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ハイパーメディアコンソーシアム、10周年記念シンポを開催

1998年01月13日 00時00分更新

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 ハイパーメディアコンソーシアムは、設立10周年を記念して、千代田区の東海大学校友会館でシンポジウムを開催した。同コンソーシアムは、ハイパーメディア技術の動向や異業種間交流を主目的として設立されたもので、前身は、FMTOWNSコンソーシアム。PCメーカーのネットワーク担当者など、約200人の聴衆を集め、3本の講演が行なわれた。

『将来におけるハイパーメディア』
関澤義・富士通(株)社長

 トップバッターとして、同コンソーシアムの中心的な役割を荷う富士通の社長、関澤氏が講演を行なった。同氏はまず、この10年間でパソコンの性能が大幅にアップしたことに触れた。富士通のパソコンはCPU性能で約10倍、通信速度で約30倍、しかも価格は約半分になったといい、今後5年間でCPU性能および通信速度は10倍程度上昇する見通しを明らかにした。

 日本のコンテンツについては、「ソフトウェアの輸出入を見てみると、輸出が57億円であるのに対し、輸入は3935億円と輸入超過状態になっています。確かに日本のコンテンツは見劣りするが、輸入はワープロソフトやプレゼンテーションソフトなどのミドルウェアが多く、ゲームソフトやアニメなど真のコンテンツと呼べるものには強みがある。悲観はしていません」と語った。

 講演の合間には、テレビ朝日でおなじみの旅番組をCD-ROM化した『世界の車窓から』やイルカのキャラクター“フィンフィン”が人気の『TEO』など、同社コンテンツのデモが行なわれた。関澤氏は、「個人の資質に合わせた通信教育、ビデオカメラを各地に設置して行きたい場所をユーザーが実際に眺められる旅行用コンテンツなども大いにビジネスの可能性がある」とアイデアを披露した。最後に、ハイパーメディアの将来に触れ、「インフラのコストは必ず下がる。ただし、ビル・ゲイツがいつも言うように、無料になることはないでしょう」と冗談交じりにしめくくった。

『電脳博物館』
坂村健・東京大学総合研究博物館教授

 TRONの提唱者、坂村氏が2番バッター。昨年1月に開催した特別展“デジタルミュージアム(http://www.um.u-tokyo.ac.jp/)”の内容を中心として、博物館のデジタル化に焦点が当てられた。

 「デジタルミュージアムは、従来の博物館と場所や時間にとらわれないバーチャル博物館が融合したものです。たんに画面で見るだけならばビデオで十分ですから、われわれの研究も、どのような付加価値を持たせるかということなのです」

 デジタルミュージアムの様子が放映された。なるほど、今までの博物館にはない展示物が見受けられる。工業製品の試作品を作る装置によって制作された、銅鐸のレプリカ。実際に手で触れられるほか、銅鐸を鹿の骨で打った(当時そうしていたらしい)時の音も聞くことができる。また、焼失した法隆寺金堂の内部をコンピューターの画面上に3D表示し、ゲーム機のコントローラーで探索できるシステム。MUD(Multi-User Dungeon)技術が駆使され、コンピューター内の仮想空間の中に、複数の人間がそれぞれの端末を介して入り込むことができる。その他、古文書の全ページが眺められるディスプレーなどなど。

 また、展示品には電子タグがつけられており、携帯端末を近づけると文字や音声によって展示品の情報が得られるなど、展示方法自体も新鮮。坂村氏によると、コンピューターを用いるだけではなく、実際の展示物の持つ実物感が大切なのだという。

 「世界中の博物館や図書館を回りましたが、イギリスの自然史博物館には、実物大の鯨の骨格なんかが展示されている。原始的ですが、やっぱりそういうものに感動するんですね。それでわれわれも、東京ドームのようなエアドームを作り、実験的にミュージアムを開設したりしています。広さは500平米くらいですが、空気を入れると30分くらいで完成し、片付けも簡単。大きいものを展示するためには柱のいらない構造が必要なため、エアドームに注目したのです」

 バーチャルな世界を実世界とどのようにリンクさせるかが、坂村氏の長年のテーマ。また、マルチメディアは最終的にはネットワーク化するといい、知識を流通させる新しい技術を模索したいと締めくくった。

『ECとSOHO/MO』
矢田光治・(株)PIE社長

 最後の講演は、同コンソーシアム事務局長の矢田氏が務めた。ちなみに、ECはElectric Commerceの略、SOHO、MOはそれぞれSmall Office Home OfficeとMobile Officeの略。

 矢田氏は、ECの需要はコンピューター、旅行、エンターテインメントが中心となると見ており、ECが新しい市場を活性化することに期待を寄せている。また、インフラとしてケーブルテレビの回線に注目している。「昨年には、ケーブルモデムの標準規格“MCNS”も制定され、各社の製品がようやく互換性を持った。トラフィック管理やノイズの問題は残っているが、低価格だし、今年のテーマはケーブルインターネットビジネスです」。

 SOHOやMOは個人で主体的なビジネスを始められるシステムとして注目されており、矢田氏は「生産性も向上できるし、ビジネスパートナーとの連携により、企業のような活動も展開できるのが魅力」と話す。SOHOは身ひとつで仕事をこなせるのに対し、MOはプリンターやプロジェクターなどの機器も搭載できる。MOは住宅事情とも関連しており、PCメーカーや自動車メーカーも実験を開始しているという。

 これからのコンピューターは、個人個人にカスタマイズされ、なおかつ画像や文書のフォーマットなど意識せずに使えることが必須だとし、SOHOやMOは異業種間交流、パートナーとのプロジェクトや情報交換がしやすくなることにより、さらに発展するだろうとの見解を示した。(報道局 浅野広明)

http://www.hicom.co.jp/

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