中国のECサイトでは6月18日に巨大セールが実施される
中国最大のEC祭りの1つ、618セールが今年も来た。元々は京東(JD.com)の創業記念日に端を発するセールだが、今やアリババ(阿里巴巴)のタオバオ(淘宝)やTmall(天猫)、ピンドゥオドゥオ(拼多多)など主要プラットフォームが総力を挙げて参加する年中行事に成長。
年を重ねるごとにセール期間は前倒しが進み、今年は5月10日頃からプレセールが始まった。そしてこのビッグイベントは、単なる値引き合戦で売上を記録するだけでなく、メーカー各社が新製品や新技術を披露する格好のタイミングでもある。
今年のセールで目立ったのは「AI」を活用した製品
注目はスマートグラスに、文字起こし&翻訳機能付き録音機器
今年の618セールで特に目を引いたのは、やはり「AI」の存在感だろう。AI搭載ハードウェアではスマートグラス、録音デバイスが面白い。スマートグラスでは、音声AIや翻訳に好評の科大訊飛(iFLYTEK)が、音声だけでなく口の動きから正確に音声を拾い翻訳する機器をリリース。新機能への期待からよく売れたという。
RayNeo(雷鳥)からは、1:1の大型センサーを搭載し、2.5K撮影・夜景強化・超広角手ブレ補正に対応するなど、撮影に特化した「V4」が、KANNAN(加南科技)からは、BYDと共同開発した生分解性ポリアミド新素材を採用して25.8gと、とにかく軽量なのが特徴の「K2」がリリースされた。
録音デバイスでは、クレジットカードサイズのMobvoi(出門問問)の「TicNote」や、前述のiFLYTEKの音声のリアルタイム文字起こし、多言語同時通訳、会議議事録作成などをワンストップで提供する「Pokee/Magic/S6」シリーズがある。
会議の質をさらに高めるviaim(未来智能)×iFLYTEKのAI会議イヤホンも評価が高い。録音デバイスではないが、E InkタブレットのHanvon(漢王)がリリースした、生成AIによる要約や翻訳、文章作成補助などのインテリジェント機能を融合させたLLM搭載E Inkタブレット「M6」は意欲作だ。
ECサイトはAI検索を積極導入 自然文から製品を提案してくれる
そんな新製品以上に筆者が衝撃を受けたのは、各ECプラットフォームがAI検索を導入したことだ。
過去の618セールや11月11日のダブルイレブンセールでは、VRゴーグルをかけて仮想店舗を歩き回るメタバースでのショッピングが提案されたり、ARで家具を配置してみる機能が話題になったりしたが、今年のテーマは「対話型AIショッピングアシスタント」。
各ECサイトが自社のLLMを活用し、ユーザーが自然文で「こういうものが欲しい」と伝えれば、AIが最適な商品を提案してくれる仕組みへの取り組みが一気に進んだのだ。
LLMによる検索が導入されたことは、自然な日本語での商品検索も可能になったことを意味する。中国語が一切できなくても、「軽量で持ち運びしやすい、ビジネス向けのバックパックが欲しい」「予算1万円以内でノイキャン付きの良いワイヤレスイヤホンを教えて」「最新SoC搭載でコスパのいいスマホのお買い得モデルを挙げて」と日本語で入力するだけで、AIが候補商品をリストアップしてくれる。
しかもアリババ(阿里巴巴)の「千問(Qiwen)」に至ってはタオバオ(淘宝)への直接リンクまで貼ってくれて、商品画像のサムネイルも出てくるのだ。これは中国語ができない外国人にとっては革命的ですらある。
筆者も最初はたまたま思いつきで「LLMで検索できるようになったということは、外国語による商品検索も行けるのでは?」と日本語で検索したところ、合致する商品が出てきて驚いたわけだが、これは中国向けアプリを入れた「マイ中国用スマホ」でのこと。
他の手持ちのスマホでQiwenを入れても、文章しか返ってこず、タオバオへのリンクもない。これはQiwenのウェブサイトでも同じ挙動だ。利用できるのは中国大陸向けの中国版アプリだけで、スマホの地域設定を「中国大陸」に変更し、中国版アプリストアから千問をインストールしないといけない(アプリを入れてしまえば、地域設定は元に戻しても問題なく動作する)。この一手間はあるものの、それを差し引いても価値があるほど、日本語対話型検索の精度とレスポンスの速さは素晴らしいものだった。
ちなみに検索大手の百度(Baidu)ですら、以前は「検索結果が使い物にならない」とまで酷評されていた中文検索が、自社のLLM「文心一言(Ernie)」を検索エンジンに統合し、使えるサービスに化けた。キーワード検索ではなく、質問形式で入れると、関連性の高い答えを返してくれるケースが増えている。ただし中国での買い物という意味ではタオバオと連携しているQiwenの方が圧倒的によい。
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