約43億個のIPアドレスの中には、普通にホストに割り当てるものだけでなく、特殊な用途や目的のために用いられるものも含まれている。本パートでは、そんな特別なIPアドレスについて見ていきたい。
クラスで5つに分割されるIPアドレス
IPアドレスは、32桁の2進数で表わされるので、約43億種類のユニークな識別子として利用できる。ただその中には、特殊な用途に使われるIPアドレスも含まれており、全部が全部、自由に使えるというわけではない。
まず、IPアドレスは「クラス」と呼ばれる概念でA~Eの5つのグループに分類されている(図1)。この5つのクラスのうち、クラスDとEが特殊な用途に用いられる。前者は「マルチキャストアドレス」といって、特定の条件でグループ化したホストに対して、たとえばストリーミングなどの動画の一斉配信をするときに使われる。マルチキャストに対応したルータは、クラスDのIPアドレス宛のパケットを受け取ると、事前に設定したマルチキャストグループに属するホストに転送する。一方のクラスEのIPアドレスは将来的な用途に予約されていて使えない。
特殊な意味を持つIPアドレス
ここまで紹介したIPアドレスは、ホストに割り当てられないという意味で特別な存在だった。ここからは、ホストに割り当てられるが、特殊な意味を持つIPアドレスを紹介しよう。
まずは表1を見てほしい。これらがおもな特殊IPアドレスだが、この中でもっとも身近なのは、「192.168.0.0~192.168.255.255」の範囲の「プライベートIPアドレス(クラスC)」だろう。
プライベートIPアドレスは、インターネットに直接接続しないホストに、自由に割り当てて構わないアドレスである。本来、IPアドレスを自由に割り当ててしまうと、そこら中で重複するかもしれず、識別子としての役割が果たせなくなる。そのため、インターネットにつながるホストには、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)という組織によってきちんと管理された「グローバルIPアドレス」と呼ばれるアドレスが割り当てられる。
しかし、IPアドレスは約43億個しかない。インターネットが考えられた当時はそれで十分だったが、今では不足気味だ。とはいえ、IPv6に移行するには時間がかかるので、IPv4のままでグローバルIPアドレスを節約する方法が考えられた。それがプライベートIPアドレスとの併用である。具体的には、
- IPアドレス全体のうち、特定の部分をプライベートIPアドレスとして確保
- その範囲内のIPアドレスは、社内LANなどで自由に使って構わない
- ただし、インターネット上では無効なアドレスとしていっさい通信できない
というルールを作り、貴重なグローバルIPアドレスの消費を抑えようとしたのだ。
(次ページ、「そのほかの特殊なアドレス」に続く)
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