戦略を展開していくのかに注目が集まっている。
1997年のNeXT、2011年末のAnobitに次ぐ大型買収
AuthenTecがSECに登録した8-Kの資料によれば、AhthenTec株1つあたり8ドルがアップルから支払われるという。26日終了時点の同社株価は5.07ドルであり、およそ58%程度のプレミアを乗せた形となる。米紙Wall Street Journalによればアップルの支払総額は3億5500万ドル程度(約277億8000万円)になるようだ。
この金額は1997年のNeXT、昨年2011年末のフラッシュメモリー制御チップメーカーAnobitの4〜5億ドルに次ぐ規模になり、同社でも過去の歴史で屈指の大型買収となる。だが、1000億ドル(約7兆8000億円)以上の規模のキャッシュ資産を持つアップルにとってみれば、その比率はごくわずかなものだ。
AuthenTecはどんな企業か?
AuthenTecは、ID管理ソリューション、VPNクライアント、DRMなど組み込みやPC向けの幅広い製品ポートフォリオを持つが、冒頭に挙げた例のように、指紋センサー「Smart Sensor」を初めとした各種センサー装置の開発でも知られている。
スマートフォン分野では、先に挙げた富士通製品の指紋センサーほか、7月上旬にはSamsung ElectronicsがAuthenTecのVPN技術を同社スマートフォンとタブレットで採用していくことを表明している。
スマートフォンやタブレットは、今やユーザーにとって最も身近なデバイスであり、常に持ち歩いているという人は多いだろう。BYOD(Bring Your Own Device)というキーワードもあり、個人所有のデバイスをビジネスの現場に持ち込む例が増えている。これらデバイスには個人情報やビジネス上の重要なデータが蓄積されることになり、今後は「いかにデバイスのセキュリティを強化していくのか」という点にさらに興味が集まってくると考えられる。ゆえに、AuthenTecのカバーする分野は有望な成長株だといえるだろう。