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直径1cmのパイプ中をワイヤレスで自在に動き回る検査マシン――第10回マイクロマシン展レポート

1999年10月27日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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第10回マイクロマシン展(主催・(財)マイクロマシンセンター/マイクロマシン研究会)が27日、東京・千代田区の科学技術館で開幕した。国内外の企業や大学が出展し、プラント内の検査に応用を目指す自律移動マシンや医療用カテーテル、超小型モーターなど、最新の研究成果が披露されている。29日まで。入場料500円。



マイクロマシンとは、大きさ数百μmから数mmの機械のこと。半導体加工技術を応用した数μmの歯車や、超小型モーターを利用した自律型ロボットなども含まれる。分子レベルでの作業を可能にするナノマシンも広義ではマイクロマシンだ。応用分野は広く、特に産業用と医療分野での期待が高まっている。

SFではお馴染みのガジェットとなっているマイクロマシンだが、現在は実用化に向け研究開発が進められている段階だ。マイクロマシン展は、研究成果を発表する場として毎年開かれている。10回目の節目となる今回は、“マイクロマシン技術――次代の産業技術の基盤”をテーマに、企業や大学など86団体が出展した。

展示の中心となったのは、通産省工業技術院の“マイクロマシン技術の研究開発プロジェクト”に参加した企業の出展だ。同プロジェクトでは、第1期('91~'95年度)で基本技術の開発を行ない、現在の第2期(~2000年度)では、実用化に向けた技術確立が狙い。会場では、プロジェクト参加企業により、発電所などプラントの検査を目的としたマシンや、人間の脳内血管に入り込んで治療を行なうカテーテルなどが展示された。

以下、写真を中心に展示を紹介する。

三菱電機(株)、松下技研(株)、住友電気工業(株)による“細管群外部検査試作システム”。発電施設の蒸気発生管など、林立する細管の外部の傷を検査するマイクロマシン。細管の間を通り抜けられるように小型化している。サイズは幅5×奥行き9×高さ6mm、重さ0.53g
三菱電機(株)、松下技研(株)、住友電気工業(株)による“細管群外部検査試作システム”。発電施設の蒸気発生管など、林立する細管の外部の傷を検査するマイクロマシン。細管の間を通り抜けられるように小型化している。サイズは幅5×奥行き9×高さ6mm、重さ0.53g



駆動にはマイクロ電磁モーターを使い、磁石車輪で細管の壁をよじ登る。移動スピードは毎秒10mm
駆動にはマイクロ電磁モーターを使い、磁石車輪で細管の壁をよじ登る。移動スピードは毎秒10mm



検査では、単体の小型化を要求しつつ、ある程度大きな領域をカバーすることも求められる。このマイクロマシンは単体としても自立しているが、10個を連結して輪になり、全体が回転しながら細管の周囲を上下に移動しながら検査することも可能
検査では、単体の小型化を要求しつつ、ある程度大きな領域をカバーすることも求められる。このマイクロマシンは単体としても自立しているが、10個を連結して輪になり、全体が回転しながら細管の周囲を上下に移動しながら検査することも可能



(株)デンソーの“管内自走環境認識用試作システム”。内径10mmの管内をワイヤレスで移動し、損傷を調べる。移動にはマイクロアクチュエーターを使う。アクチュエーターは回転する際にわずかに移動し、アクチュエーターの中心にぶらさがったおもりに慣性力が生まれ、その“勢い”で移動するという仕組み。速度は毎秒20mm、上下左右とも移動可能
(株)デンソーの“管内自走環境認識用試作システム”。内径10mmの管内をワイヤレスで移動し、損傷を調べる。移動にはマイクロアクチュエーターを使う。アクチュエーターは回転する際にわずかに移動し、アクチュエーターの中心にぶらさがったおもりに慣性力が生まれ、その“勢い”で移動するという仕組み。速度は毎秒20mm、上下左右とも移動可能



消費電力は650mW。電源供給はマイクロ波と光によるものが試作され、操作もマイクロ波で行なわれるため、ワイヤレスで自走することが可能になっている。会場では、電源を外部供給し、外部CCDカメラを接続したタイプのデモが行なわれた。画像データ送信は24GHzのマイクロ波を使用、転送速度は2.5Mbps/毎秒3フレームを実現している
消費電力は650mW。電源供給はマイクロ波と光によるものが試作され、操作もマイクロ波で行なわれるため、ワイヤレスで自走することが可能になっている。会場では、電源を外部供給し、外部CCDカメラを接続したタイプのデモが行なわれた。画像データ送信は24GHzのマイクロ波を使用、転送速度は2.5Mbps/毎秒3フレームを実現している



オリンパス光学工業(株)による“多自由度湾曲管状ユニット”。2本の管状ユニットのうち、右側には光ファイバーが仕込まれ、胃カメラのように配管内部を除くことができる
オリンパス光学工業(株)による“多自由度湾曲管状ユニット”。2本の管状ユニットのうち、右側には光ファイバーが仕込まれ、胃カメラのように配管内部を除くことができる



管状ユニットは、コントローラーを使って、くねくねとミミズのように自由に動かすことができる。マニピュレーターとカメラを併用し、配管内を奥深くもぐって損傷個所を修理するのが目的だ
管状ユニットは、コントローラーを使って、くねくねとミミズのように自由に動かすことができる。マニピュレーターとカメラを併用し、配管内を奥深くもぐって損傷個所を修理するのが目的だ



テルモ(株)のマイクロレーザーカテーテル。直径2mmの先端に、水の吸収ピークである波長2.8μm、出力150mWのレーザー素子を搭載する。人間の脳など、外側からの切開が難しい部位に血管を通して入り込み、レーザーで治療個所を焼き切って治療する。安全性の検証など、実用化にはまだ課題が残るという
テルモ(株)のマイクロレーザーカテーテル。直径2mmの先端に、水の吸収ピークである波長2.8μm、出力150mWのレーザー素子を搭載する。人間の脳など、外側からの切開が難しい部位に血管を通して入り込み、レーザーで治療個所を焼き切って治療する。安全性の検証など、実用化にはまだ課題が残るという



マイクロマシン開発と微細加工技術の進歩は車輪の両輪だ。三菱電機の“創成放電加工”技術で使用する電極の直径は20μm。この電極で書かれた写真右の文字は、1文字40μm。超小型ギアのモールド成形などに威力を発揮する
マイクロマシン開発と微細加工技術の進歩は車輪の両輪だ。三菱電機の“創成放電加工”技術で使用する電極の直径は20μm。この電極で書かれた写真右の文字は、1文字40μm。超小型ギアのモールド成形などに威力を発揮する



ミクロの世界をのぞく電子顕微鏡も数多く展示された。レーザーテック(株)の『ハイビジョンコンフォーカル顕微鏡』は光学式ながら、高い精度でZ軸方向に移動するステージと、極めて浅い被写界深度を利用し、各焦点面の画像を次々に記憶することで試料の凹凸情報を取得、画像処理によって3D表示を可能にしている。走査型と違って被写体に金ぱくを貼ったりする必要もなく、非破壊/非接触の計測が可能だ
ミクロの世界をのぞく電子顕微鏡も数多く展示された。レーザーテック(株)の『ハイビジョンコンフォーカル顕微鏡』は光学式ながら、高い精度でZ軸方向に移動するステージと、極めて浅い被写界深度を利用し、各焦点面の画像を次々に記憶することで試料の凹凸情報を取得、画像処理によって3D表示を可能にしている。走査型と違って被写体に金ぱくを貼ったりする必要もなく、非破壊/非接触の計測が可能だ



ハイビジョンコンフォーカル顕微鏡によるアサガオの花粉の画像。走査型のような立体描写だ
ハイビジョンコンフォーカル顕微鏡によるアサガオの花粉の画像。走査型のような立体描写だ



会場には小中学生が描いた未来のマイクロマシン想像図も展示された。写真は、ドリル付きのマイクロマシンが地下に潜って地質情報を取得、地震予報に役立てるというもの。SFの世界では、コクピットに多数のマイクロチップを埋め込んで操縦者の脳波を増幅したり、火星を地球化するためにばらまかれたりと、おなじみの道具立てとなっているマイクロマシン。現実のものとなるのはそう遠い未来ではないようだ会場には小中学生が描いた未来のマイクロマシン想像図も展示された。写真は、ドリル付きのマイクロマシンが地下に潜って地質情報を取得、地震予報に役立てるというもの。SFの世界では、コクピットに多数のマイクロチップを埋め込んで操縦者の脳波を増幅したり、火星を地球化するためにばらまかれたりと、おなじみの道具立てとなっているマイクロマシン。現実のものとなるのはそう遠い未来ではないようだ

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