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21世紀のユーザーインターフェースを探る──“インタラクション2001”開催

2001年03月05日 15時42分更新

文● 編集部 佐々木千之

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(社)情報処理学会の下部研究会(※1)が主催する、コンピューターインターフェース技術に関するシンポジウム“インタラクション2001”が5日と6日、早稲田大学国際会議場で開かれる。初日の今日は、“ポストペット”などの作品で知られるメディアアーティストの八谷和彦氏が招待講演を行なった。

※1 ヒューマンインターフェース研究会、情報メディア研究会、グループウェア研究会。

八谷和彦氏
招待講演を行なったメディアアーティストの八谷和彦氏

インタラクション2001は、'97年に始まったもので今回が5回目。ウェアラブルコンピューターやユビキタスコンピューティング(どこにでもコンピューターがある環境)が浸透しつつある現在、仕事だから使わざるを得ない情報技術ではなく、使うことが生活を豊かにし、実世界と有機的に連携する情報技術とその応用に取り組んでいる研究の発表の場となっている。

研究発表方法には、論文の口頭発表とデモとポスターを交えたインタラクティブ発表の2つの形式がある。今回、論文には26件の投稿があったが、そのうち12件を採択、インタラクティブ発表は58件と多いため半数ずつ2日に分けて発表、展示される。

招待講演を行なった八谷氏は、技術屋ではなくアーティストの立場から、CG作品で知られる河口洋一郎氏や音と視覚の融合作品で知られる岩井俊雄氏といった他のメディア作家を紹介しながら、“美術と技術の界面のお話”というテーマで自身の作品のコンセプトを紹介しつつ語った。

八谷氏の初期の作品である『視聴覚交換マシン』(※2)は、かつてある大手電機メーカーが作成したバーチャルリアリティーシステム(※3)を見て、「6億円もかけてこんなものしかできないなんて、と思い、60万円で10倍も100倍も面白いものを作ってやる」と作成したなどというエピソードが語られた。

※2 目と耳をすっぽりと覆う1対のヘルメットにマイクとカメラが付いており、自分に見える画像と音はもう一つのヘルメットをかぶる相手のもの、というコンセプトの作品。

※3 被験者はデータグローブとヘッドマウントディスプレーを付け、バーチャル空間にあるバーチャルな蛇口をひねる動作をするとその蛇口からバーチャルな水が流れ出るというデモ。

また、八谷氏を有名にした愛玩メールソフト『ポストペット』については、「当時はメールは男しか使っていなかった。仕事で使うのではなく、プライベートで使うメールソフトとして女友達が使ってくれそうな機能だけを入れた」「(当時)ダイヤルアップユーザーはメールがあまりこない人が多いので、なかなかダイヤルアップしない。するとますますメールがこなくなってメールソフトを起動しないと考えて、ペットが勝手にメールを書いたり、人にメールしたい話題を提供するような仕草をペットがするようにして、メールの数が増えるようにした」などと興味深いコンセプトが語られた。

また、コンピューター技術の進歩については「コンピューターの能力だけに頼っていると、コンピューターの進歩によって、以前の作品はどんどん旧くなっていってしまう」「“ミックスドリアリティー”や“バーチャルリアリティー”技術は、現実とつながっていて時には危険な結果を引き起こすような場合でも、その現実感が操作をしている人に感じられないというような側面も持っている。この点については研究者が気をつけていかないと危険なのではないか」などと述べて、技術だけが先走りすることに対して警戒感を示して講演を締めくくった。

このほか5日の午前中には、早稲田大学の園田氏、村岡氏による、ヘッドマウントディスプレーを用いた“空中での手書き文字認識システム”と、ソニー(株)コンピュータサイエンスラボラトリの歴本氏、大場氏、マサチューセッツ工科大学のウルマー(Ullmer)氏による、“物理操作と視覚的インタフェースを融合したプラットフォーム環境”の2つの論文発表が行なわれた。

早稲田大学の園田氏の発表は、カメラの付いたヘッドマウントディスプレーで、指先の動きを読み取り、空中で文字認識を行なわせるというもので、PDAの文字入力や寝たきりの人の文字入力支援に使えるとしていた。

ヘッドマウントディスプレー内に表示された、文字認識画面。画面内を5×5の仮想的なタッチパネルに分割している

ソニーの歴本氏の発表は、“DataTiles”(データタイルズ)と呼ぶ、ある機能が付加された透明な四角い板を平面ディスプレーの上に物理的に並べることで、その組み合わせかたによって複雑な機能を表現するというもの。GUIが提供する対話型のシステムを、リアルな物体による直感的な操作性と融合させたとしている。

ソニーCSLの歴本氏
ソニーCSLの歴本氏

例えばある画像が割り当てられたタイルの横に、グラフィックエディターの機能を持ったタイルを置き、ペン操作によって画像をエディター機能タイルに移動させ、そこで画像の編集を行なえる。そしてその隣に人が割り付けられた一種の電話帳のような機能を持つタイルを置き、編集した画像をペン操作によって、電話帳機能タイルに表示されている人物にメールすることができるといったデモが行なわれた。

DataTilesの例
さまざまな機能を持ったタイルの例。“電子ブロック”からもヒントを得たという

さらに5日、6日の午後行なわれるインタラクティブ発表でも、PDAのタッチパネルにクリック感を付加する“Active Click”、メーリングリストで行なわれる討議の論理構造(関係)を視覚的に表示できる“ICEMail++”、透明の球形ディスプレー“i-ball”といった、興味深い発表が予定されている。

インタラクション2001実行委員長の土井美和子氏は「21世紀の新しいインターフェースが生まれる瞬間に立ち会うことができるかもしれない」と挨拶した。一つ一つの発表はまだ研究段階だが、ユニークなものが多く、これらのなかから次世代の電話などで使われる新しいインターフェースが登場するかもしれないという期待がもてるシンポジウムとなっている。

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