XFXというと、アキバではビデオカードのメーカーとして認知されている。古くから自作PCに慣れ親しんでいる人ならば、マザーボードも出していたメーカーとして覚えているだろう。
そもそもXFXは、1989年に香港で創業されたPine Technology社の一部門で、2002年にカルフォルニアに設立された。一時期はNVIDIAのGPUを搭載した製品を数多く市場に投入していたが、Radeon R700シリーズ――いわゆるRadeon HD 4000シリーズが登場して以降はAMD(当時はATi Technologies)のチップを搭載した製品を数多く市場に投入している。
同社のビデオカードの特徴は、なんと言っても新GPUが登場するとオーバークロックを施した製品ラインナップを必ず取り揃えてくるところで、極限の性能を求めるゲーマーの間では人気となっている。お世辞にも日本では名前が浸透しているとは言えない同社であるが、今回Vice-Presidentで、販売部門を統括するSunny Narain氏にお話を伺う機会を得たので、彼らがどういう思想で製品を考えているのか、その実情を尋ねることにしたい。
多少部材が高くとも性能を重視する
――過去いろいろな代理店と契約されていましたが、今回リンクスインターナショナルさんと正式な代理店契約を結ばれることとなりました。決め手となったのは何だったのでしょうか。
Sunny Narain氏(以下、Narain):他社のことは言えないので、リンクスとの関係においてお話をさせていただければと思います。今回AMDから発表されたRadeonの7000シリーズでいろいろな製品を出します。今後日本で展開していく上で、これらの製品にフォーカスしてくれるパートナーを探していました。とくに7000シリーズでXFXが取得した特許技術をエンドユーザーにきちんと伝えてくれるパートナーが必要でした。そういった状況の中、リンクスと考え方が一致したので、一緒にやっていくこととなりました。
――お話の中に出てきた特許というのが気になります。どのあたりを指すのでしょうか?
Narain:いくつかあります。まず最初にXFXの製品はAMDのリファレンスとはファンシンクが異なります。リファレンスの製品では完全にファンシンクが覆われていますが、XFXの製品はオープンになっています。覆われていると熱せられたエアーの出口は1ヵ所ですが、XFXの製品は完全に覆われていないため、全方向からエアーが抜けていきます。どこの企業と一緒にファンのデザインをしたかというのは秘密ですが、これにより冷却効率を上げています。こういった構造をしたファンシンクを「Ghost Thermal Technology」と名付けました。
また、XFXのRadeon HD 7970/7950製品には「Hydrocell」と呼ばれる特許を取得した熱伝導用の板が搭載されています。中に水が入っており、GPU部分で熱せられたものがヒートシンク部分で冷却され、そしてまた戻ってくるようになっています。
そのほかの違いとしては、リファレンスではファンはブロアータイプのもの1つですが、我が社のものはオリジナル設計のファンが2つ搭載されています。コンポーネントに関しても一定の品質基準があります。2オンス基板、固体コンデンサー、IP5Xダストフリー(ホコリの侵入のしにくさ)基準、それらをすべての独自の品質規格を総称して「Duratec」といいます。
――Hydrocellは上位モデルに使用しているのでしょうか?
Narain:はい、Radeon HD 7970と7950の上位モデル、定格とオーバークロックモデルに使用しています。
――リファレンス製品のようにヒートシンクを囲っているものと、Ghost Thermal Technologyを使ったものではどのくらい性能が違うのですか?
Narain:数値的にはこのようになります。
――こんなに違うんだ。リファレンスに比べて10dB以上異なると相当違いますね。ファンも2つあるから1基当たりの回転数も落とせるのですね。
Narain:Radeon HD 7970/7950は発熱量が多いのでHydrocellを使用します。一方Radeon HD 7870/7850は発熱量が上位モデルに比べて小さいので4本のヒートパイプを使ったデュアルファンのクーラーで冷却します。
――Hydrocellを見ると、大きな銅板という感じですね。他社は今までヒートパイプやヒートレーンという形でヒートシンクに接続していますが、このプレートのような大きな部材を使うところはありません。結構高くつくと思うのですが。
Narain:確かに価格は高くなるのですが、XFXはこのバージョンだけを出していません。ユーザーが選択できるようになっています。Radeon HD 7970搭載製品も4つのモデルを提供しています。
もう1つ、カードの横に金属製のプレートが入っていますが、これで強度を上げています。これもコストを上げている要因ですが(笑)。
――こんなプレートごときでそんなに強度が違うんですか?
Narain:この金属プレートは見た目だけではなく、カードのたわみをなくします。触ってください。表面は手触りがよく、ダイヤモンドカットされています。高級感があります。フェラーリのような高級なものもあれば、大衆車みたいにお手頃のものまで取りそろえています。
XFXの意味をキミは知っているか?
――では話題を変えて、過去のことについてお伺いします。2009年にGeForceからRadeonに製品群が変更されましたがこの理由を教えてください。
Narain:市場とパートナー会社からの要求でした。Radeon4000番台からですね。
――NVIDIAのチップで設計する場合と、Radeonのチップを使って設計する場合とでは、設計する際の勘所というか癖の違いというのはあるのでしょうか?
Narain:AMDには設計の際のガイドラインがあります。基板などの違いがありますが、どのビデオカードも3000以上の部品があり、PCを使って設計をします。どちらも似ています。ただ、AMDにはオーバークロックモデルはほとんどなく、NVIDIAばかりです。XFXはAMDのエキスパートですので、オーバークロックモデルを提供できるわけです。XFXはAMDのオーバークロックモデルの開発に注力しています。
――日本ではまだ発売されておりませんが、XFXは電源も販売されています。分野が違いますが、例えばCorsairはメモリーから入ってきて、今ではPCケースも出しています。XFXさんはNVIDIAのカードから始まって、マザーボードもありました。マザーボードへの再参入というのは考えられないのですか?
Narain:現在は1つの製品に集中した方がいいと考えています。マザーボードはASUSTeK、Gigabyte、ECSという3つのメーカーが世界全体で市場の90%を占めており、競争が熾烈です。現在XFXはビデオカードに注力しています。競争ができ、利益が出る市場だからです。
――日本で電源を出す予定はないのですか?
Narain:現在代理店と話している最中です。
――PCケースは考えていないのですか?
Narain:考えてはいますが、まだです。大変興味はあります。
――ちなみに変なことを聞くようですが、XFXとはどのような意味で付けられたブランド名なんでしょうか?
Narain:XFXの「X」は「Xtream」、「FX」はより高い効果を得られる「Effect」を意味します。ロゴは原子をイメージしています。我々はゲーム向けブランドとして10年前に設立されました。Play Hardという言葉はXFXの理念で、ゲーミングはプロフェッショナルなスポーツ、ゲーマーはプロフェッショナルなアスリートと規定しています。XFXのビデオカードはそういったゲーマーのニーズを満たすものです。
――日本限定の製品というのはもう登場しないのでしょうか? 例えばシングルスロット仕様の「Radeon HD 6770」とかはインパクトがありました。
Narain:過去に出したRadeon HD 6770のシングルスロット版ですが、他国の市場では非常に難しい製品です。パワーが低くても静かで、小さく、日本人に引っかかるような――これは日本の市場からの要求でした。すべて満たす製品を作りました。日本はロイヤルカスタマーからのフィードバックが非常によいため限定版を出したわけです。現在、Radeon HD 7750は日本で大変人気があります。電力消費が少ないからです。6770の例もありますし7750でもシングルスロットで、Ghost Thermal Technologyを採用したものを日本に投入する予定です。
――では、最後に日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。
Narain:XFXは多くの革新的なテクノロジーを搭載したRadeon HD 7000シリーズを多く出しています。競争相手に比べても優位にあります。競合他社はカスタムデザインのコストダウンした製品を出していくのですが、XFXはプロゲーマーに向けた高品質な製品を提供していきたい。競争力のある、同時にユーザーからの要求を満たしたものです。最新のテクノロジーに対応すべく多くの時間を割いています。性能のよい、ゲームを快適にする製品をもっと出すことをお約束します。リンクスインターナショナルとパートナーを契約を結びましたので、よい関係を築いていければと思います。
――ありがとうございました。