7月初旬にIntelが発表(データシートを公開)したデスクトップPC向けの新PentiumIII(開発コードネームTualatin)は、2次キャッシュを512KB搭載したサーバ向けの「PentiumIII-S」と、同256KB搭載でデスクトップPCやワークステーション向けの「PentiumIII」(名称は従来と変わらず)の2種類がある。このうちデスクトップPC向けの新PentiumIIIを採用したのが、ここでレビューする「Endeavor Pro-650L」だ。
Pro-650Lで選べるCPUは
ミニマムでもPentiumIII-1GHz!
Pro-650Lの前面と背面。5インチ×3、3.5インチ×2とフロントアクセス可能なドライブベイが豊富なミドルタワー筐体を採用。 |
Endeavor Pro-650Lのレビューに入る前に、新PentiumIII(Tualatin)の特徴を簡単にまとめておくと、
- ピン数は従来のPentiumIII/Celeronと変わらず370ピンだが、熱拡散装置(IHS:Integrated Heat Speader)を標準装備した新パッケージ「FCPGA2」を採用
- 従来より低い信号用電圧「AGTL」を採用するため、動作にはTualatin対応のチップセットが必要
――のようになる。FCPGA2は、従来のPentiumIIIのコアの上に一回り大きな金属プレートを被せたような外観で、さらにこれをヒートシンク+クーリングファンで冷却する。
Tualatin対応チップセットとしては、
- Intel「i815Eシリーズ B-step」
- VIA「Apollo Pro133T/266T」
- SiS「SiS635T」
- ALi「ALADDiN-PRO 5T(M1651T)」
などがアナウンスされており、すでにi815Eシリーズ B-Step搭載マザーボードはASUSTeK、Gigabyteなど各社から発売されている。
Pro-650Lの内部。背面(内部の左側)にあるHDD内蔵用マウントを外しているが、これを取らなくてもメモリ増設や拡張カードの装着は簡単に行える。CPUファンは新CPUに合わせて新調しているとのこと。 |
さらに、2台目の光メディアドライブなどを内蔵できるフロントアクセス可能な5インチベイが3つ、3.5インチベイは2つ(各1つは使用済み)用意されている。筐体は従来のPro-620L/720Lと同じミドルタワー(幅217×奥行き438×高さ439mm)なので、機能拡張には不便しないだろう。
細かい部分だがPro-620Lからの変更点として、サウンド機能がチップセット(i815E)+AC'97コーデックから、C-Mediaの「CMI-8738/PCI C3DX」(オンボード)になったことが挙げられる。CMI-8737は、5.1chマルチチャンネル出力やS/PDIF入出力をサポートする多機能サウンドチップだが、Pro-650Lでは残念ながらこれらのインターフェイスを持たない(通常のステレオLine in/Out、マイク入力とゲーム/MIDIポートのみ)。マルチチャンネル出力(4ch)やS/PDIF出力を求める方には、B.T.O.メニューでPCIサウンドカード「Sound Blaster Live! Value」(クリエイティブメディア製)が用意されている。
このほかにも、B.T.O.メニューは豊富に用意されている(下表参照)。特に注目なのは、CPUがPentiumIII-1GHz未満がなくなっていること。
CPU | PentiumIII-1BGHz(Coppermine) |
---|---|
PentiumIII-1.13AGHz(Tualatin) | |
PentiumIII-1.2GHz(Tualatin) | |
HDD | 20GB(UltraATA/100、5400rpm) |
30GB(UltraATA/100、5400rpm) | |
40GB(UltraATA/100、5400rpm) | |
60GB(UltraATA/100、7200rpm) | |
80GB(UltraATA/100、7200rpm) | |
光メディアドライブ | CD-ROM(ATAPI、48倍速) |
DVD-ROM(ATAPI、CD40倍速/DVD16倍速) | |
DVD-RAM(ATAPI、DVD-RAM2倍速/CD24倍速/DVD6倍速) | |
CD-RW(ATAPI、R20倍速/RW10倍速/CD40倍速) | |
CD-RW&DVD-ROM(ATAPI、R20倍速/RW10倍速/CD40倍速/DVD12倍速) | |
ビデオカード | チップセット内蔵(i815E、メインメモリから最大11MB共有) |
Millennium G450(AGP、Matrox G450、16MB DDR SDRAM) | |
SPECTRA F11 PE32(AGP、GeForce2 MX400、32MB SDRAM) | |
SPECTRA 8400(AGP、GeForce2 GTS、DDR SGRAM32MB) | |
SPECTRA X20(AGP、GeForce3、DDR SDRAM64MB) |
新PentiumIII-1.2GHzマシンは、本サイトでも初登場なので、Pentium 4-1.8GHzベンチマークテストと同様のテストを行い、結果を比較してみた。厳密にはテスト環境が異なるため、単純な数値の比較で優劣はつけられないが、2次キャッシュが512KBと倍増したPentiumIII-S-1.13GHzと同256KBの一般PC向けPentiumIII-1.2GHzのパフォーマンスの差を知る指標になるだろう。なお、テスト結果の比較対象として、アプリケーションベンチではPentiumIII-1BGHz搭載の「Endeavor Pro-620L」、Athlon-1.2GHz搭載の「Endeavor Pro-720L」(いずれもビデオカードはSPECTRA 8400)の結果、「Super π」と「3DMark 2000 V1.1」(CPU最適化動作)ではPentium 4ベンチマークテストのリファレンスマシンでの結果を使っている。
テスト結果を見てみると、アプリケーションベンチマークテストの結果でAthlon-1.2GHzをわずかにリードしたものの、CPUの演算処理能力がストレートに出やすいSuper π(104万桁)の結果ではPentiumIII-S-1.13GHzに及ばず、2次キャッシュの違いがわずかな動作クロックの差を埋めて余りあるという結果が現れた。3DMark 2000 V1.1の結果も同様だ。とはいえ、その差はごくわずかで、PentiumIII-Sはエンドユーザー向けのデスクトップPCには採用されないこともあり、PentiumIIIシリーズでは最速と言っていいだろう。
ASCII Labs.特製アプリケーションベンチマークテスト。Word 2000&Excel 2000を自動実行して、かかった時間を計測する。ビジネスアプリを使った場合の体感的なパフォーマンスの違いを調べる。 |
東京大学金田研究室が開発した円周率計算プログラム。104万桁の円周率πの計算を、19回ループさせるのにかかった時間を測っている。 |
Madonion.comのDirect3Dベンチマークテスト。環境は1024×768ドット/16bitカラー/85Hz。ビデオカードのHardware T&Lを使わず、CPUでジオメトリ演算処理を行っている。 |
価格は、評価機の構成で16万8000円。CD-RW&DVDのコンボドライブを搭載した評価機の構成には、ドルビーヘッドフォン対応のDVD再生ソフト「WinDVD」、CDライティングソフト「B's Recorder GOLD」、パケットライトソフト「B's CLiP」がプリインストールされる。また、PentiumIII-1GHz、HDD 20GB、128MB SDRAM、i815Eチップセット内蔵グラフィック、48倍速CD-ROMドライブ、Windows Meプリインストールというミニマム構成では、9万1000円となっている。
CPU | PentiumIII-1.2GHz |
---|---|
メモリ | 128MB |
ビデオ | SPECTRA 8400 |
HDD | 60GB |
CD-RW&DVD-ROM | R20倍速/RW10倍速/CD40倍速/DVD12倍速 |
通信 | オプション |
OS | Windows Millennium Edition |
モニタ | オプション |
Officeアプリ | 〇/-(OfficeXPプリインストールをB.T.O.メニューで選択可能、+2万円) |