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ナショナルセミコンダクター、世界初のIA-on-a-Chipを発表

1999年07月22日 00時00分更新

文● ケイズプロダクション 岡田 靖

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米ナショナルセミコンダクター(NS)社は、22日都内のホテルで“IA(Information Appliance:情報アクセス機器)”向けワンチップIC『Geode SC1400』、およびIA向け半導体戦略を発表した。STB(セットトップボックス)やPAD(Personal Access Device)、Thin Clientなど、さまざまな機器で、高性能で低消費電力、低コスト、高信頼性と小型化を実現できるという。

Geode SC1400(*1)は、Media GXコアを中心に、MPEG-2デコーダ、スーパーI/OやUSBなどのサウスブリッジ機能、TV入出力などを集積したIC。メインメモリと高電圧回路は含まないが、IA機器に必要となるほぼすべての機能をワンチップで実現できる。

*1 Geode(日本語では「晶洞石」)とは、外見はなんの変哲もないが、内部に結晶の密生した空洞を持つ石のこと。複雑な技術を普通の家電感覚で使えるようにする、という意味でIA機器向け製品群のブランド名として採用したという。

SC1400チップ
SC1400チップ





STBの基板。Media GXを使用したものに比べ(上)、SC1400を使用したもの(下)は試作品のためボードのサイズは大きいが、部品点数は大幅に少なくなっているのがわかる。
STBの基板。Media GXを使用したものに比べ(上)、SC1400を使用したもの(下)は試作品のためボードのサイズは大きいが、部品点数は大幅に少なくなっているのがわかる。



会長・社長兼CEOのブライアン・ハーラ氏が3年前、現職に就任して以来、IA市場を狙ってきた。そのため、各種IP(Intellectual Properties:再利用可能な半導体回路ブロック。いわばLSIの部品)を求めて、それらの資産を持つ企業を買収し、また社内では“Green Book”という基準を設け、開発された回路をIPとして積極的に利用するようにしている。その成果がGeodeとして結晶したのだ。

なぜIA? なぜx86?

今回来日したハーラ氏は、「これからは計算機でなく、IAの時代だ。インターネットの膨大な情報を利用するためには、現在のコンピュータは複雑すぎ、またクラッシュしたりハングアップしてばかりいる。将来の情報アクセス機器は、電話機のように気軽に使える機器で、かつトースターのような耐久性や安定性を備えなくてはならない」とし、改めてIAの重要性を説いた。

会長・社長兼CEO、ブライアン・ハーラ氏
会長・社長兼CEO、ブライアン・ハーラ氏


ナショナルセミコンダクタージャパン(株)代表取締役社長 石原 達夫氏も同席
ナショナルセミコンダクタージャパン(株)代表取締役社長 石原 達夫氏も同席



また、x86アーキテクチャであるMediaGXをコアに用いたことについては、ソフトウェア資産や技術者の数の多さ、対応OSの幅広さなどを挙げ、またブラウザのプラグインやアドインも、PC用のものと共通化できるため、システム開発が容易というメリットを強調した。

NSのIA戦略

IA-on-a-Chipを実現するために、SC1400では43のIPが組み合わさっている。その中にはオーディオやビデオ関連、電圧やクロック関連など、アナログ回路のものもいくつかある。アナログ部分は全体の10パーセントほどだが、“デュアルゲートオキサイド”と呼ばれる特殊な構造で実現している。CMOS LSIにアナログ回路を混載するのは、IntelやAMDなど、x86コアを持つ他社にはない技術で、またこのようなアナログ回路を手がける半導体メーカーはCPUを持たない。

SC1400のブロック図。IPの色分けで開発したグループがわかるようになっている
SC1400のブロック図。IPの色分けで開発したグループがわかるようになっている



また、インフォメーション・アプライアンス事業部担当副社長兼統括本部長、マイケル・ポラチェック氏は、Geodeの開発に関して、IA機器製造メーカーと共同で進めると説明した。IPのカスタマイズや取捨選択から、BIOSやドライバの開発などソフトウェアの分野まで幅広いサポートを行なうという。

インフォメーション・アプライアンス事業部担当副社長兼統括本部長、マイケル・ポラチェック氏。昨年11月まで、日本法人の取締役サイリックス本部長として日本に勤務、顧客対応や製品マネジメントで幅広いコネクションをつくり、それを元にGeodeの開発に取り組んだ。
インフォメーション・アプライアンス事業部担当副社長兼統括本部長、マイケル・ポラチェック氏。昨年11月まで、日本法人の取締役サイリックス本部長として日本に勤務、顧客対応や製品マネジメントで幅広いコネクションをつくり、それを元にGeodeの開発に取り組んだ。



IA市場は、2002年には5570万台に達する(IDC予測)といわれる。NSはその第一人者として、地位を確保していこうという方針だ。

さらに今後、IPの組み合わせを変えることにより、Geodeはさまざまな機器に最適化される。例えば、ネットワーク端末向けに10/100MbpsのLAN機能を内蔵したり、無線LAN機能を付け加えれば、どこでもネットワークに接続できる『WebPAD』が容易に実現することになる。





WebPADの試作モデル。Media GXを搭載、組み込み用のリアルタイムOS『QNX』が動作している。無線LANでベースステーション(サーバ)と接続しており、デモでは2台で同時にブラウジングをしていた
WebPADの試作モデル。Media GXを搭載、組み込み用のリアルタイムOS『QNX』が動作している。無線LANでベースステーション(サーバ)と接続しており、デモでは2台で同時にブラウジングをしていた



WebPADのサーバとして用いられていたサブノート。無線LANカードを装着している
WebPADのサーバとして用いられていたサブノート。無線LANカードを装着している



気になるIntelとの関係

一方、プレゼンテーション後に設けられたQ&Aの時間でハーラ氏は、Cyrix部門を売却する関係で取りざたされているいくつかの問題についての記者の質問に対し、VIA社のチップセットを生産することについては、「クロスライセンス契約上も、法律上も何ら問題ないと認識している」と回答した。また、テイクオーバーの対象となっているという噂に関しては、「仮にNSが売りに出されていて、Intelが購入するとしても、独占禁止法に触れてしまうため不可能。しかし実際には、私がCEOになってから3年間、リストラなどで十分な体力をつけており、そのような心配はない」と否定した。なお、「むしろIntelは、アナログに強いが規模の小さい企業を買収して、Geodeに対抗してくる可能性は高い」としている。

Q&A終了後、撮影をしていたらこちらにもカメラを向けてきた。彼にとって今回の発表は、大きな仕事を片付けた節目となり、肩の荷が下りた状態なのかもしれないQ&A終了後、撮影をしていたらこちらにもカメラを向けてきた。彼にとって今回の発表は、大きな仕事を片付けた節目となり、肩の荷が下りた状態なのかもしれない

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