
元麻布春男氏(1999年)
社には内緒で原稿を書いてもらうために
作ったペンネームが「元麻布春男」
元麻布氏はアスキーに在籍していましたが、(少なくとも当時は)純粋に個人のPC/AT互換機ユーザーだったのです。彼はコンピューターもさることながら、フライトシミュレーターに造詣が深く、それがPC/AT互換機を使うひとつの動機だったようです。PC/AT互換機における(その後に多くの人たちが体験するような)ユーザーの世界のことを、彼は一足先に楽しんでいたのですね。
「それなら月刊アスキーで記事を書いてもらおう」ということになり、社内の別部署に在籍したままこっそり書いてもらうために作ったペンネームが、「元麻布春男」だったのです。たしか元麻布に住んでおられたか、月刊アスキーの別室「パート2」が元麻布にあったかといった、そのような理由でした。今思うと、あまりにイージーな付け方をさせてもらって申し訳ない。
当時はいろんな人たちがPC/AT互換機に興味を持ち始めていった頃ですが、それまで私の周囲では、塩田紳二氏のほかは仕事でPC/AT互換機に関わっている人たち程度でした。その後に誕生した「Super ASCII」誌では、編集部の人たちも頑張っていたと思いますが、改めて当時の目次を見ると、笑ってしまうくらい「元麻布春男」と「塩田紳二」の名前が並んでいます。
元麻布春男氏の人気連載の「近頃我が家で流行るモノ」を見て、私も海外通販に挑戦してみたのをよく覚えています。ちなみにこの連載名、産経新聞の伝説的な連載「近ごろ都に流行るもの」から借りたものでしょう。ご本人がつけたのかどうかは不明ですが、自分は島国日本のPC業界にいながら、「都はそうかなのかぁ」という感じで連載を読むこともしばしばでした。
ジャーナリストになられてからの元麻布春男氏とその素晴らしい仕事ぶりについては、いまさら説明するまでもないでしょう。私的には、「その後のPCカルチャーの一足先を行っていたユーザー」という印象が強かったのです。ということで、少し古いお話を氏を偲んでご紹介させていただきました。
今回はあまりに突然のことで驚きました。故人のご冥福をお祈りいたします。
