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山谷剛史の「アジアIT小話」 第226回

中国ではキャラクタービジネスは超高速回転の新次元に! 生成AI×動画サイト×3Dプリンター×越境ECの魔合体が要因

2026年06月05日 09時00分更新

文● 山谷剛史 編集● ASCII

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ショート動画の配信プラットフォームが新たなブームを作る
三国志の武将がレーザービームで攻撃し合う動画まで

 外国山海経は新しいビジネスの流れを生み出した。このビジネスの特徴は、生成AIを用いるとともに、IPに依存することなく新キャラクターを次々に誕生させて展開する人海戦術が使える点にある。

 生成AIでキャラクター画像を生成し、その画像をもとに短尺動画を量産し、動画プラットフォームでテスト的に公開する。視聴者に刺さって再生数が稼げるようなら、抖音(中国向けTikTok)の人気動画をブーストするアルゴリズムによって拡散が進む。

 中国で影響力があるメディアの新華網(https://www.news.cn/)は、外国山海経をたびたび批判している。そこで紹介されたエピソードの1つにこのようなものがある。

キャラクタービジネス

抖音における「外国山海経」

 小さな子供がウルトラマンなどを視聴した後、プラットフォームが自動的に「ウルトラマンが妊娠」という動画を提案したり、本来戦いとは無縁のアニメを見た後に、元は非暴力的なキャラクターが暴力で立ち向かうといった動画を提案したりしたというものだ。

 中には、三国志の武将がレーザービームを出して攻撃しあう動画のような、中国の古典ベースのありえない生成AI動画も多数あるので、伝統にうるさい中国の人たちが黙ってるはずもない。プラットフォームのアルゴリズムが有害コンテンツの拡散の悪循環を生み出すのに力を貸していると、抖音などのプラットフォームを批判する。

 新華網の批判記事では、ある動画制作会社の元従業員にもインタビューしている。その企業は数百ものアカウントで定番のキャラクターを改変(中国語で「魔改」)した動画を大量に制作して配信。AI技術が発展し普及したおかげで、IP改変動画の制作のハードルは大幅に下がった。

 AIで生成された動画は色彩が鮮やかで、子供たちにとってはより魅力的でもある。「IP改変動画は露出度が高く、よく見られやすいうえに、プラットフォームからのサポートを受けることさえある。注目を集めるために、これらの動画は非常に定型的だ。アニメキャラクターを土台にして、(本来はありえない)恋愛や戦闘シーンを詰め込む。子供たちは判断力が未熟なので、簡単に騙されてしまうのだ」とその従業員は語る。

現代のテクノロジーによってキャラクタービジネスは新次元に
ビジネスの回転は既存モデルと比べて、極めて高速化

 このような具合で動画プラットフォームで生成AIによるキャラクターの人気が出ると、そのキャラクターをモチーフにしたグッズを設計し、3DプリンターやOEM工場を活用して実物商品に落とし込み、ECサイト上に商品が出てくる。

 中国国内にとどまらず、temuに代表される越境EC環境とオンデマンド生産が加わることで、「思いつきのキャラ」が海外でも購入され、数週間もしないうちに世界のどこかの子供部屋に物体として届くというスピード展開が発生する。伝統的なキャラクタービジネスに比べ、試行錯誤の速度も撤退の速度も桁違いに速い。

 「外国山海経」は、この現代の構造が子供の世界とぶつかったときに何が起こるかを、露骨な形で可視化したトリガーだったと言える。AIによる低コストのコンテンツ生成と、動画プラットフォームの視聴数偏重のアルゴリズム、グローバルに張り巡らされた生産・物流ネットワークが結びついたことで、子供たち、または大人も含め、いつしか商業主義で生み出された未知のミームと、そこから派生したグッズに囲まれることになりそうだ。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で、一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」、「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本」(星海社新書)、「中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国」(さくら舎)、「移民時代の異国飯」(星海社新書)などを執筆。最新著作は「異国飯100倍お楽しみマニュアル ご近所で世界に出会う本」(星海社新書、Amazon.co.jpへのリンク

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