「いま世界中で興行記録をぬりかえている、ティム・バートンの最新映画のモチーフとなった児童小説は?」
「ビートルズのジョン・レノンが影響を受けたと言われるイギリスの幻想小説は?」
「テリー・ギリアムが大好きで、新作や前作の映画でモチーフにしたファンタジーは?」
「『ロリータ』の作者ナボコフが、ロシア語翻訳して母国で出版した少女小説は?」
「世界中のこどもたちに愛されるイギリスの小説は?」
――世界中の映像・音楽・文学・漫画といったあらゆるポップカルチャーに影響とインスピレーションを与え続けている、イギリスの児童小説「Alice's Adventures in Wonderland(不思議の国のアリス)」が、日本を代表するイラストレーターの一人であるokama氏の挿絵とともに訳も一新されて、文庫で登場した。
その売れ行きも好調で、なんと発売1週間で重版が決定。
挿絵はなんと51点!
一般的に、児童文庫の挿絵点数はライトノベルのそれよりも多い、20点前後。
しかしこの「新訳 ふしぎの国のアリス」(角川つばさ文庫)では、挿絵数がなんと51点!
子供たちにも大好評の同作のなかから、数点の挿絵をここに転載して紹介しよう。
「ネコってコウモリ食べる?」
――2010年の最新訳は、より巧みに言葉遊びを再現
「Alice's Adventures in Wonderland(不思議の国のアリス)」では、無数のだじゃれや掛詞(かけことば)などの言葉遊びが(もちろん英語で)ちりばめられているため、その表現に多くの翻訳者が苦労してきた。
しかし、本作では新訳ならではの時代にあった訳文で、従来の訳以上に、言葉遊びを表現している。
たとえば、アリスが深いうさぎの穴を落ちていくシーン。
あまりにも長い間落ちているものだから眠くなってしまい、うつらうつらと独り言をつぶやく下りの、
'Do cats eat bats? Do cats eat bats?' and sometimes, 'Do bats eat cats?'
といった一文。
原文を読めば、アリスは、batとcatの音が似ていたために取り違えて言ってしまっていることがわかる。
実は従来の訳の多くが、
「ネコはコウモリを食べるのかな。ネコはコウモリを食べるのかな」
そして、ときどき言い間違えて、
「コウモリはネコを食べるのかな」
といったような訳で、どうして言い間違えたかを表現しきれずにいた。
しかし、本作の新訳では、
「ネコってコウモリ食べる? ネコ…ウモリ食べる?」
そのうち、こんなふうになっていきました。
「ネ…コウモリって食べる? ねぇ、コウモリってネコ食べる?」(「新訳 ふしぎの国のアリス」(角川つばさ文庫/河合祥一郎・訳)より)
と、音から起こる取り間違えを、巧みに表現している。
河合祥一郎氏の新訳は、従来のものでは表現しきれなかった言葉遊び部分を、改良したものなのだ。
アリスは、絵本やアニメでなら昔読んだ・観たという方も多い。
しかし、抄訳などでない完全版の新訳で、ティム・バートンの4月公開のディズニー映画「アリス・イン・ワンダーランド」などもひかえた今こそ、楽しんでいただきたい。
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新訳 ふしぎの国のアリス (角川つばさ文庫)ルイス・キャロル(著)アスキー