精神科医 吉田 眞のヤンデレ診断
本特集で登場したキャラクターたちのヤンデレ度(5段階)を、前編でインタビューに答えてくれたサイコドクター吉田 眞氏に分析してもらった。彼女たちの行動は、精神学的にはどのように分類されるのだろうか?
「SHUFFLE!」 芙蓉 楓の場合
- 同居している幼なじみが、自分のよき理解者である先輩と付き合い始めて、そのデートの帰りを待つ際に料理をしているが、かき回している鍋の中身が空っぽという状態……。
- その幼なじみと先輩がデートから帰還していた姿にキレて、「死ね!」と暴言を吐いて食ってかかるようになる。
吉田の分析
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ヤンデレ度 ☆☆
神経症圏、特に解離性障害(ヒステリー)の症状。混乱し現実検討能力が落ち、無意識下での願望が満たされている状態です。 - ヤンデレ度 ☆
人格障害圏の反応。本来なら諦めなければいけない現実を許せず、他者を非難してバランスをとろうとする状態。子供っぽく人生経験が乏しいだけで、病み方としては大したことはないでしょう。
「School Days」 言葉&世界の場合
桂 言葉
- 自分にできたはじめての友達に、彼氏を奪われるが、それを認めることが出来ずに、着信拒否になっているにもかかわらずケータイでメールを打ち続ける。
- クリスマスイブの夜、着信拒否で繋がっていないにもかかわらず、ケータイで相手に向かって電話している。
- その死体の首を切り取り、バッグに入れて持ち運んで生きているものとして扱っている。世界の妊娠を疑っていたので、殺して腹を切り開いて赤ん坊を確認した。生首を持ったまま、クルーザーに乗って旅立つ言葉「やっと……二人きりになれましたね……」等々の猟奇的行為。
吉田の分析
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ヤンデレ度 ☆☆
神経症圏の反応。先の楓と同じ状態。 -
ヤンデレ度 ☆☆☆☆
パラノイア系の反応。相手の話し声が聞こえるくらいになると相当な精神異常であると言えますね。早めに隔離し、様々な葛藤から本人を引き離すべきです。 - ヤンデレ度 ☆☆☆☆☆☆
発達障害圏のようでもありパラノイア的であり、ヒステリー的でもあり、なかなか分析が難しい行動群。通常では理解できないこうした行為は、殺人衝動と性欲の複雑な関連があるように思います。「言葉は元々、猟奇的殺人願望を持つ異常者であった」ということに帰結される、特別なケースではないでしょうか。
西園寺世界
三角関係のもつれのうえで、自分が妊娠した上で捨てられてしまったので、思わずメールで「さよなら」と送信した直後に包丁でめった刺しにした。
吉田の分析
ヤンデレ度 ☆☆☆☆☆
「さよなら」が自分が旅に出るようなニュアンスで送信したものであれば、現実と思考が矛盾した、パラノイア的な反応だと言えます。元から相手を殺すつもりでの「さよなら」であれば、理解できるし計画的な怨恨殺人となるので、ヤンデレ度は☆☆☆くらいですね。
「未来日記」 我妻由乃の場合
- 主人公・雪輝のことを想って、ずっと彼の行動をケータイの日記につけている。
- 雪輝を助けるために、ためらいなく斧で寝転がっている人を脳天をかち割る。
- 雪輝が新たに友達を作って一緒に遊んでいる姿をナチュラルに見ながら、嫉妬して公園の隅で無数に「しね」と書き続ける。
- 雪輝とその友達が野犬に襲われたとき、友達を囮にして、雪輝と一緒に逃げる。
吉田の分析
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ヤンデレ度 ☆☆
ファン心理、ストーカー的欲求は、割と誰もが持っている衝動です。自分の時間を捨ててまで熱心に相手を観察する心理は、発達障害圏に強く表れます。人格障害圏タイプの人の行動チェックは浮気チェックが主であり、相手を責めるための材料として利用します。この場合のヤンデレ度は☆かな。 -
ヤンデレ度 ☆☆☆
発達障害圏の特徴は、「自分こそがルールである」という確信を持っていることです。自分の信じたことを実行するために、彼らは時に法律やルールを平気で乗り越えてしまいがちですね。 -
ヤンデレ度 ☆
人格障害圏の反応。落書きという無害な方法で破壊衝動を満たしているところが弱いかな。ただ、びっしりと書き込みがしてあるなら、病的エネルギーが高いので、☆☆でも良いかもしれません。 - ヤンデレ度 ゼロ
これはアリでしょう。正常です。
「君が望む永遠」 穂村愛美の場合
- 学生時代から片思いしていた男と職場で再会し、好きな気持ちが再燃。飲み過ぎた相手がゲロしても、それを食べてまで相手に好きな気持ちを訴える。
- その男が自分に振り向いてくれないので、階段から突き落として鎖で部屋に縛って看病しつづける。逃げるとお仕置きを加える。
吉田の分析
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ヤンデレ度 ☆☆
マゾ的行為が好きか嫌いかは、生来の性質と言えそうです。人格障害圏タイプはプライドが高いので、あまりこういうことは行なわない傾向にあります。神経症圏の「屈辱に耐える病み方」が、この行為に繋がっているように思いますね。 -
ヤンデレ度 ☆☆☆☆
発達障害圏の「私が世話してあげる」という気持ちか、パラノイア圏の「私とあなたは一体」という思い込みの、どちらかの発想から実行されたものと考えられます。異常ではありますが、思考過程としては割とシンプルだと言えるでしょう。
(次のページへ続く)