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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第32回

年末年始特別編1 AMD CPUの2010~2011年はこうなる

2009年12月21日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/)

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2009年以降のデスクトップ向けCPUロードマップ

2009年以降のデスクトップ向けCPUロードマップ

2011年にはいよいよFusion登場
プラットフォームチェンジも

 さて、問題は2011年である。この世代では、エンスージャスト向けにはBulldozerベースの製品が投入される一方で、メインストリーム向けには「Llano APU」が投入される。Llanoというのは、ようするに「Fusion」である。

GPU統合型CPU「Fusion」の概念

GPU統合型CPU「Fusion」の概念

Fusionについては次回説明するが、ようするにCPUとGPUが1枚のダイで提供される最初の製品だ。この結果起こるのは、恐らくプラットフォームの変更である。同じくCPU+GPUを(MCMによって)「Clarkdale/Arrandale」を実現したインテルでも、同様にプラットフォーム変更が必要になっている。というのは、GPUをCPU側に持ってきてしまうと、ディスプレー出力をCPU側に用意しなければならないからだ。

 技術的に言えば、例えば「DisplayPort over HyperTransport Link」のような形で出力することは可能だろう。しかし、今のDisplayPortのデータレートが1ポートあたり最大8.64Gbpsで、ほぼ1GB/秒に達することを考えると、CPUからのダウンリンクを大幅に占有してしまう。これはあまり賢明な策ではないと考えられる。また、仮にそれを無理やり実装して現在のSocket AM3を維持したとしても、チップセットはそれに対応するまったく新しいものにする必要があり、どっちみちプラットフォーム交換になることに変わりはない。

 Socket AM3を維持した場合のメリットは、「新しいプラットフォーム上で現在のPhenom II/Athlon IIが動く」という程度のものでしかない。やはりインテルと同じように、HyperTransport Linkとは別にディスプレー出力専用バスを追加して、チップセットの側にDVI/HDMI/DisplayPort用のPHYが入る、といった形になると思われる。

 その一方でハイエンド向けは、今のところSocket AM3でまずい理由はとりたてて存在しない。もっとも維持すべき理由もそれほど多くないが、一応Phenom IIからのマイグレーションパスを維持するという理由でSocket AM3のままではないかと思われる。AMDがSocket形状を変更する最大の理由は対応メモリーであり(今ではインテルも同じだが)、「DDR3の次のメモリー」がいまだに明確になっていない現状では、とりたてて変更すべき理由もないためだ。

 ただひとつだけ可能性をあげれば、32nmプロセスになることで、Vcore電圧はさらに下がる可能性がある(というか、下がるだろう)。その一方で、TDPが現状並みに維持された場合、結果として供給される最大電流量が今よりもさらに増えることになる。これが940ピン前後(Socket AM3の場合941ピン)のSocket AM3でカバーしきれるかどうか、というあたりが懸念材料だ。

 ちなみにOpteronの場合、Socket Fはすでに1207ピンだし、Socket G34/C32もこれを下回る可能性はないだろう。HyperTransport Linkの本数も多いから一概には言えないが、それでもSocket AM3よりは余裕があると考えられる。だからこそ、Socket Fの改良版としてSocket G34/C32が可能になる。

 ところでラインナップであるが、前ページの2009年版ロードマップを見る限り、ハイエンドデスクトップ向けは8コアCPUと4コアCPUが予定されている。ただ、Opteron 6000向けには6コアがすでにあるから、製品構成としてデスクトップ向け6コアCPUが登場する可能性は高い。微妙なのは、2コア構成があるかどうかである。これは技術的な問題ではなくマーケティング的な問題だが、筆者はなさそうに思う(上掲のロードマップには含めた)。

 一方メインストリーム向けだが、恐らく「4コア+GPU」「2コア+GPU」の2種類のダイが製造され、ここから派生型として3コア/1コアの製品が出てくると思われる。1コアは現在のSempronの代替となるだろう。

 製品名が現在のPhenom/Athlonを継承するかどうかは、これまた謎である。こちらは技術的な問題では一切なく、純粋にマーケティング上の問題であり、恐らく2010年の今頃になるまで明確にはならないだろう。

今回のまとめ

・AMDは2011年に、サーバー向けに「Bulldozer」コアベースで32nm SOIプロセス世代の12~16コアCPU「Interlagos」と、4~8コアCPUの「Valencia」を投入する予定。InterlagosはValenciaをMCMで連結した構造になる。

・2010年のデスクトップ向けCPUは、現時点のラインナップに比べて大きな変更はなさそう。サーバー向けの6コア「Istanbul」が、デスクトップ最上位に「Thuban」として投入される。

・GPU統合型のFusionは2011年に「Llano」が投入される。CPU側にGPUを内蔵することで、必然的にプラットフォーム変更も生じるだろう。ハイエンド向けにはBulldozerコアの4~8コアCPUが登場する。

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