プライベートクラウドの構築をスピーディに行なえる製品として筆頭に挙がる日本IBMの「IBM CloudBurst」。ここでは製品概要はもちろん、実際のハードウェアの紹介、アプリケーションの使い勝手などを徹底的に解剖する。
プライベートクラウドをこれ1台で!
IBM CloudBurstはプライベートクラウドの構築に必要なソフトウェアやハードウェア、さらに導入までのチュートリアルまで、一切合切まとめて提供するオールインワン製品である。2009年の8月に国内市場に投入され、最新のハードウェアで構成されたV2.1が9月に出荷されたばかりだ。さらにIBMが誇るハイパフォーマンスサーバー「Power Systems」に対応した「IBM CloudBurst V2.1 on Power Systems」も発表されている。
IBM CloudBurstが想定する「プライベートクラウド」とは、企業の情報システム部があらかじめ仮想化されたITリソースをプールしておき、ユーザーのリクエストに応じて必要なリソースを調達し、貸し出す(プロビジョニング)というもの。いわゆる「セルフサービスによるITリソースの自動提供」である。パブリックで提供されるIaaS(Infrastructure as a Service)に対して、プライベートクラウドでは自社でリソースを保有・管理するのが大きな特徴。必要な製品をすべて同梱したIBM CloudBurstは「ラック単位」でユーザーに提供され、設置後IBMのエンジニアからのチュートリアルを受ければ、プライベートクラウドにすぐに利用できる。
IBM CloudBurstの中心はTivSAMにあり
さて、IBM CloudBurst自体はブレードサーバー、ストレージ、スイッチ、ハードウェア構成管理システム、VMwareなどがラック内にキッティングされた状態で提供されるが、プライベートクラウドとしての機能を提供するのは、このサーバーに格納されたソフトウェア群である。ソフトウェア群はOSやデータベース、サーバーアプリケーションを含んだ構成済みの仮想ソフトウェアイメージとして提供されており、IBM CloudBurstは「自動化サービス」、「監視サービス」、「利用状況管理サービス」、「ファイル管理、メール、HTTPサービス」など4つの仮想ソフトウェアイメージで構成されている。
このうち特に中心となるのが、自動化サービスに含まれる「Tivoli Service Automation Manager(以下、TivSAM)」である。TivSAMでは、プロビジョニングの自動化やサービスのカタログ化を可能にするソフトウェアで、Webブラウザベースのセルフサービスポータルから受け取ったリクエストを元に、サーバーやストレージ、ネットワーク、アプリケーションなどのリソース調達を自動的に行なう。「Tivoli Provisioning Manager(TPM)というプロビジョニングエンジンに、Web 2.0のGUIとプロセスワークフローを実装したソフトウェアがTivSAMになります」(日本IBM ソフトウェア事業 Tivoli クライアント・テクニカル・プロフェッショナルズ ITスペシャリスト 鈴木智也氏)という位置づけだ。
また、クラウド管理者があらかじめVMテンプレートをイメージカタログとして登録することで、ユーザーが選択するサービスを標準化することが可能になる。IBM CloudBurstはまさにこのTivSAMが中心にあり、これを補完するために監視や課金、利用状況管理、その他のサービスが衛星のように取り巻くという構成で実現されているわけだ。
ちなみにIBM CloudBurstのソフトウェアを仮想アプライアンスとして取り出したのが、2010年9月に発表された「IBM Service Delivery Manager(以下、ISDM)」になる。鈴木氏は「どの製品もプロビジョニングの機能は同じですが、TivSAMのソフトウェア形態がもっとも柔軟性があり、IBM CloudBurstはすぐに使えるというメリットがあります。一方、ISDMも構成済みのVMで提供するので、立ち上げがスピーディです」とそれぞれのメリットをこう説明する。
(次ページ、プロビジョニングの様子を見てみよう)