ChatGPTやClaude、Geminiといった主要AIを使えば、簡単なアプリなら数分でしっかり動作するものをつくってくれる。
ちょっとした作業を効率化するのに非常に助かるのだが、問題は、悪用するハードルも大幅に下がっていることだ。この結果、詐欺の手口も、AIの進化によって急速に巧妙化が進んでいる。
Claudeを開発・提供しているアンソロピック社が2026年9月、自社のClaudeが悪用された事例を集め、レポートとして公表している。
たとえば、AIをフル活用した、詐欺マッチングアプリの事例だ。マッチングアプリは、容姿の画像や記載されたプロフィールから、魅力的だと思う人物を選び、チャットなどでコミュニケーションができる。しかし、チャットで会話をしている彼女/彼は実はAIだった。
2026年4月にアンソロピック社が確認した事案では、ビデオ通話などを除き、AIが詐欺アプリのサービスの運営に必要な業務の多くを担当していた。
マッチングした相手はAIだった
大手マッチングアプリTinderは、利用者の画像が次々に表示され、興味がある人については右にスワイプ(あり)し、ない人は左にスワイプする(なし)。ユーザー同士がいずれも右にスワイプするとマッチングが成立し、チャットなどでコミュニケーションを取ることができる。このTinderのUIは世界中でバズったのだが、詐欺アプリもTinderに似たUIを採用していたようだ。
この詐欺アプリの運営元は、画像生成に強いAIを使って、プロフィール画像を生成する。この詐欺アプリでは、4700以上のAIペルソナが用意されたという。「あり」をスワイプしたユーザーは、AIペルソナとマッチングが成立する。ユーザーとAIペルソナの会話は、Claudeが担当していたようだ。詐欺グループはAIに対して、自動化されていることを絶対に明かさない、ビデオ通話や写真の要求はかわす、決められた会話の段階を順に進むよう指示していた。
送信するメッセージの量や、マッチングの回数が増えると、アプリ内のコインを購入することになる。マッチングした相手ともっと話したいと思ってコインを買ったユーザーは、実はAIと会話していたということになる。
この詐欺アプリの運営元には、人間の従業員もいて、AIが提示した3種類のメッセージから、1つを選択するのが主な仕事だったようだ。また、SNSでフォローを返すとか、ビデオ通話で話すといった自動化が困難な業務も担当していた。
この詐欺アプリは、スワイプ画面に表示される候補の75%がAIのペルソナで、残る25%がリアルの人間だったという。
AIで声を女性に
台湾の英文メディア、タイペイ・タイムズによれば、AIを使った音声変換をフル活用した事案で、詐欺グループ57人が2026年9月2日に起訴された。
このグループは女性22人の声をAIに学習させ、既存のマッチングアプリでユーザーを待つ。ユーザーとチャットや音声通話でコミュニケーションを重ねるのだが、詐欺グループの会話の担当者の声を、AIで女性の声に変換していた。
ユーザーとある程度親密になったところで、サプリやモバイルバッテリーといった安価な商品を買ってほしいとねだる。これに成功すると、高級ドライヤーやスマホ、生活費や医療費の金銭的な援助と段階的に要求を上げていく。この詐欺グループは2022年から稼働し、2万人を超える被害者から9億台湾ドル(約44億円)を騙し取った。押収品にはディープフェイクを生成するソフトを搭載するPC67台が含まれていた。
警察から電話がかかってきた
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