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1600km離れた沖縄にカルビーが災害対策サイトを開設

データをリアルタイムでバックアップ 首都圏被災時の事業停止リスクを最小化

2007年05月23日 00時00分更新

文● 小林誠司(編集部)

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月刊アスキー 2007年2月号掲載記事

シーサーが出入口のICカードセキュリティーシステム

沖縄の守り神シーサーが出入口のICカードセキュリティーシステムをさらに強固に守っている(?)

 スナック菓子製造大手のカルビーは、去る11月28日、沖縄県浦添市にあるデータセンター(沖縄電力の子会社、ファーストライディングテクノロジー(FRT)が運営)に、ディザスタリカバリサイト(災害時バックアップセンター)を開設し、稼働を開始した。

 カルビーは首都圏(川崎市)のデータセンターで基幹システムを運用しているが、「システムが中央集約型へ移行し、トラブルが起こった場合は全体にオペレーションが止まってしまうリスクを抱えていた」(カルビー 中田康雄社長)という。バックアップセンターのシステム構築は日本ヒューレットパッカードが担当し、平常時にはHP StorageWorks XP10000のストレージ筐体間ミラーにより、川崎市の基幹システムのデータをリアルタイムで1600km離れた沖縄に複製する。地震などで被災した際は、業務上重要なSAP R/3、EDI、メール環境(生産~出荷、受発注、入金業務、顧客・社内コミュニケーション)を優先して立ち上げ、業務停止のリスクを最小化して事業継続性を確保している。被災時には4時間以内に、被災30分前の状態でシステムを立ち上げられるという。

カルビーのバックアップサーバ

FRT社のデータセンター。写真上は同センターに設置されたカルビーのバックアップサーバ。

 沖縄県にセンターを置くメリットは、ひとつには首都圏との同時被災の確率がきわめて低いことが上げられる。加えて、沖縄県では情報産業支援制度が充実し、インフラが整備されていることが大きい。カルビーの事例でも、首都圏と沖縄を結ぶ100Mbpsの専用回線の基幹部分は沖縄県が無料で提供している(首都圏内などのアクセスポイントまでは事業者が負担)。また、「経済的なメリット、効率性という面でも、全国水準からみるとまだまだ低コストで運営ができる」(前出 中田氏)こともポイントといえるだろう。こうしたIT業務のアウトソーシングの場合、蕫フラット化﨟した現在では競合先は海外委託ということになろう。しかし、言葉の壁がなく、首都圏との航空便が日に19往復もある、距離的に遠くて近い沖縄は安心感が高い。

 カルビーでは、営業活動を支援するバックオフィスの機能を2006年1月よりFRTで稼働させているが、今後沖縄に、受注センターや経理、総務といった業務を移管することや、中国・アジア圏への事業展開の基盤とすることも視野にいれている。FRT社のクライアントは、外為どっとコムなどの金融系やIT関連企業が主で、カルビーのような製造業は初めてという。沖縄県でもモデルケースとして、こうした事例に今後への期待を寄せている。地域活性化を目指して、各自治体のIT企業誘致が活発に行われているが、その中でも沖縄県は特に注目だ。

FRT社の電源設備

沖縄電力と同じ敷地内にあるFRT社として特徴的なのは電源設備で、写真下の非常用発電機は屋内に設置され、センター内の電力をすべてまかなえる

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