Mobile Word Congressは、携帯電話関連のイベントだが、端末以外に重要なのは、携帯ネットワーク側の設備だ。今回は、このインフラ関係を見ていくことにしよう。
スムーズに移行しにくいLTE
トレンドということころからいえば、大きな動きは、LTE(Long Term Revolution)だ。これは、3.9Gともいわれている。最初のW-CDMAやCDMA2000が3Gであり、HSDPAなどが3.5Gとなる。3.9Gとは、4Gの前であり、3.5Gよりも高速という意味になる。日本やドイツでは、すでに実際に基地局などを作って検証実験が開始されており、会場でもNortel社がドイツでT-Mobileが行っているテストの模様を展示していた。
しかし、3.9Gといいつつも、現在のCDMA2000やW-CDMAとは直接の関係がなく、通信方式としては別のものになる。逆に言うと、LTEになると、現在の方式に関係なく、ドコモもKDDIも同じ方式を使うことになる。ただし、既存のシステムがあり、当初は、デュアルモード端末になることを考えると、方式が一緒だからといって、すぐに電話機がそのまま使えるようになるわけでもない。また、iモードなどの上位サービスの問題もある。
LTEでは、携帯電話のネットワークはすべてIPとなる。音声通信、データ通信という区別はなく、すべてパケット通信であり、音声通話を行うには、VoIP(IP電話)技術を使うしかない。3Gを採用している事業者は、ほぼIPベースのネットワークに移行しつつあるという。
まず、通信事業者の頭を悩ましているのは、LTEへの移行にどういうステップをとるかである。GSMからいきなりLTEというステップもあるし、3.5Gを飛ばすという手もある。また、方式が違うため、3/3.5Gのサービスとは別にデータ通信サービスにするという方法もある。この方法でも、データ通信が集中する都市部のみサービスし、それ以外は、3.5Gという構成もありえる。
具体的な移行も機器メーカー各社によって違いがある。既存の機器のアップグレードでLTEに対応させる場合もあれば、LTE専用だが、小型化するなどして、既存の基地局に併設が可能とする場合もある。
通信方式が違うため、大きく変化するのは、基地局側だ。LTEに対応した基地局機器(Node B)をevolutional Node B(略してeNB)と言う。内部ネットワークはIP化しているので、LTEでまず、必要になるのはこのeNBなのである。もちろん、内部ネットワークもLTEへの対応が必要だが、こちらは、プロトコルの問題で、ソフトウェアなどで対応しやすい。しかし、無線部分は、通信方式が違うためにLTE対応のものが必要となる。
データ通信は、年々、利用量が増えており、また、競争などからコストも厳しい。最終的には、どこでも定額制が導入されることを考えるとコストを切り詰める必要がある。
見切り発車で搭載されるSON
そこに登場したのがSelf Organized Network(SON)という考え方だ。Node Bの設置では、細かい調整や設定が必要となる。これらを自動化しようというのがSONの考え方だ。乱暴な言い方をするとTCP/IPのDHCPのようなものだ。
これにも大きく2つの方式がある。1つは、サーバーをおいて、そこで集中して管理する方法と、個々の機器に機能を分散して、全体で自動化を行なう方法だ。前者には集中管理ができるメリットがあるが、サーバーが必要というデメリットもある。後者はその逆となる。
SONについては、3GPP(W-CDMAの規格提案団体)などで規格化のための討議が始まったようだが、まだ、どこまでを規格化するのかなどの線引きの最中だという。しかし、早ければ2010年にも本格導入が始まるため、各社とも、見切り発車でSON機能を搭載するようだ。
SONを使うと、eNBの設置やメンテナンスのコストを抑えることが可能で、設置から稼働までの時間を短縮できる。LTEへの移行を考えるとSONは必須ともいえる。しかし、問題は、各社でSONの方式が違っており、規格もまだ成立していないことだ。となると、通信事業者が、複数メーカーからeNBを購入すると、SON方式の違いにより、別々に管理しなければならなくなってしまう。
こうしたNode Bを製造するメーカーとしては、Nokia Siemens Networks、Nortel、Alcatel-Lucent、Erricsonなど。日本国内では、日立、NEC、富士通、パナソニックなどがある。日本メーカーは、基本的にはドコモやKDDIへ機器を納入しているのだが、国内向けのみではコストを下げることができない。そこで、海外で広く事業を行う企業との提携が流行だ。海外メーカーからみれば、日本のメーカーと組むことで、要求が厳しい日本の通信事業者へ機器を売り込むことができるようになるし、日本企業は、全世界向けに販売されることでコストが低くなった機器を利用できる。