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『アクアロイド』は都会の大人たちに満足感を提供する癒し系水中ロボット――タカラのロボット開発担当竹内氏

2000年09月01日 10時31分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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(株)タカラは、観賞用の次世代型水中ロボット『アクアロイド』を9月下旬に発売する。アクアロイドは、本体上部のソーラーパネルと内蔵モーターによって、光エネルギーを動力に変換して動く水中生物型ロボット。3月に開催された“2000東京おもちゃショー”で癒し系ロボットとして出展され、多くの来場者から注目を浴びていたものだ。

9月下旬に発売される癒し系水中ロボット『アクアロイド』

癒し系のクラゲロボットとサカナロボットが水中を漂う

今回発売されるアクアロイドは、クラゲタイプとサカナタイプの2種類が用意されている。本体の主な素材はABS樹脂。メカ部分(ソーラーバッテリー、IC、モーター、磁石)を完全防水させて本体に組み込み、水槽側に取り付けた別の磁石との磁力によってスクリューを起動させることで、水中をゆっくり泳ぎ回る。その動きは水流や水圧、光の加減によってさまざまに変化し、本物の魚と同様に予測不可能な動きをする。

クラゲタイプは、本体上部のソーラーパネルと本体中央のモーターによりスクリューが回り、水中をゆっくり上下する。そこに水流が加わると、本物のクラゲのようにふわりふわりと水槽を漂うようになる。スクリューのプロペラの回転はICで制御されており、2種類の周期の組み合わせで運動に変化を付けているという。本体下部には回転スライド式のウェイト(重り)を付けることが可能で、この重りにより浮力を調整できる。体長は145mm、重量は110g。

アクアロイドのクラゲタイプ。光に反射してきらきら輝きながら水中を漂う

サカナタイプは、本体上部のソーラーパネルとその下部にあるモーターによってスクリューを回し、水中をゆっくり前進する。モーターは、頭部や尾ひれと連動しており、モーターが回転することで全身がコミカルに動作する。水圧の影響で、口やヒレも動くようになっている。胸の部分にはセンサーロッドが装備されており、水槽の角などに突き当ると本体の方向を変えて泳ぎ続けられるようになっている。体長は165mm、重量は105g。

アクアロイドのサカナタイプ。顔がユーモラスでかわいい

アクアロイドは、専用の水槽とセットで発売される。アクアロイドのクラゲタイプとサカナタイプがそれぞれ1体ずつと大きな水槽がセットになった『アクアロイド システム60』と、アクアロイドのクラゲタイプと小さめの水槽がセットになった『アクアロイド システム40(クラゲタイプ)』、同じくサカナタイプと小さめの水槽のセット『アクアロイド40(サカナタイプ)』の3種類が用意されている。

アクアロイド システム60は、水槽(幅603×奥行き340×高さ360mm/容量63リットル)アクアロイド(クラゲとサカナ)、ヒーター、フィルター付きポンプ、水温計、専用ライト(ハロゲン球)、専用キャビネット、背景アクセサリー、苔/藻発生抑制剤で構成されており、価格は10万円。

クラゲとサカナの両方が楽しめる『アクアロイド システム60』

アクアロイド40は、水槽(幅400×奥行き271×高さ284mm/容量26リットル)、アクアロイド(クラゲかサカナどちらか1タイプ)、ヒーター、フィルター付きポンプ、水温計、専用ライト(ハロゲン球)、苔/藻発生抑制剤で構成されており、価格は5万円。

小型の『アクアロイド40』

ASCII24では、アクアロイドの開発担当である同社ライフカルチャー事業部FL(フューチャーライフ)課の統括マネージャーである竹内オサム氏にお話を伺った。

都会で暮らす大人のための観賞用ロボット

――まず、アクアロイドのコンセプトと、開発に至るまでの経緯について教えてください

「大きなくくりでのコンセプトは、“ロボットと暮らす生活”をいろいろな形で提案していこうということです。アクアロイドは、そのコンセプトの中で、特に都会で暮らす大人の人に評価をされたいという方向で企画されているものです」

「当社は'80年代から『フラワーロック』とか『ミュージ缶』とか、猫の形をしたロボットペットだとかを作っていた経緯がありまして、センサーを使って物と人とがコミュニケーションするような仕組みをずっと大事にしていたんですね。ここ数年はそのラインの中からはヒット商品が出ていなかったのですが、そういうノウハウをずっと蓄積してきていて、センサーを使って、人と物、もしくは人と人とがコミュニケーションを取るような企画を立ち上げたい、という思いはずっとあったのです」

「そして昨年、2000年を目前にして“新世紀”や“ミレニアム”用の新しい企画が出てたころ、新しい時代を迎えるにあたってのキーワードとして、“ロボットペット”という構想をプランニングしてたんですね。ロボットだったら、犬や猫はこんなふうにできるんじゃないかとか、実際のゾウやキリンは飼えないけれども、ロボットのゾウやキリンなら飼えるんじゃないかとか。じゃあ恐竜も飼えるなとか、海の中にいる生物を部屋で飼ったら楽しいんじゃないかということで、ロボットペットショップみたいな広がりが持てたらすごいねと。ところがこのロボットペットショップの構想は社内では没になったんですね。『リカちゃん』や『トランスフォーマー』といった通常の玩具を担当する部署では扱えないテーマでしたので、それに人、物、金を割いていく体制がその時期になくて、お蔵入りになってたんです」

アクアロイドの開発を担当したタカラの竹内オサム氏

『AIBO』がフックに

「そこへソニーの『AIBO』が話題になった。ああいうヒット商品が出ますと、うちの業界はすぐ“まねっこ”と言ったら悪いですけど(笑)、それをより安く、より簡単に子供向けに提案するようなものを出すんです」

「アップルの『iMac』が流行ったときに、雑貨関係が何でもかんでもシースルーになったじゃないですか。あれと同じようなもので、きっとAIBOは何かのフックになるだろうという感じはしてたんです。それで、ロボットペットショップは無理でも、AIBOをもう少し簡単な形で提案することができたら楽しいんじゃないかと」

「以前、企画の方向がちょっと変わって雑貨テイストになっていた時期があったんです。それが現在の『ロボパル』シリーズ*なんですが、犬で“ワン”というだけとか(笑)、すごくローテクなものもあったりして。まあシャレですね、あれは(笑)。単なるシャレで、AIBOを作った人たちにも笑ってもらえればいいな、くらいな思いだったんですけど」

*ロボパルシリーズ:タカラの低価格ロボットシリーズ。光センサーを内蔵し、付属の猫じゃらしで遊んであげると猫パンチをしたりじゃれついたりする猫型ロボット『ジャレット』、人と会話するように話せる鳥型ロボット『だいちゃん』、人の気配を感知すると逃げるハムスターロボット『クッキー』など、さまざまな小型ロボットが用意されている。価格はロボットの機能によって680円から3800円と幅広い。写真は鳥型ロボット『だいちゃん』

「私たちのスタッフはみんな、AIBOを作ったかたたちのことを尊敬してますので、パクっちゃえとかそういうことじゃなくて、憧れつつロボパルのような物を作るんです。それでロボットの企画がそっちの方向にいってたときに、もうひとつ、社外からちょうどソーラーパワーを使ったアクアロイドの原型になるような企画の提案がありまして、そこでロボットペットの構想が再度浮上してきたんです」

「ところが、ペットショップといってもやはりいきなり横に広げてワーッとやるわけにはいかないので、技術的にも新規性のあるものを作ろうと。きっと犬猫は他社からも出るだろう、ならばタカラ独自のものを、もっとわがままに自分の感性で作れたらいいな、そこでアクアロイドがでてきたんです」

――他の動物ではなくて、いきなり水の生物を作ることになったんですか

「いきなり水の生物でしたね。それで、東京おもちゃショーで提示をしてみせたんです。あの反響があまり大きくなければ、多分そのままプランで終わってたと思うんですけど、おもちゃショーでのリアクションが非常によかったものですから、実はそこから本格的な発売に向けての開発を急ピッチで進めたんです」

――おもちゃショーの後からですか? ですが、おもちゃショーでは今秋発売と提示されていましたが

「ああいうふうに言わないと流通のかたたちが注目しないんですね(笑)。“発売”ではなくて“参考出展”だと、バイヤーのかたたちが真剣に意見を言ってくれないんですよ。参考出展だと大抵の物はほめてもらえるんです。ただ発売となると、バイヤーの目は見方が厳しくなりますからね。やはりご意見をいただくにしても、発売を前提にしたもので提示するべきかなと。あの時点ではかなり裏付けのないまま、“本当に発売できるのかな、でも、やるなら9月だろう”と、まあ自分で自分の足かせを作った感じですね」

自分たちの感性でワガママに作った

――おもちゃショーで人気があったのは、今回発売するクラゲとサカナだったんですか?

「そうですね。ほかにエビ、カニを出していたんですが、評価のタイプが違っていて、エビやカニをいいなといったかたは女性が多くて、“カラフルでかわいい”とか、“動きがコミカルで面白い”とか、そういう声だったんですよ。クラゲやサカナといった、比較的デザインがシンプルなものを選ばれたかたは、“心が癒される”とか、“見ていて飽きない”といった、玩具の展示会では聞かれないようなコメントが多くあったんですね。そういう中から自分が作っていくにあたって、“コミカルでかわいらしい”ではない方向に魅力を感じたので、あえて動きもシンプルなクラゲとサカナにしました」

2000東京おもちゃショーに出展されたアクアロイド試作機
同じく2000東京おもちゃショーに出展されたアクアロイド試作機。こちらはエビとカニ

――デザインがおもちゃショーで出展された試作機とちょっと変わりましたが、これはユーザーの意見を反映したのですか?

「本当のことをいうと、全然反映させていません。ごくごくわがままに開発メンバーが作りました。ユーザーの意見は、カラフルでかわいらしいデザインを好まれるかたと、無機質で透明と白がいいという人に二極化されたんですね。それで、透明と白のシンプルな意見のほうで作ろうとしてたんですけど、これがいつまでたっても試作品みたいに見えるんですよ(笑)。お売りするにはもう少し色をつけようということで、ちょっとお化粧をしました。そのほうが高く見えるっていうのもありますしね(笑)」

「ユーザーへのリサーチはしたんですけれでも、ターゲットにしているのがちょうど30代ということもあって、自分たちに近い人間の意見を重要視しましたね。通常、玩具メーカーですと、子供たちの商品を作りますから、子供へのリサーチというのは絶対やるんですね。自分たちの感性だけでは物は作らない。ですが、今回の商品は、うちの会社に入って企画をやってて、すごくわがままにやらせてもらえてためずらしいタイプですね。大人の意見や、メカが好きな人の意見、逆に本物のクラゲやサカナが好きな人の意見は聞きました。しかし、最終的にはそれらを集計したのではなく、意見を聞いた上で自分たちが描いたという感じです」

「ときどき、何のサカナですか、何のクラゲですかと聞かれるんですけれども、これは特にないんですね。ロボットサカナで、ロボットクラゲです。自分たちのイメージの中にあるロボットとサカナを融合したものなので、特別何かに似せてないんですよ。だから逆に、みんなのなんとなく思ってるクラゲのイメージになってるのではないでしょうか」

「本物のクラゲのようにリアルにすると、意識の中にあるイメージと違ってきちゃうことってあるじゃないですか。だから意識の中にあるクラゲ、サカナとロボットの融合ですね。あまりリアルにしすぎないで、わざとメカを剥き出しにしたり、プロペラが回る面白さを表現したりしてます」

「このデザインは、リアルなサカナやリアルなクラゲであることよりも、メカであることを重要視してるんですね。メカニカルな動きに何か魅せられてしまう感覚とかあるんじゃないかなと。特にメインターゲットの30代の男性っていうと、子供の頃、学研の『科学と学習』でトランジスターを作ってみようとか(笑)、ロボット心がある世代なんですよ。で、結構アナログなんですね」

「いまは完全なデジタルのブラックボックスの世界で、例えば自動車のボンネットを開けても、どこをいじっていいかわかんないですよね。昔の車って、わかりやすくていじりたくなるじゃないですか。完全なブラックボックスで私たちが手におえないデジタルな世界までロボットを持っていかなかったことで、どこかこの子達は愛情を注げるんだと思うんですよ。完全に冷たいんですけど、別になついてきたり、インタラクティブに何かしたりしないんですけど、でもこの子達のデザインにそういうアナログな要素を残したことで、何か愛情を持って見られる。これがまったくリアルにサカナやクラゲを再現したら、生き物そっくりであるにもかかわらず、逆に愛情を注げなくなっちゃう。このデザインは結構大事だったかなと思います」

“物”ではなく“満足感”を提供したい

――開発は自社開発ですか?

「そうです。いちばん最初に機構部分をご提案いただいた外部の会社を私たちのブレーンとして一緒に作ってはいたのですが、基本的には社内です」

――ターゲットユーザーは?

「AIBOを最初に飼われたかたは、30代が多かったと聞いたんですけれども、アクアロイドも同じような世代の人に受け入れられたいと思っています。主に30代。男性女性はどちらでもいいんですけれども。こういったメカにグッと心が揺れるのは男の人のほうが多いかなとは思いますが(笑)。20代の後半から40代前半、なかでも30代の中の人たちをコアに考えています。収入的にもある程度余裕が出てくる層でしょうし、自分の時間やお金を大事にしたり、自分の趣味にのめり込んだりする人たちじゃないかと思うんですよ。車が好きな人は車をいじってお金かけてるでしょうし、スポーツが好きな人はそれなりにそういうものに投資をしてるでしょうし。アクアロイドも大人のためのホビーとして、ある程度時間とお金と手間隙をかけられる人たちに購入してもらいたいと思います」

――おもちゃショーで紹介されていた価格は1万9800円でしたが、実際にそれより高くなってしまったのは、水槽やライトなどとセットになったからですか?

「そうです。単純にそれが理由です。単品ですと、多分1万5000円~2万円くらいの値づけで発売できるんですね。単品での供給をまず最初に考えたんですけども、これをおもちゃショーで出したところ、いろんな質問があったんです。例えば“お風呂に入れられるか”とか、“自分の家の水槽の中に魚と一緒に入れられるか”とか。いろいろと話を伺っていると、ほとんどのかたが水槽を家にお持ちではない。魚も飼ったことがない。そういうかたに、商品だけポンと提供して、果たしてその人がこの環境を作れるかなと。それって非常に無責任な商品の提供の仕方になっちゃうんじゃないかと」

「おもちゃショーなどでアクアロイドをご覧になられたユーザーは、“ああ、この世界を自分の部屋に持っていきたい”と考えると思うんですよ。そうすると、ユーザーが最初に見たときの感動や満足感みたいなものを提供できないと、ただ“物”を提供しただけで終わっちゃう。そうではなくて、世界観ごと提供することが最初は必要じゃないかなと。そのためにはある程度の大きさの水槽、きちんと商品が動くためのライトなど、おもちゃショーでだいたい用意してたようなものをなるべくコンパクトに提供しなければならない。それで値段が上がっちゃったんですね」

「ただ、最初から安いセットにしようとは思っていませんでした。おそらくこれを買われるかたは、買ったらお友達に自慢をするとか、自分で比較的感度の高い時間を過ごすために使われると思ったので、安っぽい水槽とかのセットじゃなくて、比較的価値のある高級水槽を選んでいます。今回、ニッソーという水槽では国内最大手のメーカーに協力していただいてます。水槽は特注品なんですが、ベースになってるのは、何年か前にニッソーがグッドデザイン賞をとったような、非常にクオリティーの高い水槽です。結構いい水槽なんですよ、これが。材質は強化ガラスで普通なんですが、普通水槽ってふちがあるじゃないですか。そのふちが全然ないんですね。これだけの大きさの水槽を置けるかたですから、ちゃんとしたお部屋にもマッチするクオリティーのものにしてます」

――水槽が大きいので、ある程度広いお部屋でないと置けないのが難ですね

「そうですね。システム60ですとワイドが60cmありますから、ちょっとしたTVを置くぐらいのスペースが必要ですね。ワンルームだと厳しいでしょうね。ただ、仮にサカナやクラゲを単品で販売したとすると、購入したかたは自分の部屋に合う大きさの水槽、ひょっとしたらどこかのホームセンターで、カブトムシを入れるような水槽を買ってきちゃうかもしれないじゃないですか。“あ、安い安い”って。それにサカナやクラゲを入れると“なんかあまりかっこよくねえなあ、これ。おもちゃショーでみたときはもっとすてきだったのに”って。そうなってしまうのはちょっと残念だなと」

「もう少し商品を小さくできたり、もっとバリエーション化を図っていけるようなステップになったときには単品売りをしたいなと思うんですけど、まずは、ある程度ユーザーをセグメントしちゃうかもしれないですが、セットで販売しようと。そのせいでちょっと値段は高くなりますが、個別でお客さんが水槽やライトなどをどこかの水槽屋さんで買ってそろえるのに比べたら、断然お安くセット組みできてます」

――室内灯の光だけでは動かないのですか

「結構厳しいですね。蛍光灯では動かないです。最初は蛍光灯で動くくらいまでにしようと思ったんですけど、実際にソーラーパネル1枚で作れる電気量というのはほんのわずかで、モーターを駆動する、しかも水の抵抗の中でモーターを回すとなると、結構なパワーが必要なんですね。そのため、今回は80Wのクリプトン球というハロゲンライトみたいなものを使うんですが、これれがいちばん良いライトでしたね」

――アクアロイドは長時間動かしても大丈夫ですか?

「あまり何百時間も連続で動かすのはお薦めはしていないです。見ない時間は電気を消してねということで(笑)。鑑賞されるときだけ電気をつけてもらえるのが本当は望ましいんですけれども。アクアロイド自体は、ごくごくシンプルな作りなので、どこかが壊れるというのはないんですね。汚れがついたら洗ってもらえればいいですし、電池じゃないですから、光さえ当ててもらえれば動きますし。唯一耐久があるとしたらモーター自体でしょうか。それでも、普通に使えば、この商品が飽きるまでは当然動いていると思います(笑)。保証期間を設けますので、1年間のうちに動かなくなったら交換だとかさせていただきます。通常の電化製品くらいのケアはしようと思っています」

――バリエーションの予定は?

「このクラゲとサカナが売れたら(笑)。アクアロイドは、“ファービー何十万個”だとか、いわゆる玩具的なヒットを狙わないんです。あんまりプロモーションをガンガンやって、プレゼントキャンペーンとかやりたくないんですよ。そういうものでもないと思うんです。だから、この良さをわかってくれる大人の人たちが、買った後自慢できるような、持ってることを威張れるような物になるといいなと思います。現在店頭販売に先行して、インターネットで注文を受け付けていますが、ネット上でたどり着いた人が注文してくれればいいくらいで(笑)」

2000年はロボット元年

――店頭販売する際は、どこで売られるんですか?

「そうなんですよ。ロボット屋さんというのがないので。いつかロボット屋さん、ロボットペットショップができたらいいなって思ってるんですけど。AIBOはソニーがやったから、ソニーの商品を扱っているお店かなと思うじゃないですか。アクアロイドもきっと、タカラから出てるって言ったら、タカラの商品を扱っているお店にユーザーは行くと思うんですよ。でも、おもちゃ屋さんに来るターゲットじゃないんですよ、これを売りたいのは。それでちょっと困ってまして。実は玩具店さんも困ってるみたいです、“どこで売ろう”って(笑)。ロボットだからっていってトランスフォーマーの隣は違うなあ、とかね(笑)」

「こういったホームエンターテインメント系のロボットは、いくつかの会社が企画をして出してますけど、まだ本当に導入の過渡期だと思うんですよ。何年か経って、ロボットを扱うお店ができてきたり、例えば百貨店にもロボットを扱うコーナーができたときに、“ああ、そういえば2000年がロボット元年だったね”みたいになるかなと思うんですね。まずはやっぱりウェブ上だとか通販だとか、店舗じゃないところでの販売が主体になるかなと。お店もディスプレーしたりなんなり大変ですしね」

「ただ、やっぱり現物を見ないと心配というかたや、ウェブ上で売買をすることに不安を持っているかたも多いですから、そういう点ではまだまだ販売についてもそうですし、鑑賞用のロボットというもの自体が新しい概念ですし、すべてにおいて過渡期に当たるので、あまり無理するよりも、ユーザーひとりひとりの満足感を高めることに主眼を置きたいなと。“ああアクアロイドね、こないだトイザらスで2999円で売ってたよ”という話になっちゃうとがっかりなんで(笑)、そういう売り方はしないつもりです」

――そういうのはロボパル担当ですね(笑)

「そうですね。ロボパルは、最初に値段を設定してから製品を企画したりするんですよ。これは700円とか、これは1000円以下じゃないとだめとかいって、機能をどんどんそぎ落としていったりするんです。いちばん大事なものをどこにおくか、商品を作る狙いによって作り方の過程が変わってきますよね。アクアロイドは、ユーザーの満足感や感動にたどり着きたいと思ってますから、ユーザーの値段の負担とかはちょっと大きくなってしまう。ロボパルなんかの狙いは、1000円でおつりがくることとかで(笑)。ほしいと思ったら気軽に買える、子供がおもちゃ屋で動かなくなったら、とりあえず“おだまり!”っていう意味で買っちゃえるとか(笑)、そんな感じですね」

――アクアロイドの動きは水流によって変化するのですか

「水流がないとクラゲはただ上下しかしないんですよ。サカナはただ直進するだけ。水流によって、アクアロイドは一定ではないいろいろな動きになるんです。機械はルーチンな同じ動作を繰り返してしまいますが、それだと飽きますよね。大抵のロボット玩具は、それがどんな複雑なものであっても始めがあって終わりがある。“あ、わかった、こう動くのね”となると、大人は急にさめちゃったりして(笑)。ファービーもひと通り育って“あ、わかった”って、わかったら終わり、みたいな。それじゃ寂しいじゃないですか。だからできるだけそうならないようにしました。水の流れというのは予測ができないですから、そういう点では、ずっと見てても、まるで生きてるように予測不可能な動きをする。一定の動作を繰り返すだけじゃない不可思議な面白さというのをずっと楽しめると思います」

もうひとつのロボットシリーズ“ホームロボット”

また同社は、会話の相手や目覚ましなど、日常生活の手伝いをしてくれる“ホームロボット”3種類を9月27日に発売する。価格はすべて3500円。

ホームロボットも、アクアロイドと同じく東京おもちゃショーで出展されていたもの。おもちゃショーでは、光センサーとアラーム機能を搭載し侵入者を検知する玄関用ロボット、目覚まし機能を搭載した時計ロボット、相槌をうったりマッサージをしてくれるロボット、温度センサーと空気清浄機能を搭載したロボット、投入された硬貨を判別してカウントする貯金箱ロボット、冷蔵庫のドアの開閉を検知し臭いも取るロボットが展示されていたが、今回発売されるのは、玄関用ロボット『Ku-Ku』、相槌をうつ相談役ロボット『Mu-Mn』、目覚ましロボット『Sa-Sa』の3種類。

Ku-Kuは、玄関に置いておき、外出するときに頭のボタンを押すと“いってらっしゃい。早く帰ってきてね”と言い、帰宅して再度スイッチを押すとメッセージで出迎える。スイッチを押さないと侵入者とみなし、警告音を鳴らす。Mu-Mnはユーザーが話し掛けると相槌をうつロボット。喜怒哀楽の4種類の感情を選択でき、ユーザーの話がとぎれると、その感情に対応した返事をしてくれる。本体を振動させることでマッサージ器の代わりにもなる。Sa-Saは目覚ましロボットで、設定した時間になると、さまざまな音を発して起こしてくれる。

玄関用ロボット『Ku-Ku』
相談役ロボット『Mu-Mn』
目覚ましロボット『Sa-Sa』

――ホームロボットについても教えてもらえますか

「ホームロボットは、アクアロイドとはまったく違う感じですね。アプローチは“21世紀”。子供の頃描いていた未来の世界というと、すごいスピードの車が走っていたり、壁掛けTVがあったり、世界中の人としゃべれるTV電話があったりといったものだと思うのですが、現在はインターネットもできたし壁掛けTVもできたし、電子レンジもすごいのができてきてボタン1つで料理ができるし、思い描いていた未来が結構かなってるんですね」

「その思い描いていたことの中に、21世紀にはロボットが生活の中に溶け込んでいる、というのがあったと思うんですよ。ところがこれがなかなかかなわない。工業用ロボットとかはあるけれど、友達感覚のロボットはなかなかできないですよね。かつて思い描いていた未来はやってくるのに、その夢はかなってない。いずれはかなうと思うんですよ、それが2000何年だかわかならいですけど。でも、せっかく21世紀なんで、何かそういうものを提案してみたいなと。生活に役立つロボット、例えばおじいさんが疲れて寝ている間に靴を作ってくれた小人みたいな、何か生活をフォローアップしてくれる仲間。それは物語の中では妖精かもしれないけど、ロボットという形でその夢をかなえられるかなと」

「そういう考えが根底にあって、次に考えたステップはターゲットをどこにするか。ロボットというと、男の子のものという印象がどうしても強い。子供の頃接しているのは戦うロボットが多いですよね。“強い、デカい、かっこいい”、これがロボットだ、みたいな(笑)。“強い、デカい、かっこいい”じゃないロボットがあってもいいじゃないですか。それで、ターゲットを女性にしてみたんですね。都会でひとり暮しをしている女性。この人たちはヘルプを必要としてるんじゃないかと」

「例えば、ひとり暮しをしている、セキュリティーが心配だ、お父さんがいれば安心だけどお父さんがいないので、お父さんのかわりになるロボット。お母さんがいないのでお母さんのかわりに世話をやいてくれるロボット。友達になってくれるロボット。ひとり暮らしの女性の生活シーンを想定して、仕事から帰ってきて、電気をつけて、靴を脱いでTVをつけてエアコンをつけて、とりあえず冷蔵庫開けてといった際に、このシーンにこいつがいたらかわいい、といった感じで出てきたのが、このホームロボットのシリーズです。おもちゃショーでは6種類ほど出してたんですけど、最初に発売するのは3種類です。おもちゃショーに出てたやつで、何か覚えてるのあります?」

――そうですね、玄関ロボットとか冷蔵庫見張りロボットとか

「やっぱりそうかー、やっぱり冷蔵庫かー」

――? なんですか?

「今回冷蔵庫ロボットは出ないんですよ。おかしいなあ……。みんな冷蔵庫ロボットって言うんですよ。おもちゃショーでご覧になられたかたにホームロボットの話をすると、“冷蔵庫ロボットは出ないんですか?”って言われちゃって……。ちゃんと女性に聞かないとだめだなあ。流通さんのウケはイマイチだったんですよ、男性ですからね。冷蔵庫ロボットは冷蔵庫を開けると“さっきも開けたね?”、“またなんか食べるの?”とか言うんですよね(笑)」

2000東京おもちゃショーに出展されたホームロボットシリーズの貯金箱ロボット
同じく2000東京おもちゃショーに出展されたホームロボットシリーズの温度センサー/空気清浄機能搭載ロボット
インタビュー中に話題となった、2000東京おもちゃショーで女性に圧倒的な支持を得たという冷蔵庫見張りロボット

「でもそれはなくてですね、玄関の見張り番と、お話し相手と、目覚ましの3種類です。目覚ましと言いながら時計が見えないというロボットで(笑)。目覚ましといったら、普通時計ですよね。でもこいつは目を覚まさせる役割のロボットですから」

「例えば、ドラえもんの目覚し時計って、ドラえもんの声で起こしてくれるといっても、おなかの部分に思いっきり時計がついてたりするじゃないですか。あれは時計ですよね。こいつはロボットなんで、起こしさえすればいいんです。お母さんは、子供を起こすときに“早く起きないと遅刻するわよ!”と言いますけど、“7時5分です”とは言わないですよね(笑)。起こせばいいんです」

「ドラえもんも、“のび太くん、遅刻するよ”って言うときに、何時何分ですとか言わなかったと思うんですね。私たちが作りたいのはどちらかというと、その“起きなよ”ということだから。目覚ましのロボットですというと、別に全然珍しくなさそうなんですけど、実は結構斬新なことをやってるつもりなんです。時計は起こす時間を設定するためだけにあって、後ろにちっちゃくついてるんです。時計がない家はないと思うんで、ロボットに起こされてふと回りを見れば、どこかに時計はあるでしょう(笑)」

アクアロイドは1万体くらい出荷されればいい

――アクアロイドの販売展開について。インターネットで先行販売をされていますが、海外から注文きたら場合は?

「実際に来てるんですよ。ただ今回はスペックを日本仕様にしているので、海外で利用されてしまうと、電圧の問題や、何かトラブルが起こったときのサービスセンターのケアの部分などで、十分な配慮ができないのでお断りしています。実際にインターネットでアクセスしてこられた海外のかたが、どうしても欲しいので、日本の友達に買わせてアメリカに送る、それでも動くんですか、と言ってこられたのですが、あくまで日本仕様ですとお答えしています。変圧器で電圧を変換すれば動くとは思いますが、お薦めはしていないですね。また、水槽を海外にまで送るとなると輸送賃もかかりますから。海外展開については、海外法人での販売を計画してますので、年末か来年始めには米国の会社から北米で発売されると思います」

――目標出荷数は?

「年度内で、クラゲ、サカナともに5000体ずつくらいは出したいなと思ってます。あまり何十万個まで人気が出るようであれば、もうこのシリーズは1度やめて、新シリーズにしちゃう。同じ商品を何十万個も作ってもいばれれないじゃないですか(笑)。ある程度の数が出荷されたら、もうこの子たちの使命は終わったと思って、例えばデザインを変えるとか、動きを変えてみるといったことをするつもりです。各1万体も売れば、まあ使命は果たしたかなということで、次々と違うバリエーションにしていこうと思ってます。年度内で各5000体、1年間かけて各1万体ぐらいまで出荷できればいいなと」

「AIBOが出たときに、絶対玩具業界は似たようなものをやるなと思ったんですよ。AIBOフォロワーはたくさん出てくるだろうから、それをやるのはいやだったんですね。AIBOのまねをするんだったらまねをするで、もっと笑える、ジョークでいけるような、犬の形をしていながらゼンマイ駆動とか、空気圧で動くとか、全然デジタルじゃないものを出してわざと笑ってもらうほうがいい。AIBOよりも関節がどうだとか、センサーが何個搭載してあってしかももっと安いとか、というのはあんまりかっこよくないなあと(笑)。AIBOのまねっこではなくて、オリジナルを提示したかったし、AIBOを“いい”と言った人たちに、“ああ、これはいい”と言われる製品を出したかった。アクアロイドは、そういう製品になりましたね」

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