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【MACWORLD EXPO/NEW YORK Vol.1】開催直前大予想&レポート

1999年07月20日 00時00分更新

文● 林 信行

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コンシューマーノート機いよいよ発表か?

MACWORLD EXPO/NEW YORKの開幕が目前に迫っている。スティーブ・ジョブズが暫定CEOに就任して以来、MACWORLD EXPOの盛り上がりは高まる一方だが今回のEXPO/NEW YORKへの期待は特に高い。それにあわせてアップル社の株価もあがり続けている。今回のEXPO/NEW YORKでの最大の関心事は、アップルが昨年5月に製品開発を発表したコンシューマー用ノート機が発表されるか否かだ。

ノート型iMac、P1(同機のコード名とされている)、そしてiBook(同機の製品名になると言われている*1)などと呼ばれている製品は、Macをラインアップ(プロ用とコンシューマー用のそれぞれにデスクトップ型とノート型を用意する)を4つにするという新しい製品戦略の最後の1かけにあたるもので、iMacに近い非常に洗練されたデザインと圧倒的なコストパフォーマンスを実現する製品になるとして、iMac発表以来、常にMacユーザーの最大の関心事の1つであり続けている。

5月アップル社のWorldwide Developers Conference(WWDC)が行なわれる時も同様の期待感からアップル社の株価が高騰したが、同機は発表されず、代わりにプロ用ノート機、PowerBook G3が発表された(筆者はWWDCでコンシューマーノート機が発表されないことを直前のMACPOWERで予想している)。

アップル社の側は、同製品の発表は今年中と認めているものの、このEXPOで発表するとはまだ一言も言っていない。だが、筆者はこのEXPOこそがコンシューマーノート機の発表の場であると確信しており、MACPOWER/MacPeopleの両誌でも3ヵ月ほど前からそう書いてきた。さらに先週に入ってハードかソフトかすらわからないが、とにかく何かしらの新製品が少なくとも1つは発表される確証を得た。

今回のEXPOで発表されると思う理由の1つは、EXPO/NYがアップルが今年米国で行なう最後のコンシューマー向けイベントとなるからだ(*2)。米国で行なわれるアップルが参加予定のイベントは、まだ他にもSeybold Seminars(8月開催)などがあるが、これは出版業界向けのイベントであり、やはりコンシューマー向けのイベントではない。

米国で開催される次のMACWORLD EXPOは2000年1月に開催予定のMACOWORLD EXPO/SAN FRANCISCO 2000で、これでは一番のかきいれどきであるクリスマスシーズンを逃してしまう。

と、なるとアップルに残された道はこのEXPOで発表するか、あるいは一切公式イベントを行なわず記者だけを集めた地味な発表会をとりおこなうかで、アップルがこれまで行なってきた演出を考えると後者は考えにくい。ちなみにiMacも昨年の5月2日の製品発表は簡単に行なわれただけ、WWDC中は開発者が対象ということで一般向けの初のお披露目となったのはMACWORLD EXPO/NEW YORKでのことだった。

ちなみにアップルに近しい情報筋の話によれば、同社はiMacの後継機にあたるiMac II(仮称)の開発も既に最終段階に入っているという(一方で、iMac IIはまだ開発が始まっておらず、年末まで出荷されないとする情報もあるが、筆者が判断したところ少なくとも最終的製品仕様は固まってきたようだ)。

またPowerPC G4やAGPグラフィックス、USBによる音声入出力に本格対応した新ロジックボード採用のPower Mac G3後継機も既に完成直前までこぎ着けているようだ。
 
ただし、筆者は今回のEXPOで新型Power Mac G3(あるいはG4)が発表される可能性は極めて低いと読んでいる。1つはアップルがMACWORLD EXPOをコンシューマー向けイベントと受け止めており、プロ用製品の発表には別のふさわしい場所があると考えているようだからだ(8月のSeybold Seminarsとなると話は別だ)。そしてもう大事なのがPower Mac G3の売れ行きがアップルが期待していたほどよくなかったことだ。特に日本では一部、DTPソフトとの互換性に対する不信感(実際には問題の多くは現段階でもソフトのアップデートなどで解決可能だ)が大きな足かせとなったようだ(*3)。

iMac IIの発表に関しても筆者はわずかながら疑念を抱いている。というのも、せっかく(具体的にはわからなかったが)大幅に仕様が変わった同機を発表したとしても、異常なほどに期待が高まっているコンシューマーノート機と同時に発表したのでは話題性が薄れてしまうからだ。

ただし、アップルが1月から5月にかけてプロ用製品ライン(Power Mac G3とPowerBook G3)を一新したように、今回のEXPOでコンシューマー用製品ラインを一新してしまうという可能性も完全には否定できない。


アップルが3Com社と提携!?

さて、今回のEXPOで発表が噂されているのはコンシューマーノート機だけではない。実はアップルが最近、PilotシリーズのPDAで有名な米3Com社と何かしらの提携を行なったことがまことしやかに噂されている。有力なのはPalm社のOSを採用したアップルブランドのPDAが発表されるという噂で、かなり信頼がおける情報筋もそう伝えている。確かにEXPOの会場となるJavits Centerに近づくとPalmPilotの広告がやたらと増えてくる。会場の入り口からもPalmPilotと3Com社の無線ネットワークの広告のビルボードがすぐに視界に飛び込んでくる(今日はオフの日なので写真は撮っていないが、許して欲しい)。

だが、筆者はこの噂にちょっと懐疑的だ。筆者はPalmよりアップル社が切り捨てたNewtonの方がPDAとして優れていると考えているので、ちょっと偏見もあるかも知れない。だが、万が一、そんなPDAを開発したとしても、わざわざそれをコンシューマーノート型機と一緒に発表するだろうか。そんなことをすればどちらを買ったらいいか迷う購買者も出てくることだろう。
 
Palm社のPDAとMacのシンクロソフトをさらによくする(例えばシンクロソフトを改良したり、アップル製のシンクロソフトを出したり)というのだったら納得がいかないわけではない。もっとありそうなのが、現在、米国の一部で試験的に販売されているPalm VIIの無線機能をコンシューマーノート型機に搭載するという情報だ。もっともこれが本当なら日本を含むそのほかの国々でも無線事業者とも提携して同種のサービスを提供しなければならない。ある情報筋は既に日本のアップルがNTT(NTTDoCoMoのことだろうか?)と提携話を進めているということも伝えている。
 
ただし、これらすべてまったくのガセネタだということも否定はできない。ジョブズ・アップルはとにかく今回のEXPOでの発表内容を秘密にするために積極的に嘘の情報を流しているという話だ。

ちなみに、3Com社はこのEXPOに先駆け、19日に米国で廉価版のPalm IIIeを発表しており、これは今回のEXPOに出展される模様だ。3Com社の決して大きくないブースは、アップルの巨大な展示場から少し離れた場所に設置される。

サードパーティーからも新製品続々

今回のEXPOで注目の新製品を発表するのは何もアップル社だけではない。サードパーティー各社からも既に100近い新製品やメジャーアップデートに関する報道資料が配布され始めている。
 
ざっとあげただけでもAppleScriptに本格対応したConnectix社のVirtual PC 3.0、CardBus対応のPowerBookでアナログビデオ取り込みを可能にするiRez社のCapsure Pro、米Terminal Reality社の本格的フライトシミュレーターである『FLY』、La Cie社のMPEGデコーダー付きDVD-ROM/RAMドライブやFireWire版DVD-RAMドライブといった製品があがる。
 
さらに正式な発表はまだ行なわれていないが、Microsoft社のOutlook Express 5.0がリリースされ、Internet Explorer 5.0も基調講演で紹介だけはされるようだ(リリースは後日になる)。また米Denaba社の本格的イラスト描画ソフト、Canvas 7が発表される可能性も高い。

アップルの大発表を前にしたマンハッタンは例年以上の蒸し暑さとなっているが、ジョブズの基調講演が始まる日本時間21日夜10時にはこの暑さがピークを迎えることになりそうだ。ちなみに世界中の注目を集めるジョブズ基調講演は、アップル社[http://www.apple.com/quicktime/showcase/live/mwny99/]とZDTV社[http://www.zdnet.com/zdtv/newscobrand/features/story/0%2C3730%2C2294103%2C00.html]によってリアルタイム中継される予定だ。前者はアップルの最新技術、QuickTime 4.0で、そして後者は米RealNetworks社のRealVideo及びMicrosoft社のWindows Mediaフォーマットで放送されるので、これらのストリーミングビデオの画質を検証するいい機会になりそうだ。

P.S.昨年のNEW YORKはMACWORLD EXPO開催の数日前からマンハッタン中をアップルのビルボードやポスター広告が埋め尽くしていたが、現在のマンハッタンには驚くほどアップルの広告が少ない(ある場所にはある)。昨年、アップル社が巨大なビルボードを掲げたタイムズスクエアはの広告塔はすべて他社の広告で埋め尽くされているが、そこからわずか数ブロック離れたところにできたWarner Brothers Studioがあるさらに巨大な広告塔(42nd StreetとBroadwayの交差点)は、かなり目立つ一番上のビルボード設置エリアが現在真っ白になっている。筆者はジョブズの基調講演が終わった直後、ここに新製品をあしらった巨大なビルボード広告が掲げられると予想している。ちなみにこの広告塔の下の方には、偶然なのか、アップルが昨年Think Differentキャンペーンで使った米国の人気ドラマの古典、We Love Lucyの再放送を宣伝するビルボードが掲げられている。

  • [http://trademarks.uspto.gov/cgi-bin/ifetch4?ENG+PEND+3+949818+0+0+78040+F+2+4+1+MS%2fiBook]。*2)WWDCでの発表がないと予想したのは、まだ開発が完了していないという情報があったことと、これが開発者向けイベントであったからだ。iMacが発表されたのはWWDCの直前だったが、それは開発者にアップルがiMacで初めて採用するUSBなどの新技術への関心を高めたかったという目的がある。これに対してコンシューマーノート機では特に真新しい技術を採用する可能性がないため発表する必要がなくなった(もっとも無線通信技術が採用される可能性は否定できないが)。*3)最近、アップル社はニュース雑誌などへの広告を積極的に展開しているようだが、やはり、この製品の魅力を一番理解してくれるのは出版関係や放送関係のユーザーだと思う。筆者はアップルがこの問題を早々にそして完全に解決した上で、サードパーティーメーカーと共同で問題が解決されたことを大々的に唱うキャンペーンを展開し、“Power Macが再びDTPの最適ソリューションになった”ことをアピールするべきだと思っている。

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