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ソフトウェア協会イベントで提言されたフィジカルAI戦略の「選択と集中」

最悪のシナリオは「フィジカルAI」による基幹産業の衰退 日本の勝ち筋は、“同期技術”と“ドメイン知識”

2026年04月06日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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最悪は日本の基幹産業が衰退しかねない 現実的なのは一点突破型

 では、フィジカルAIにおいて日本の勝ち筋はどこにあるのか。

 現在、日本のAIロボティクス戦略の方向性として、供給側と需要側が一体となった包括的な取り組みが検討されている。

 供給サイドでは、AIロボティクスのためのサプライチェーンの構築を目指しつつ、オープンな開発基盤やAI基盤モデル、データセットの整備、さらには、SIer機能の強化や高度人材の育成まで、多角的な支援策が挙げられている。需要サイドでは、先行官需を創出しつつ、ロングテール(多品種少量)市場での導入促進に向けて各分野で実装ロードマップを策定していく形だ。

日本のAIロボティクス戦略の方向性

 こうした日本の方向性に対して南里氏は、「全方位で勝つには予算が足りない」と指摘する。さらに、リソースが分散した結果、日本の強みである産業用ロボットや自動車といった基幹産業がフィジカルAIに浸食され、衰退してしまうことが“ワーストシナリオ”だという。だからこそ同氏が提言するのが、“一点突破型”で勝てる産業に集中投資していくことだ。

 具体的に挙げられた産業領域が、「医療/介護」「製造業作業」「料理/調理」といった“高精度”な作業を求められる領域だ。現在、米国は物流や建設、農作業、中国は清掃や設備点検といった許容度が高く、単純労働を置き換えるような領域にフォーカスしている。これらの領域は既に両国のデバイスが食い込んでいるため、残った領域を狙っていくべきというのが南里氏の主張だ。

日本が狙うべき産業領域

 加えて、要素技術における勝ち筋が、「同期技術」だ。フィジカルAIは、AI推論をするソフトウェア層と制御系であるハードウェア層から構成されるが、これらをつなぐ“神経”ともいえる同期レイヤーがないと、滑らかで高精度な動きは実現できない。ここに、ソフトウェアとハードウェアのすり合わせを得意とする、日本のものづくりの知見が活きてくる。

ソフトウェア層とハードウェア層をつなぐ同期技術

 しかし、これらだけでは他国に食い込まれるため、「ドメインの形式化」と「データ収集」で差別化を図っていく。上記でも触れたよう日本のものづくりは、分業で効率的なやり方よりも、人や技術のすり合わせで品質を追い求めるやり方が得意である。こうした現場のドメイン知識や高品質なデータを収集して、形式知化していくことに活路が生まれる。

 日本が切り捨てるべき領域についても触れられた。南里氏は、国産の基盤モデルを国を挙げて推進するのは、現実的ではないと語る。「資本力を持った企業でどでかく進めるべきであって、オープンイノベーションでは限界がある。究極、日本にホスティングできる環境があればよい」と南里氏。そしてなにより、国産モデルは、プロダクトでの利用が進んでいない現状もある。

 南里氏は、「高精度で繊細な産業領域に特化して、リソースを集中させる。そのための要素技術として、ソフトウェアとハードウェアのシームレスな連携技術を磨いていく。これだけでは勝てないので、他国が入り込めないようドメイン知識でブロックしていく。これが日本の勝ち筋」だとまとめる。そして、「全方位で綺麗に整理された戦略で勝てるかというと、そんなに甘くない。一点突破で勝ち切る戦が必要なのが、日本の立ち位置」と締めくくった。

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