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Mr.ウォーカー玉置泰紀が厳選! おすすめスポット/アイテムベスト5 第25回

【決定版・寛永行幸四百年祭記念能でワクワクした5つのポイント】金剛流×観世流、まさかの初共演! リニューアル金剛能楽堂に響いた”400年後の祝言”

2026年09月10日 18時00分更新

文● 玉置泰紀(元エリアLOVEウォーカー総編集長、一般社団法人メタ観光推進機構理事)

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寛永行幸四百年祭記念能、ワクワクしたポイントベスト3

第3位:【知の補助線・ロゴに宿る意志】近衛家当主と総合プロデューサー・濱崎加奈子氏によるクロストーク

 新作能の前後には、寛永行幸四百年祭実行委員会の総合プロデューサーの濱崎加奈子氏と、近衛家当主・近衞忠大氏によるクロストークが繰り広げられた。

 トークの中で興味深かったのが、近衛氏が担当したロゴのデザインに込められた物語。戦国の世にピリオドを打った平和の祭典・寛永行幸のコーディネーターであった御先祖・近衛信尋の足跡に触れ、当時への想いを馳せながら現代に表現する作業は大変であるとともに、とても楽しいものだったと近衞氏は振り返る。

 作成されたロゴは「御所と二条城が三度ずれながら重なり合うかたち」をモチーフにしているが、近衛氏によれば、二条城は北を指す磁針の偏角によって御所とは「3度」のズレが生じていたという。

 さらに、ロゴの「寛永行幸」の文字は近衛信尋の筆跡(陽明文庫蔵『寛永三年行幸日記』)から取られており、「立場や考え方が相容れずとも、文化を通じてお互いをリスペクトし合える関係性を築くことができる」という強いメッセージが込められている。

 立場や基準の違いを乗り越える「3度のズレ」のなかにこそ豊かな共生があるという現代的な示唆に満ちた、極めてリッチで聴き応えのある対談となった。

近衛家当主・近衞忠大氏(写真左)と寛永行幸四百年祭実行委員会の総合プロデューサーの濱崎加奈子氏(写真右)のクロストーク。提供:寛永行幸四百年祭実行委員会

第2位:【400年目の再演】祝言「猩々乱」双之舞

 休憩を挟んで上演された祝言「猩々乱」は、寛永行幸の際に後水尾天皇と徳川家光が二条城で実際に鑑賞した演目そのもの。今回は猩々を金剛流の金剛龍謹氏と観世流の林喜右衛門氏の2人が勤める「双之舞」形式で、新作能に続いて再びこのコンビが舞台に立った。

 400年前に天皇と将軍が並んで観た能を、400年後の現代に、しかも異なる流派の2人が舞う——歴史の反復と更新が同時に起きる、この日いちばんの”胸熱”の瞬間だった。

寛永行幸の際に後水尾天皇と徳川家光が二条城で実際に鑑賞した演目、祝言「猩々乱」。提供:寛永行幸四百年祭実行委員会


第1位:【最大の事件】金剛流と観世流、現代能楽史上初の合同新作能

 新作能「寛永行幸」の主役を務めたのは、後水尾天皇役の金剛龍謹氏(金剛流若宗家)と、徳川家光役の林喜右衛門氏(京観世五軒家のひとつ・林家十四世、観世流シテ方)。宗家クラスの立場にある2人が、流派の垣根を越えて同じ舞台でシテを共有するのは能楽史においても極めて稀な機会となる。

 物語は、徳川秀忠・家光父子が二年の歳月をかけて二条城を大規模に整備し、後水尾天皇を迎え入れる場面から幕を開ける。黄金の器や献上品の数々、そして能楽師や名人たちによる五日間の華麗な饗応が繰り広げられる。

 三日目には天皇の長寿と国の繁栄が祈られ、最終日には天皇から酒杯が授けられる。その杯は、朝廷と幕府が固く結ばれた証であり、東の空に紫の雲がたなびき、音羽の滝から青龍が天へ昇る。

 さらに天守から天皇が京都を見渡すと、神泉苑から金の龍神が現れ、二柱の龍神が日本の大地を守り、天皇の御代と公武和合を未来まで守り続けることを誓うかのように空を舞う。

 その光景に天皇は深く感動し、空は雲ひとつない晴天となり、秀忠や家光もまた都の空を仰いで平和の到来を喜び合う。終幕では青龍・金龍がそれぞれの棲家へと出現し、公武和合と天下泰平を寿ぐ幻想的な世界が描かれる。

 天皇と将軍の出会いを描く新作能を流派の異なる2人が演じる姿は、寛永行幸そのものが持つ「異なる文化圏の出会いと共生」のメッセージを現代に美しく蘇らせる、これ以上ないキャスティングだった。

新作能「寛永行幸」の主役を務めたのは、後水尾天皇役の金剛龍謹氏(金剛流若宗家)と、徳川家光役の林喜右衛門氏(京観世五軒家のひとつ・林家十四世、観世流シテ方)。提供:寛永行幸四百年祭実行委員会

12月の行幸再現イベントが京都で実現

 寛永行幸四百年祭のメインイベントとして、400年前の豪華絢爛な行列を再現する「寛永行幸行列再現イベント」が2026年12月6日(日)に京都で開催される。

 行列は(1)後水尾天皇行列、(2)将軍家光行列、(3)中宮和子行列の3つのグループで構成され、全体で約330人規模(牛車2台、馬15頭)となる予定。

 当日は建礼門前を午後0時30分頃に出発し、烏丸通・下長者町通・東堀川通を経由して午後3時頃に二条城東大手門へ到着する予定となっている。また、当時の『二条城行幸図屏風』に描かれた観衆の様子に倣い、観覧席にて主催者側が用意する装束を身に付けて時代絵巻の一部となれる「装束観覧席」も京都御苑内に用意される。

■寛永行幸四百年祭 行幸再現イベント

名称:寛永行幸四百年祭 行幸行列再現イベント

開催日:2026年12月6日(日)

開催時間:12:30頃出発 〜 15:00頃到着

歴史的背景:寛永3年(1626年)、徳川幕府が後水尾天皇を二条城に迎え、5日間にわたり盛大にもてなした江戸時代最大級の行事であり、公武融和と平和の到来を世に知らしめた一大イベント

京都・寛永をつなぐ注目の13展覧会

 寛永行幸四百年祭を記念し、京都市内および周辺のミュージアムでは「本物」に触れられる多彩な展覧会が順次開催される。

泉屋博古館:寛永行幸四百年記念 特別展「寛永行幸と花の都の文化びと」(9月5日〜10月18日)

住所:京都市左京区鹿ケ谷宮ノ前町24

公式サイト:https://sen-oku.or.jp/kyoto/

内容:二条城行幸とそれを契機に花開いた「寛永文化」を徳川和子(東福門院)の視点からたどる。

京都文化博物館:寛永行幸四百年祭開催記念 特別展「寛永 太平がはぐくむ美」(9月19日〜11月15日)

住所:京都市中京区三条高倉

公式サイト:https://www.bunpaku.or.jp/

内容:徳川秀忠・家光が後水尾天皇を二条城に迎えた寛永行幸を軸に、江戸時代初期に花開いた京都文化の粋を紹介する。

元離宮二条城内 障壁画展示収蔵館:令和8年度原画公開 シリーズ寛永行幸400年(夏・秋・冬期)

住所:京都市中京区二条城町541

公式サイト:https://nijo-jocastle.city.kyoto.lg.jp/

内容:行幸のために新たに描かれた、天皇や将軍、公家らが行幸時に使用した部屋の壁画を間近で公開する。

いけばな資料館:特集展示「寛永文化と立花」(11月13日〜2027年10月末予定)

住所:京都市中京区六角通東洞院西入堂之前町248

公式サイト:https://www.ikenobo.jp/rokkakudo/highlight/ikebana.html

内容:池坊専(二代)によって寛永年間大成された立花について、当時の絵図を中心に展示。

相国寺承天閣美術館:企画展「後水尾院の京」(期5月31日〜7月26日、期8月2日〜9月27日)

住所:京都市上京区今出川通烏丸東入

公式サイト:https://www.shokoku-ji.jp/museum/

内容:寛永文化の主導者・後水尾院ゆかりの寺宝の数々を一堂に展示。

樂美術館:樂歴代 特別展「菊花繚乱」(9月1日〜12月24日)

住所:京都市上京区小路通一条下る

公式サイト:https://www.raku-yaki.or.jp/

内容:時代によって変わる菊をモチーフにした樂歴代の作品を鑑賞できる。

野村美術館:寛永時代の茶の湯(前期9月5日〜10月18日、後期10月24日〜12月6日)

住所:京都市左京区南禅寺下河原町61

公式サイト:https://nomura-museum.or.jp/

内容:寛永文化のサロンにおける茶の湯を中心に、天皇から町民までの動向を紹介。

京都府立 京都学・歴彩館:特別展「洛外の寛永行幸 家光の淀、尾張・紀伊藩の伏見」(9月12日〜11月8日)

住所:京都市左京区下鴨半木町1-29

公式サイト:https://rekisaikan.jp/

内容:上洛の大動脈・東海道や、将軍家光らの滞在した淀・伏見に焦点を当てた展覧会。

茶道資料館:特別展「玄々斎」—裏千家十一代家元 精中宗室百五十回忌記念—(仮)(前期9月29日〜11月1日、後期11月3日〜12月6日)

住所:京都市上京区堀川通寺之内上る

公式サイト:https://www.urasenke.or.jp/textc/gallery/

内容:裏千家十一代家元・玄々斎の足跡をたどり、その功績を紹介。

泉涌寺宝物館 心照殿:江戸初期の公武と泉涌寺(9月29日〜2027年1月24日)

住所:京都市東山区泉涌寺山内町27

公式サイト:https://mitera.org/

内容:後水尾天皇をはじめ公武の外護を受けた寺宝や江戸初期の寄進された什物を紹介。

有斐斎弘道館:「京菓子展2026—寛永行幸絵巻」(10月1日〜10月15日)

住所:京都市上京区上長者町通新町東入元土御門町524-1

公式サイト:https://kyogashi.jp/

内容:「寛永行幸巻」を題材にした公募作品から選りすぐりを展示。

八幡市立松花堂庭園・美術館:寛永行幸四百年記念 松花堂美術館 令和8年特別展「八幡で感じる寛永文化 松花堂昭乗の書画、茶の湯」(前期10月17日〜11月8日、後期11月10日〜12月6日)

住所:京都府八幡市八幡女郎花43-1

公式サイト:https://shokado-garden-art-museum.jp/

内容:松花堂昭乗の自筆「松花堂茶会記」をはじめ、ゆかりの書画を紹介。

京都市歴史資料館:特別展「二条城と江戸開府 〜慶長から寛永の京の城〜」(10月31日〜2027年1月17日)

住所:京都市上京区寺町通丸太町下る松蔭町138-1

公式サイト:https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000003963.html

内容:二条城の成り立ちと京の城の歴史を初公開の古文書や絵巻などから紹介。

編集後記

 400年という時を越えて、先人たちが文化の力で築き上げた平和の精神が、令和の京都に鮮やかによみがえった。

 今回の記念能での貴重な流派を越えた共演や近衛家当主を交えたクロストーク、秋から来年にかけて繰り広げられる多彩な展覧会、そして12月の再現行列を通じて、私たちは過去の歴史を振り返るだけでなく、現代における「文化による結び直し」の重要性を深く実感することになるだろう。

 400年前の京都に思いを馳せながら、いま私たちが生きる時代にどのような文化のバトンを渡せるか、ぜひ確かめてみてほしい。

寛永行幸四百年祭 開催概要・クレジット

主催:寛永行幸四百年祭実行委員会

公式サイトhttps://kaneigyoko400.jp/

総合プロデューサー:濱崎 加奈子

監修・顧問 特別顧問:熊倉 功夫(MIHO MUSEUM館長)

文化監修:近衞 忠大

有職文化監修:山科 言親

礼法監修:小笠原 清基

美術史監修:実方 葉子

行列文化監修:西山 剛

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