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誰でも使える防災シミュレータ

コマを動かすだけで避難経路がわかる!!

2007年05月23日 00時00分更新

文● 中西祥智(編集部) 写真●吉田 武 

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月刊アスキー 2007年4月号掲載記事

三重県尾鷲市の地震シミュレーション

上の例は、群馬大学片田敏孝教授と共同で、三重県尾鷲市をスマトラ地震級の津波が襲ったと想定してシミュレーションしたものだ。

防災シミュレータ

パッドだけであらゆる設定が可能:自宅の家族構成や、拡声器で避難を指示するタイミングなど、すべての設定はパッドを置く、パッド上のボタンを押す、パッドを回すといった操作で行える。このタンジブルUI は、マサチューセッツ工科大学メディアラボの石井 裕教授と共同で開発した。

防災シミュレータ

アナタは無事に避難できるか?: 青い自宅からは青い旗の立つ避難所へ、オレンジ色の自宅からはオレンジ色の避難所へ避難する設定。避難経路が長く、また避難開始の遅かった青色は、押し寄せる大津波からの避難に失敗した。

 防災シミュレータを「楽しい」と言ってしまうのは不適切かもしれない。けれども、NTTコムウェアが開発した「タンジブル防災シミュレータ」は、触れば触るほど楽しさを感じてしまう。

 このシミュレータでは、避難所や広報車の設置は「パッド」と呼ばれるコマを置くだけ。 避難所の収容人数や拡声器の到達範囲等も、オーディオのボリュームを調節するように、パッドを回して設定できる。このような、何らかの実体があり、触れて知覚し得るインターフェイスを「タンジブル・インターフェイス」という。手に持つパッドの動きがプロジェクタの投影する画面内にリアルタイムに反映され、まるで画面内の世界と実世界が完全に直結しているように感じられる。

 防災シミュレータというと、官公庁の防災担当者のものというイメージが強い。もちろんタンジブル防災シミュレータもそういった需要を狙っており、防災担当者はどこにどのくらいの収容人数の避難所を設置すればいいのか、災害発生後いつまでに防災無線や広報車による避難情報を提供すればいいのか等を検証できる。

 だが、タンジブル防災シミュレータではさらに、個人が自宅や家族構成を設定して、自分はいつ、どこへ避難すればよいのかを調べられる。NTTコムウェアの成田篤信氏は、「タンジブル・インターフェイスで、直感的に誰でも使える。専門家だけでなく、一般の人々に実際に体験してもらうことによる防災意識の啓蒙効果は大きい」と強調する。

 タンジブル・インターフェイス自体は、ネットワークやビジネスフローを設計するソリューションとして、すでに導入事例がある。防災シミュレータとしての導入はこれから。

 とかく忘れがちな災害の怖さを知り、その対策を考えてもらうために、多くの人々がこのシミュレータに触れられる環境が整えられることを切望したい。

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