サイボウズが語る2024年問題から2年経った建設業界の現状
ナンバーワンDX事例の後藤組に続け 建設業の残業削減を阻む「情報迷子」から脱却するには?
2026年06月02日 12時00分更新
老舗ゼネコン企業のDXへの挑戦は、今や業界全体に広がる
こうしたデータの蓄積に取り組み、その先のデータ活用まで踏み込んでいる企業として、後藤組の笹原尚貴氏が登壇した。同社は山形県の米沢市に拠点を構え、今年、創業100年を迎えた老舗のゼネコン企業である。
後藤組とkintoneの出会いは、2019年にさかのぼる。深刻な人手不足のなか、ベテラン社員の暗黙知を次世代につなぐため、データドリブン経営への転換を決意。まずは、紙やFAX、電話によるアナログなプロセスから脱却し、社内情報をデジタル化すべく、kintoneの導入に踏み切った。
そこからは、後藤茂之社長による強力なリーダーシップのもと、同社のDXは一気に加速する。ITに強くない笹原氏をDX担当に抜擢したのも、kintoneの普及に行き詰まる笹原氏に「課題をよく知る社員自らが、主体的にアプリを作れる仕組み」を構築するよう助言したのも後藤社長だった。
社員が講師を務める勉強会やデータ活用を競うコンペ、DXスキルを磨けば奨励金や賞与アップにつながる認定資格制度なども次々と展開。これらの施策が実を結び、今では社員が作ったkintoneアプリの数は3000個にまで達している。
2022年には、kintoneユーザーの事例イベント「kintone hive」で東北地区の代表に選ばれ、その後のkintone AWARDでその年のナンバーワン事例に輝く。さらには、経済産業省が中堅・中小企業の優良なDX事例を選定する「DXセレクション2025」にてグランプリを受賞。名実ともにDX企業へと生まれ変わった。
kintone AWARDでグランプリを獲得した様子(サイボウズのニュースリリースより)
説明会では、実際に社員の作成したアプリが紹介された。
2024年問題を解決したのが「出退勤システム」だ。かつての労務管理は手入力が基本で、残業時間もまとめて入力する仕組みだったため、規制の上限に達しているかを月末まで把握できなかった。
そこで、有給や残業の申請、出退勤の打刻をすべてkintoneに集約し、残業時間のリアルタイムな可視化を実現。顔認証で打刻できる仕組みも開発し、現場社員の入力負荷を抑える工夫も凝らしている。
現場の働き方を変えたのが、「生コン車トラッキングアプリ」だ。施工の中でも神経を使うコンクリート打設時、従来は次の生コン車がいつ到着するか分からず、現場社員は休憩も取れずに待機を強いられていた。
そこで、プラント業者が出発時にkintone上のボタンを押すと、現場に「何分後に到着するか」を自動通知する仕組みを構築。空き時間を有効活用できるようになり、結果、残業時間の削減につながっている。
さらに、情報整備の先にあるデータ活用も始まっている。例えば、アプリに蓄積された危険行動や事故情報は、チェックリストアプリへ自動反映され、若手社員であっても、過去の資産を基にリスク検討が可能になっている。
他にも、kintone内の図面やマニュアルなどを参照し、施工方法や納まり(仕上がりの状態)を提案してくれるAIアシスタントも開発。「これまでベテランから手取り足取り教えてもらったノウハウが、AIに問いかけるだけで手に入り、若手でも自ら判断できる材料が増えた」(笹原氏)
後藤組では、ここまで培ってきたデジタル化・DXのノウハウを自社だけに閉じ込めず、外部へも積極的に発信している。さらには、前述の顔認証を利用した勤怠管理システムは、kintoneの連携サービス「FaceStamp」として外部提供を始めている。
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