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屋内位置情報サービス企業「WifiSLAM」とは?

アップルがWifiSLAM買収で挑む、次世代“屋内”位置情報技術

2013年03月28日 10時00分更新

文● 鈴木淳也(Junya Suzuki)

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屋内位置情報作成ツールを提供

 WifiSLAMは昨夏にIndoor Positioning SDKのベータテストを一般開放しており、開発者らは登録すれば無料でツールを利用できるようになっていた。

 前述のように、YouTubeアカウントの削除とともに大量の動画が閲覧不可になっているが、WifiSLAMのデモストレーションを収めたビデオが一部残っており、現在でも閲覧可能だ。50分近くと少々長いものだが、同ビデオの存在を紹介しているThe Next Webによれば、位置情報技術系のコミュニティーGeoMeetupにおけるプレゼンテーションの模様だという。技術の概要が一通り紹介されているので、興味ある方はご覧いただきたい。

 先ほどのVenture Beat記事の内容を補足すると、SDKのツールを導入したスマートフォンを使うと、周囲のWi-Fiアクセスポイントの信号情報を取得して、およそ90秒程度で地図上の位置情報が取得できる。この際に検出されるのはあらゆるWi-Fiアクセスポイントの情報で、非公開APや暗号化済みのものであっても構わない。あくまでWifiSLAMでは信号強度を取得するのみだ。

 また、移動成分の取得には加速度センサーやジャイロスコープ、地磁気センサーなど、スマートフォンに内蔵される基本的なセンサーをひと通り利用している。これら情報を集め、サーバー上に集約することで地図情報が補完されていく。スマートフォンの登場がWifiSLAMのような技術の登場やさらなる発展を促したといえるだろう。なお「SLAM」とは、「Simultaneous Localization and Mapping」の略とのことだ。

“Next Big Thing”—iOSへの情報収集ツール組み込みが狙いか?

 今回の件で興味深いのは、こうした地図作成+位置情報取得ツールを持つベンダーを、世界トップクラスのOS+端末メーカーが買収した点だ。筆者の予想だが、このツールをいずれか直近でリリースされるiOSバージョンへと組み込むことで、1〜2年先にはかなり有用なデータを取得できる可能性が高いからだ。

 過去にアップルがiOSデバイスに位置情報を記録してサーバーに集約、これをA-GPSサービスの強化に用いていたことが判明して騒動となったが(関連記事)、同様の仕組みを今回のWifiSLAM買収で導入してくる可能性は高い。WifiSLAMのツールがどれほど自動化できるかは不明だが、メジャーなスポットであれば、ある程度有用な情報を収集できると考える。

 GPS通信の及ばない屋内スポットは、位置情報サービスにおいて「Next Big Thing」といわれ、これに紐付けた各種サービスの提供が一部で盛り上がっている。Googleはすでに一部施設において「屋内地図」の提供を開始しているが、前述のとおりGPSによる正確なナビゲーションは行なえず、あくまで施設入り口にある「フロアガイド」の域を出ない。

 もし、屋内位置情報検索サービスが今後一般化するのであれば、アップルはひとつ大きなアドバンテージを手にすることとなる。ユーザーに対して直接ビジネスは行なわずとも、サードパーティに一部有料でサービスを開放することが、新しいビジネスチャンスにつながるからだ。

 筆者も同種のサービスは研究レベルで過去2〜3年前から何度も見かけており、今回のアップルの買収をきっかけに、本格的商用サービス展開もそれほど遠くない未来に到来すると考える。競合サービスもアピールを続けており、来年あたりには実システムへのインプリメンテーションが進むことだろう。


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