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【第2回乗鞍高原会議Vol1】 新しい地域コミュニティーのありかたを提案する『安曇村CyberNetwork』

1999年11月01日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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10月28日、29日の両日、長野県南安曇郡安曇村で、“第2回乗鞍高原会議”が開催された。安曇村では地域イントラネットの足まわりに日本で初めて無線LANを導入、地域コミュニティーの新しいモデルとして大きな成果をあげている。

今回の乗鞍高原会議は、実稼動しているシステムの構築に携わったスタッフ、活用ユーザーの生の声をもとに、シンポジウム、パネルディスカッション、実地見学など盛りたくさんのイベントが催された。安曇村と同じように無線イントラネットの実験を行なっている福島の白河市や、遠くは小笠原諸島からなど、全国各地から無線LANを活用しようと考えている人々が集まった。本稿では、『CyberNetwork』の見学会の模様と宿泊施設について報告する。

松本駅から上高地線に乗り換え、新新島(しんしんしま)まで約30分。そこからバスに揺られること1時間。安曇村は乗鞍岳の裾野に位置するところにある。この村は、『安曇村CyberNetwork』という名の情報通信システム構想を2年前に発表した。その後1年足らずでシステムを稼動、ペンションや民宿などの宿泊施設、小中学校、村役場などの公共機関を結んだイントラネットが完成した。'98年には、通信機会工業会や日本電子工業振興会などが主催する“Com Japan Award”において、グランプリを受賞している。

NTTDoCoMoの鉄塔を中継してデータを伝送

安曇村は標高1500メートル、標高差400メートルという起伏に富んだ土地。中部山岳国立公園内に点在する施設間を、無線LANにより、縦10キロメートル×横2キロメートルの範囲で結んでいる。無線LANを導入しようとしたのはコストの問題もあるが、この土地が環境庁の自然保護規制区域のため、電線1本立てるのが容易でなかったからでもある。自然や景観を損なうことなく地域活性化をするための手段として、無線LANが選ばれた。

無線伝送経路の流れは、まず松本市から29キロメートル離れた“いがやスキー場”のサーバールームまで、128kbpsの常時接続線を引っ張ってくる。このサーバールームから、高低差200メートルのNTTDoCoMoの鉄塔(標高1650メートル)まで無線ルーターを使って結ぶ。

さらに、この鉄塔を中継して、鈴蘭、樽の木、蛭窪、番所、千石、宮の原という6ヵ所の地域にある宿泊施設を無線で接続。無線の周波数帯は免許不要の2.4GHz帯で、指向性の関係から無線が届かない地域に限って、DA64の有線で結んでいる(宮の原と鈴蘭は一部有線、島々、大野田は有線)。

 標高1650メートルの峠にそびえ立つ“NTTDoCoMo鉄塔”。ここを中継点に各地域を結ぶ。無線伝送距離は約5キロメートル 標高1650メートルの峠にそびえ立つ“NTTDoCoMo鉄塔”。ここを中継点に各地域を結ぶ。無線伝送距離は約5キロメートル



 カージオイドアンテナを持って説明するシスアドの岩田健二氏。このアンテナが鉄塔に設置してある。アンテナは140°の幅で、2方向に電波を飛ばす。電源は100Vの照明用電源から分けている カージオイドアンテナを持って説明するシスアドの岩田健二氏。このアンテナが鉄塔に設置してある。アンテナは140°の幅で、2方向に電波を飛ばす。電源は100Vの照明用電源から分けている



スキー場の中にあるサーバールーム

“いがやスキー場”に設置したサーバールーム内には、(株)インタースペースプランニング(発売元:住友商事)のLinuxサーバーとパワーマックがサーバーとして稼動している。それぞれのサーバーは機能別に分散処理をしている。屋外専用無線ルーターには、ルート(株)の『RTB-2400』を採用。また、DA64の村域内接続、松本からの128k上流接続、上流接続が切れた場合に備えてのバックアップアップ用としてISDNを、ヤマハの『RT-200i』を使って接続している。

現在のところシステムがダウンしたことはないので、バックアップ用ポートはお守り役になっている。さらに停電に備えてUPS(無停電電源)も設置したある。サーバールームの外にはビデオカメラが取りつけてあり、中央のディスプレーに、その映像が映し出されている。この模様はインターネットでライブ中継している。

 “いがやスキー場”のサーバールーム。冬は一面の銀世界になる。雪で覆われたサーバールームというのもちょっと変わった風景で面白い
“いがやスキー場”のサーバールーム。冬は一面の銀世界になる。雪で覆われたサーバールームというのもちょっと変わった風景で面白い



 サーバールームの外には、ビデオカメラを設置してある。スキー場の模様をインターネットでライブで中継(http://www.azumi.ne.jp)
サーバールームの外には、ビデオカメラを設置してある。スキー場の模様をインターネットでライブで中継(http://www.azumi.ne.jp)



 サーバールーム内。中央のディスプレーに映るのがビデオカメラからの映像。左のディスプレーには、なぜか藤原紀香の壁紙が。これは『安曇村CyberNetwork』構想の立役者である岩田健二氏の好みだとか。スパムメール防止のお守りの缶詰がマックの上に置いてある
サーバールーム内。中央のディスプレーに映るのがビデオカメラからの映像。左のディスプレーには、なぜか藤原紀香の壁紙が。これは『安曇村CyberNetwork』構想の立役者である岩田健二氏の好みだとか。スパムメール防止のお守りの缶詰がマックの上に置いてある



 PowerMacの左側にヤマハのルーターが3台ある。村域内、上流用、バックアップ用のポートを割り付けてある
PowerMacの左側にヤマハのルーターが3台ある。村域内、上流用、バックアップ用のポートを割り付けてある



 右にある黒いポールが無線LANのアンテナ(見本)。ラックの中央上には、マウントブラケットに収まった無線ルーターのメーンユニットが取り付けてある 右にある黒いポールが無線LANのアンテナ(見本)。ラックの中央上には、マウントブラケットに収まった無線ルーターのメーンユニットが取り付けてある



宿泊施設には、各部屋に1つずつのLANコンセント

『CyberNetwork』構想に参加している宿泊施設には、各部屋にLANコンセントが備え付けられている。すべての宿泊施設のLANコンセント設置工事を約2週間ほどで終えた。ちょうど真冬の工事だったため作業は困難を極めたという。工事作業者は各宿泊施設を泊まり歩きながら泣く泣く(?) 作業をしたという逸話も。

各部屋からのウェブの閲覧やメールの送受信は、常時接続なので快適に行なえる。次に行く予定の観光地の情報をウェブから取り出したり、メールチェックをする観光客も多い。宿泊施設ではオーナー自らウェブを制作しているところもある。ウェブで宣伝効果を高め、電子メールによる予約の受け付けや問い合わせのために活用している。観光客とダイレクトにやり取できるため、代理店などの仲介手数料も入らず、利益もアップしているという。ネットワークの維持費は月1万5000円ほどで済んでいる。

 宿泊したペンション『ポェティカル』
宿泊したペンション『ポェティカル』


(http://www.icon.pref.nagano.jp/usr/poetical/poetical.html)にて。
東芝のリブレットをLANコンセントに接続し、ASCIIのウェブを表示させているところ

 『安曇村CyberNetwork』の主要メンバー。左から、ペンション『ポェティカル』の小沢晶子氏、代表の村瀬基行氏、シスアドの岩田健二氏、副代表の藤田直登氏、電算の菅沼真氏
『安曇村CyberNetwork』の主要メンバー。左から、ペンション『ポェティカル』の小沢晶子氏、代表の村瀬基行氏、シスアドの岩田健二氏、副代表の藤田直登氏、電算の菅沼真氏

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