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名も無き兵士たちの「一年戦争」を振り返る

「機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH」発売記念イベント開催

2012年06月11日 11時00分更新

文● 伊藤 真広

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 放送開始から30年以上の時が過ぎ、いまなお色あせることなく熱狂的なファンを持つ「機動戦士ガンダム」。作品中にはアムロ・レイやシャア・アズナブルなど、宇宙世紀に名を刻む人物たちが登場したが、同じ“一年戦争”の戦場で、命を燃やした名も無き兵士もいた。

 そんな彼らにスポットをあてた1/35スケールの本格的なミリタリーガンプラが始まりとなった「機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH」が、小説とコミックで登場した。それを記念して、6月3日に新宿ロフトプラスワンでトークイベントが開催された。

「機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH」の発売記念トクーショーが新宿ロフトプラスワンで6月3日に開催された

 出演者は、連邦編・ジオン編それぞれの小説の著者である、吉祥寺怪人氏、高橋昌也氏、コミック版を描く夏元雅人氏の3人に加えて、バンダイより川口克己氏、江上嘉隆氏、原型師の山根公利氏やデザイナーの草彅琢仁氏、ホビージャパン編集長村瀬直志氏、アニメ監督の今西監督など、「機動戦士ガンダム」に関わる多彩な人物が登壇。ロフトプラスワンという場所柄もあり、ディープで非常に濃いトークイベントが展開された。

苦節4年を経て、刊行にこぎつける!

 この日のイベントは全3部から構成されており、第1部では、「機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH」の小説版、ジオン編の著者でこの日のイベントの司会を務める吉祥寺怪人氏、連邦編の著者高橋昌也氏、コミック版の著者である夏元雅人氏の3人による制作秘話が披露された。

このために作成されたムービーの上映からイベントがスタート

 イベントは「3冊同時発売の記念であるとともに一年戦争の戦友会を兼ねた会」という趣旨になっているとの吉祥寺氏の説明から始まった。吉祥寺氏が、当初は編集者としてこの出版計画に携わっていたのが、紆余曲折を経て自身で執筆することになった経緯や、高橋氏のなかでは、連邦編、ジオン編ともに同じ戦場をそれぞれの視点から書くと思っていた、といった企画が立ち上がったばかりの時期を振り返っていた。

 執筆にあたっては、高橋氏から「一年戦争から30年後が過ぎたころに刊行されたルポタージュを翻訳した刊行物という予定だった。そのため、日本人的、高橋昌也的な部分を削るため、山荘に籠るなどして、日本人的感性を捨て去る努力をしました」といった苦労を感じさせる逸話も。

第1部に登壇した「機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH」の著者たち。左から、吉祥寺怪人氏、夏元雅人氏、高橋昌也氏の3人

 また、コミック版の著者の夏元氏からは「登場するメカのデザインが時代ごとに違うため、それらの整合性をとるのに苦労しました。61式は最新のデザインのものに統一しています」とコミックならではの苦労をにじませた。

 第1部の最後に、今後について話が及ぶと夏元氏からは「クワランにスポットが当たっているが、今後は、ほかの兵士たちにもスポットを当てていきたい」といった希望や、吉祥寺氏も「今回は兵士を描きましたが、次回は軍需工業で働く女工さんや戦前から戦中の様子を子供の視線から追った作品も書きたい」という次回作への期待を望ませる発言で、第1部は終了した。

ガンプラ発のミリタリーモデルはこうして作られた

 第2部は、「機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH」の原点となるプラキットに関して、バンダイホビー事業部の川口克己氏、江上嘉隆氏、原型師の山根公利氏やデザイナーの草彅琢仁氏、ホビージャパン編集長村瀬直志氏の5人が、ゲストとして登壇して行なわれた。

第2部はガンプラ製作に関わるバンダイ江上嘉隆氏、草彅琢仁氏、山根公利氏の3人と司会の吉祥寺怪人氏

 まず、「機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH」が1/35スケールとなった理由だが、人物の表情など細部まで描写するには1/35スケールはないと描き切れないという話から始まったとのこと。

プラモデルシリーズ「U.C.HARD GRAPH」を生み出すまでの苦労話で盛り上がる

 とはいえ「(1/35スケールでは)大きすぎる。1/48や1/75じゃないと販売価格もきびしいのではないか」といった話がバンダイの社内でもあったという開発の裏側の話も。これについて川口氏は「お父さんたちの世代にはたまらないけど、商売的にはどうなんだろうとメーカーの人的な気持ちも働きました」とモデラーとしてとメーカーとしての間で心が揺れていたことも吐露した。

途中から、山田卓司氏(中央右)、川口克己氏(右から2番目)、村瀬直志氏(右)も参加

 また、発売された商品について「第1弾はワッパになりましたが、当初はコアファイターから始まり、徐々に地球におりていき、地上のメカを作っていこうという話でした。ですが、それだとコアファイターに目がいってしまい、名もなき兵士というコンセプトが伝わらないため、ワッパが第1弾の商品になることが決定しました」という、発売する製品が決定するまでにずいぶん頭を悩ませたようだった。

 兵士のモデリングについて、初期の作品は原型を作っていたが、「サイクロプス隊セット」あたりからスキャニングを使ったデジタル処理が行なわれるようになり、実際にモデルに制服などを着てもらい、製品と同じポーズを取ったものスキャンして3Dデータが制作されているという貴重な話も聞くことができた。ガンプラファンにとっては夢の様な話が多数飛び出した第2部は、来場者の年代やなぜこのイベントに参加したのかの挙手によるアンケートを取って終了となった。

今西監督も飛び入り参加した第3部

 再び、吉祥寺氏、高橋氏、夏元氏の3人がステージに登壇して行われた第3部。ここで当初は登壇予定のなかった今西隆志氏もステージに登場。短い時間ではあったが、改めて作品へ思いを語った。

第3部では、「機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH」の著者3人に加えて今西隆志監督も登場

 まず、今西監督から作品について「我々はここまで書けるんだな。高橋さんの作品を見せさせていただいて、ラスベガスの先とかについて実際に足を運んだことがないと書けない情景だと感じました。もうみなさん、世界観もわかっていただいているので、その世界観のなかで遊んでいただいて、必要に応じて、新しいものを見だしていただければと思っています」と話した。

 夏元氏は、執筆を始めた当初に江上さんからワッパのローター部分の羽根の形状が違うと突っ込まれたことを振り返り「やばいもんに手を出してしまったんだなと、痛感しました」と心情を吐露した。

 吉祥寺氏は「一年戦争後、アフリカで戦う人間がいたなかで、大半は一旦捕虜になっているわけじゃないですか。そういったところがどうなっているんだろうという思いから、手探りではありますが、捕虜収容所なども書かせていただきました。ガンダムの世界はいろいろな角度から攻め方、切り取り方があるんだなと思いました」と小説を書いてみての改めての感想を述べた。

小説版「機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH」は、連邦編(著 高橋昌也)、ジオン編(著 吉祥寺怪人)絶賛発売中だ

 イベントの最後に、それぞれの著者がサイン入りの小説「U.C.HARD GRAPH」“連邦編”“ジオン編”の2冊セットのプレゼント抽選会が開催。3名のラッキーな来場者に3セット6冊がプレゼントされ、イベントは終了となった。

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