メーカーの絵作りは、必要なのか
── 現場では基本的にRAWで現像したりはせずJPEGで撮って出しでしょう。
草野 JPEGで吐き出す画像はキヤノンのほうがいいように思うよ。
── ニコンは昔からナチュラルにノイズを残す方向だったけど、キヤノンはノイズリダクションを利かせて積極的にノイズを減らしていった。トリミングしていったときノイズが目立たなくていいしね。このあたりも受けた理由のひとつじゃないかなと。色の抜けもいいしね。
草野 D3の「ピクチャーコントロール」(画質調整機能)には、良い面と悪い面があるよね。基本的に画像には装飾してほしくない。ニュートラルとビビッド、スタンダードといった設定があるけど、スタンダードという割りには派手なんだよね。ニュートラルで彩度を1つ上げるか、スタンダードで彩度を1つ下げて撮るんだけど、派手な部分がより派手に出て、そうでない部分はあまり変わらない。横浜F・マリノスのユニフォームで言うと、まずソックスの赤があまり良くない。荒れてドットが浮いてくる。逆に青系は上がってこないでマゼンタ方向に転ぶ。
── 色相をいじれればいいんだろうけど、Capture NXでやっているような処理すべてをピクチャーコントロールではできないからね。
草野 D3を使い始めるまでは「プロ&ハイアマチュア向けの難しいカメラなんだろうな」と思っていたけど、誰でも使えるカメラを目指している感じがする。D2HsやD2xはその点、ニュートラルで使い込むだけ味が出る。D3は入門者にも振っている印象。個人的にはメーカーの絵作りは極力避けてストレートに出てくる設定があるといいなと思う。例えば、トーンカーブの調整なんかはカメラ内で自分でやりたい。
── ほかに不都合みたいなものはありますか。
草野 露出に関しては中間調が明るい方に寄っていて、シャドー側が少ない気がする。微妙な露出合わせに苦労するんだよね。明るい部分が持ち上がってるせいか、高感度でもパッと見、明るく写っている感じがするんだけど、実際にはトーンカーブで調整しているだけでシャドー部の階調が足りない。(ISO 6400で撮った場合)感覚的なラチチュードは5段ぐらいかな。
── シャドー部分の階調が圧縮されているのかな。トーンカーブで言うと45度の直線じゃなくて、かなりS字型になっているというか。ニコンはD3のハイライト側に自信があるのかもね。
草野 でもそれが困る。デーゲームの場合、光が直接当たる部分とスタンドの影が落ちる部分の明暗さがすごく激しい。明るい部分のハイライトを残すために絞りたいけど、そうするとシャドー側がつぶれちゃう。シャドー側に合わせるとユニフォームの白い部分が飛んじゃう。ピクチャーコントロールの情報はきちんと公開してほしい。ただスタンダードと書くだけじゃなくて、どういうパラメーターがどう変わるのかを。
最近はヒストグラム見ながらいろいろ調整していて、この形なら大丈夫だろうって分かるようになってきた。
── シャープネスを上げるとかっちりした感じに見えるけど、高感度で撮るとノイズが浮いてきちゃってダメなのが分かる。
草野 RAWなら、あとで補正できるけど、スタジアムで撮影する場合は試合終了後すぐウェブページに写真をアップするから基本JPEG。でも(この機種に限らず)JPEGだと、やっぱりボンヤリしちゃうんだよ。解像感も出ないし。