レガシーシステムと生成AIが出会って、こんなにエモいイベントが生まれた
日本で一番レガシーシステムと対峙してきた5社がGitHub Copilotと出会うインパクト
2026年02月10日 07時00分更新
各社のベテランが他社にコメント すごく熱かった
今回のイベントはプレゼンだけではなく、ラスト30分の講評をぜひ見てほしい。なにしろ日本を代表するシステムインテグレーター5社のベテランたちが、ある意味ライバルとも言える別の会社のチームにコメントするのだ。これはちょっと胸アツな風景ではないだろうか。
NRIチームについて講評した日立製作所 アプリケーションサービス事業部 テクノロジートランスフォーメーション本部 LSH適用推進部 担当部長の溝江 彰人氏は、「リモートワークの方々が多く、ハッカソンも初めて。初対面のメンバーで、こういうハッカソンをチャレンジするのは苦労も多かったのでは思いました」とチャレンジについてコメント。その上で、「GitHub Codespacesが動かなかったというトラブルがあった中、最後の発表にまでつなげたのは、チームとして素晴らしかった」とチームをねぎらった。
日立製作所チームについて講評したNECソリューションイノベータ DXソフトウェア開発事業部門 デジタルPF開発統括部 シニアプロフェッショナルの小川 英孝氏は、「店舗の管理でオンプレの運用に苦労しているのではないかという課題感やユーザーストーリーの設定がよかった。実行のステップに関しても、今後のシステムを拡張していく前提で設計しているのが素晴らしかった」と講評。
その上で、「私もJavaを20年くらいやってきたが、Strutsはコンフィグファイルで構造化されているからこそ、GitHub Copilotでも解析しやすいはず。そこから始めるとインプットしやすかったと思う」「ビルドに関しても、規模が大きければ、パッケージをいくつかのJarファイルに分割して、進める方法があったのかも」とエンジニアならではのアドバイス。「30日が4時間になるという数値化もすごくよかった」とエールを送った。
富士通チームについて講評したNTTデータグループ 技術革新統括本部 AI技術部 AI技術担当 課長 井上大輔氏は、「モダナイズに加えて、機能追加まで進めたところで、ここまでできるんだと驚きました。しかも追加した機能が『監査ログの出力』という渋いチョイス(笑)。1人でニヤニヤしていました。運用等で苦労してきた方がいたのかなと思いました」とコメントした。
井上氏が評価したのは、人間とAIの作業分担という意識を持っていた点だ。「生成AIの進化は日進月歩。昨日は無理だったけど、今日はできるようになっているということもありうる。でも、AIがどこまでできるのかという限界を意識していないと、やらかしてしまうので、そこらへんの線引きを意識していたのがよかったと思う」と語った。
同じくNTTデータグループ 技術革新統括本部 AI技術部 AI技術担当 部長 加藤耕也氏は、富士通チームについて「再現性と実務特性に長けた現場に強いチームなのではないかと思いました」とコメント。その一例が手元でビルドができる環境をいち早く整えたこと。「こうしたプロジェクトは環境差異が大きくのしかかってくるので、Dockerを使っていち早くみんなで動く環境を作ったのは、作業を加速し、品質を高めるために必要な作業だった」と講評した。
NTTデータグループについて講評した.NETのマイグレーションお題を作成した日本マイクロソフトの井上章氏は、「普段、.NETを利用していないにも関わらず、.NETのマイグレーションにチャレンジしてもらったことに感謝したい」とまずコメント。その上で、「モブプログラミングで、みなさんでワイガヤしながら、なにかを作り上げていくのはとても重要。こうしたプログラミング手法は、ぜひ社内にも持ち帰って、実施してもらえば、よりよいソースコードを作れるはず」と講評した。
その点、NTTデータグループは、GitHub Copilotの使いこなしに目を見張るものがあったと評価。「単にコードを記述してもらうだけではなく、イシュー作成、プルリクエストやドキュメント作成など開発プロセスの改善にGitHub Copilotを活用していた」とコメントした。また、Visual StudioでのWindows環境前提だった.NET Frameworkから最新の.NETに移行することで、VS Codeのようなツールを活用できる点もアピール。「チームはVS Codeも使っていた。適材適所でいろんなツールを使って、いろいろな開発に活かしてほしい」(井上氏)。
NECソリューションイノベータチームについて講評した富士通 ソフトウェアオープンイノベーション事業本部 ソフトウェア戦略統括部 シニアディレクターの三浦真樹氏は、「よかったです。計画しながら、トラブルに対して臨機応変に対応していくところがいい。画面イメージをアスキーアートで出力するというアイデアも人間が考えたということで素晴らしかった」とコメント。また、メンバー全員でのプレゼンがそれぞれの立場で生成AIの課題に向き合っていた点が印象的だったという。「みなさんが現場で苦労し、技術に関心を持ち、日々実践しているというのが、すごく伝わってきました」とコメントした。
コードを地図としてAIと一緒にモダナイゼーションできる時代へ
最後にコメントしたのはJavaのお題を作成したMicrosoftの柳原伸弥氏。まずは「もうなんか泣きそうです。GitHub Copilotでどのように開発プロセスを変えられるのか? 私が描いていた、目指していた姿に共感してもらえたことがわかり、非常にうれしいです」と感慨深そうにコメントする。
その上で、AIの登場によって開発現場における時間や生産性の概念が大きく変わったという点を実感したという。今回のJava5のレガシーシステムは、柳原氏がGitHub Copilotをほぼ一切使わず、業務の空き時間に手作業で構築したもの。ただ、手作業で書くと、アプリケーションの構築も3ヶ月かかってしまった。「でも、今回のハッカソンって数時間であそこまでできたわけですよね。これって時間感覚が明らかに変わったんです」と柳原氏は指摘する。
冒頭の講演の通り、日本では数多くのレガシーシステムが稼働しており、若手メンバーでは見たことのない言語や環境が使われている。でも、生成AIという武器を得たエンジニアであれば、この状況にも対応できるはず。柳原氏は、「でも、これからはコードさえあれば、それをモダナイゼーションするための地図として利用できる時代になってきた。これからもマイグレーションはいろいろな形で関わってくると思うが、みなさんであればAIともチームメイトとして仲良く付き合っていただき、新しい開発ができると思う」と参加者に語りかけた。
締めの挨拶に立った日本マイクロソフトの安冨秀隆氏は、「今日のハッカソンって、『レガシー脱出ゲーム』のようなものだったのではないか。どのようにAIを使って、ハックして、モダナイゼーションするか。みなさんのような若手の柔軟な発想とベテランの知識や経験が組み合わさってうまくいくはず。これを1つの機会として、社内に持ち帰ってもらいたい」とコメント。その上で、GitHub Copilot Questが目指す「Learn:AI時代の開発のベストプラクティスを学ぶ」「Build:自社文脈で効くたたき台を作る」「Transform:開発プロセスと組織の変革ストーリーを広める」の3つをアピールし、イベントを締めた。
AIでレガシーマイグレーションはもっと楽しく、生産的に
今回のイベントの意義については、NTTデータグループの加藤氏、そして富士通の三浦氏のコメントに非常に共感したので、引用したい。
「若いメンバーがAIというおもちゃを手に入れたことで、レガシーマイグレーションというめちゃくちゃ重要なんだけど、日陰に見えがちなプロジェクトに対して、前向きに取り組んでいた。すごくグッときました」(加藤氏)
「生成AIの利用を促進する立場でありながら、品質やレビュー、テスト面での課題を指摘してしまう自分もいる。でも、今日みなさんの発表を聞き、もっと走りながら考えてもいいかなと思えました。その点では、私もみなさんから学ばせてもらいました」(三浦氏)
AIを用いて、レガシーマイグレーションをもっと効率的に、もっと楽しいプロジェクトに変えていく。そんな開発現場でのAI利活用が、もはや現実的になっていることを現場のみならず、ベテランも体験できたのが今回のハッカソンの大きな価値だったのは間違いない。
















