DS-10はゲームのようなもの
――大石さんにとってモバイル作曲ツールではないとなると、DS-10を使う理由は何ですか?
大石 制限を掻い潜るという意味で、ゲームみたいなものですよね。作戦を考えて攻略するものというか。
――なるほど。ところでゲームと言えばチーターマンですけど、実際にプレイしたことあります?
大石 いやいやいや、ないですよ、もちろん。
――ですよね。じゃ音はどうやって取ったんですか?
大石 アレンジの巧みな『チーターガール』※なんかでメロディーは覚えていました。あの曲をリハーモナイズしたコードでやれば、オレ的な曲になるんじゃないかと前から思っていました。それでDS-10 PLUSの発売直後を狙っていたんです。でも、ちゃんと音を取ったりはしていないんで、結構間違ってますよ。
※ チーターガール : Aliced Twilightz名義による、KTG(チーターガールP)&Linco(Vo)の有名な作品
――あれれ、プリプロまでやるのに?
大石 うろ覚えで作ってたんですよね。作り終わった後で見てみると、あれっ、こんな展開もあるんだなぁ、とか。
音楽の入り口もゲームだった
――音楽はいつ頃始めたんですか?
大石 父親のPC-8001で小学生の頃からプログラムして遊んでいたんですけど、ビープ音しか出なかった。中学に入って家のパソコンがPC-8801になって『イース』や『ロマンシア』※の音楽を聴いて、自分もやりたいと思ったんです。
――最初はどんな環境で曲を作っていましたか?
大石 MML※で内蔵音源を鳴らしていました。ゲーム音楽をやるために。それから高校入学祝いにDTM用のシンセとインターフェイスを揃えて、キーボードもその時に弾き始めました。
※ 「イース」「ロマンシア」 : どちらも日本ファルコムのロールプレイングゲーム
※ MML : Music Macro Language。BASICのPLAYコマンドの引数から発展した音楽記述言語
――キーボードでは何を弾くわけですか?
大石 姉のカセットに入っていたスクエアとか。あとはTMネットワーク。当時は大人気だったので。でもバンドをやろうと思うとキーボードばかりでドラムがいない。それでドラムをやり始めたんです。
――高校時代はやりたい放題だったわけですね。
大石 ただ進学校だったので、学校の成績は落ちる一方でした。卒業を前にしてどうしようと。そうしたらバンドメンバーのお姉さんがヤマハ音楽院の人で、そのつながりでドラム科の夏季セミナーを受けたんです。
――それでヤマハ音楽院に入るわけですか?
大石 そうです。同級生に今はプロのキーボーディストの松本圭司くん※がいて、僕らはデモ録り用のスタジオで仕事を始めるんです。ソニーミュージックの新人発掘部門の人が学校に遊びに来て、そのエンジニアが辞めるから誰かいないか、というので。そこで新人のレコーディングやアレンジをやっていました。
――それもすごい展開ですね。在学中の話でしょ?
大石 学校の人には大目に見てもらってましたけどね。そこで松本くんと一緒に音源制作をするうちに、ハーモニーに対する考え方が変わりましたね。彼は理論や技術だけじゃなく、音楽性も幅広くて、そういった面でもすごく影響を受けました。ただ、その後、あるゲームにハマってですね……。
――ん? なんですか?
大石 『ときめきメモリアル』なんですけど。
※ 松本圭司 :キーボーディスト。ヤマハ音楽院卒業後は葉加瀬太郎、T-SQUAREなどと活動。ゴスペラーズや中島美嘉などのライブやレコーディングにもプレイヤー、アレンジャーとして参加している。最新作は『Reminiscence』(iTunes Storeで見る)
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