相模屋食料・鳥越淳司社長に
「ザクとうふ」投入の真意をうかがう
ときは2012年3月28日。相模屋食料から「ザクとうふ」が発売された。発売してすぐに反響を呼び、同年6月4日には、出撃数100万機を突破し、一過性の人気製品ではない実力を見せつけた。
これまでガンダムとのコラボ製品は多数登場しているが、この「ザクとうふ」……どうも並々ならぬこだわりが、パッケージからも伝わってくる。あらゆる点に妥協がなく、かつ開発者の趣味がよく見えるのが手に取ってすぐわかるほどだ。しかし、なぜザクなのか。ただのザク好きなのか。ガンダムファンだらけの編集部的にとても気になったので取材を申し込んでみた。
前編では社長にして「ザクとうふ」開発・提案を行なった相模屋食料・鳥越淳司氏にインタビュー、後編では相模屋食料脅威のメカニズムに迫るべく、生産工場取材の2本立てでお送りする。
「ザクとうふ」は社長自らが企画・開発したものだった!
――――本日は、お忙しいなかありがとうございます。「ザクとうふ」についてお話をうかがえればと思います。
【鳥越】 本日はよろしくお願いします。
――――さて、ガンダムコラボ製品「ザクとうふ」ですが、モチーフにザクを選んだのはなぜでしょう?
【鳥越】 豆腐とザクは、単体ではそんなに力はないけど、量産されていっぱいいると大きな力になるからです。
――――豆腐のイメージからすると、ザクよりガンダムじゃないのかと思うのですが。
【鳥越】 たしかに豆腐は白色だからガンダムといいたいんですが、トリコロールカラーの再現が難しい。豆腐は和食の基本。ガンダムはガンダムシリーズの基本ではあるけど、モビルスーツの基本じゃないですよね。モビルスーツの基本、以降のバリエーションの起点といえば、やっぱりザクだったんです。
それに、子どもの頃にみたザクのインパクトがやっぱり大きい。豆腐は日々生産されて消費される量産機みたいなものですから。量産機といえば、やっぱりザク。
「ザクとうふ」の色の秘密
なぜ枝豆風味なのか?
――――なぜ枝豆風味になったんでしょうか? スーパーで見つけたけたとき、疑問に思いつつも実際に食べてみると「うまい!」だったんですが。
【鳥越】 ザクとうふのターゲットは30~40代の男性。その人たちはスーパーの豆腐売り場へ行って「今日は豆腐にしようぜ!」とは考えない。そうした方々にお豆腐に興味をもってもらい、売り場に足を運んでいただきたかった。その人たちが興味を持つとしたら、ビールのおつまみ。おつまみといえば、枝豆と冷奴じゃないかということから枝豆風味にしました。枝豆の色はザクに近いので……といっても、ザクから入ったわけじゃないんです。
――――「ザク」ありきの商品ではなかったと?
【鳥越】 とくに30~40代の男性というターゲット層に対して何が重要なのか? がもっとも大きかったです。やっぱりビールのおつまみ。ザクだからでもなく、枝豆だからでもなくですね。ただザクと豆腐の共通項もあるので、それを追求した形で……その結果、キャラクター商品として妥協できない点をすべてクリアしていったわけです。
――――ザクに着地したのは、ものすごく必然に感じます。
【鳥越】 自社が専門とする製品との共通項が意外にも多かったので……気がついたときは驚きでした。
――――味をつけたのはしょうゆなど準備しなくても食べられるように、ですか?
【鳥越】 その通りです。しょうゆがなくても食べられる豆腐。家に帰って、自分から冷蔵庫に向かいたくなるような豆腐を。それにしょうゆをかけると被弾したみたいになってしまう。これはダメだということで、枝豆風味に塩気を加えています。枝豆には塩をかけますよね。
――――たしかに、しょうゆなしで食べたのははじめてでした。
【鳥越】 そういうお客さんは多いみたいです。お豆腐とは違うイメージだったという声も多いですし、いいきっかけ作りになったなと。